土曜日は午前中で仕事が終わったので、恵比寿の三越へ。
2階の「フェルメール―音楽と指紋の謎」展へ。
(2/24まで)
フェルメールの作品は37点と言われています。
今回は、高度なIT技術で「リクリエイト」された絵画作品が37点展示されています。
撮影も可です。
かなり精巧精密な「再生」です。
もちろん、現在残っている実物の修復状態を反映していますので、絵の鮮明さは様々です。
それに加えて、今回の展示のテーマは、フェルメールの科学的な解明でした。
一つは「音楽」、もう一つは「指紋」です。
ただ、フェルメールの絵それ自体、当時の最新の科学技術が応用されていました。それは、「カメラ・オブスクーラ」です。「針穴写真機」のようなものですが、これで三次元の空間像を二次元の像に写すことができます。フェルメールの絵の特徴は精密な遠近法にあるのですが、その秘密はこのカメラ・オブスクーラにありました。
また、顕微鏡の発明者レーウェンフックの観察スケッチも担当したのではないかと言われています。
今回の展示で私が関心があったのは、楽器と演奏(練習)の絵です。
「音楽の稽古」(1622-65)
「窓辺でリュートを弾く女」(1664)
「合奏」(1664-1665)(現物は今なお行方不明とのこと)
「絵画技術」(1666-1667)
弾いているわけではないですが、楽器をモデル?が手にしています。
当時の管楽器の形が分かって興味深いです。
「恋文」(1669-1670)
これも楽器を弾いている姿ではなく、楽器を持っている(たぶん直前まで弾いていた)女性に手紙が届いた姿です。
フェルメールの絵は「微分的」だと言われています。つまり、その場面の時間だけでなく、その直前にあったことも想像させるのです。また、この絵は、見る者の視線(つまり画家の視線)も想像させます。見る者は、時間的・空間的な想像力を喚起され、無意識のうちに絵の世界に入っていけるのです。
このバロックギターと同じタイプの楽器が会場に展示されていました。
絵では3弦(共鳴弦と合わせて6弦)のように見えますが、会場にあった楽器は5弦(共鳴弦と合わせて10弦)でした。
「ヴァージナルの前に立つ女」(1673-1675)
青い色が鮮やかです。(アクアマリンという超高価な絵の具です)
珍しく人物が光を背にしています。
「ヴァージナルの前に座る女」(1673-1675)
部屋の感じと画面の簡略化などが言われています。
確かに窓が書かれていません。壁が地味ですね。
「ヴァージナルの前に座る若い女」(1670)
現在見つかっている最後の作品。
私が最初に写真複製を買った作品です。
電子ピアノの前に飾っていました。
黄色い服は他の作品でもよく出てきます。
カメラ・オブスクーラの現物
楽器だけではありません。
今回の展示では絵にある楽譜まで再現しています。
「稽古の中断」(1660-1661)
当時の記譜法を現代の「音価」に翻訳していますが、さすがに調と拍子までは分からなかったようです。解説では、たぶんF Major(D Minor)ではないかということでした。
今回の展示は生物学者の福岡伸一先生が監修しています。先生のテーマは二つあったように思います。ひとつは、レーウェンフックの研究書の「挿絵」がフェルメールのものだったかどうか。そして、二つ目が「指紋」です。
フェルメールの絵(現物)からフェルメールの指紋を探し出すことができれば、真贋鑑定に役立つのではないか・・・。かなり大胆な発想ですね。詳細は会場の動画で語られていましたが、けっこう大変な作業だったようです。(会場のスクリーンではバロックギターの演奏と再現された楽譜の演奏もありました。)
相当にユニークな展覧会でした。
今週の日曜日までです。