情報[根日屋] 2021年8月16日 | Dr. Nebiya's Blog

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無線通信技術のコンサルタント会社の経営と
大学での非常勤講師をしています。

みなさま、残暑お見舞い申し上げます。

 東京オリンピックも終了しました。東京は先週の酷暑から今週は8月とは思えないような涼しさになり、オリンピック競技も、この涼しさの中で行えれば良かったのにと思います。

 しかし、世界中での異常気候で、特に今週は日本各地での大雨の恐れがあります。どうぞ、みなさまも災害に対する備えをお願いいたします。


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●○ ●○ コロナ禍でのお盆休み
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 災害級のコロナ禍で、私もワクチン接種を2回、済ませましたが、外出が怖く、お盆休みは Stay Home しておりました。私は会社と自宅は、徒歩で数十秒なので、通勤時の感染リスクはほぼないのですが、弟はテレワークができない職種なので、通勤にはかなり神経を使っているようです。

 私はお盆休みに、私の無線機のコレクションで動作しなくなってしまった無線機の修理をしていました。そこで、いくつかの発見もあり、私なりに楽しいお盆休みでした。

 無線機の設計を生業にしてきた私ですが、お盆休みに再発見したことを2点、述べてみたいと思います。

① 今から60年前の真空管式の無線機と、最先端技術のSDR(ソフトウェア無線機)の受信の聴き比べをしました。

 


 受信した電波形式は、短波(HF帯)のアナログ時代の振幅変調系(AMやSSB)の信号です。

 一般にアナログ時代の無線機の受信性能の評価は、SN比(雑音に対して信号がどれくらい浮き上がって聞こえるか)で行います。これを測定器で評価するときには、雑音レベル(電圧かまたは電力)と受信信号レベル(同様に電圧かまたは電力)で測定し、単に電圧(電力)の数値の割り算か、測定器に表示された画面を視覚的に電圧(電力)レベルで比較します。

 しかし、このお盆休みは私(人間)の耳での聴き比べをしてみますと、ノイズの聞こえ方が、60年前の真空管式の無線機は「サーッ」という感じですが、SDRは「ザーァッ」という感じなのです。最小受信感度は、トップのプリアンプのNFが低い分、SDRの方が良いのでしょうが、SN比のノイズの質が違うようで、「サーッ」の上に信号がのっかっている60年前の真空管式の無線機の方が、耳で聞いたSN比は、了解度という評価では勝っているように思いました。測定器を用いた電圧(電力)での比較評価と、人が耳で聴いたの信号の質まで含めた評価では違うと客観的ですが感じました。

 私はオーディオには詳しくないのですが、真空管 Vs. 半導体 の比較をされているオーディオマニア方々の比較をしてみたいという気持ちがわかったような気がしました。音楽を聴くオーディオが趣味の方々は、アンプやスピーカーから聞こえる音は、原音に忠実であることが大切なので、歪が少なく良質な増幅を求めていると思います。一方の無線機(受信機)は、スピーカーから出てくる音は、雑音と音声が混じっている信号なので、原音に忠実にというよりも聞きやすい音に原音を加工する操作を行います。教科書通りに作った理想的な、振幅、位相特性のデジタルフィルタを設計するよりも、人が耳で聴きながら聴きやすい音に追求し、作り上げたメカニカルフィルタを搭載した60年前の無線機が、今でも SDR と対等に張り合えるのは、純粋な技術だけではない、自分の耳を信じる職人の技なのだと思います。


② 動かなくなった無線機を修理してみて感じたこと

 私が趣味で集めた無線機は、私が生まれる前から最近のものまであります。昔の無線機は、汎用電子部品(真空管やトランジスタ)で作られていますので、動作していない怪しい部品が見つかると、その互換性のある別の汎用電子部品に置き換えることで、今、当時、使われていた部品が製造中止で入手難になったとしても、修理が可能です。また、トランジスタは、怪しいところを液体窒素をスプレーを吹き付けると、劣化した回路が一時的に回復しますので、故障個所を探すのも比較的、楽です。また、修理で用いる測定器も、オシロスコープとテスターの安価な汎用測定器があれば、だいたい修理が可能です。

 一方、最近の無線機は、汎用電子部品ではなく、専用の電子部品(集積回路)で作られているので、その部品が製造中止になってしまうと、修理不可能になります。また、電子回路もデジタル信号処理(マイコンとソフトウェア)に置きかわってしまうと、電子回路技術者の私は、手のつけようがありません。

 専用の電子部品(集積回路)の進化が進み、無線機も小型化されていくのは便利ではありますが、私は修理ができる昔の汎用電子部品(真空管やトランジスタ)のみで構成されている無線機の存在価値もあるのではないかと思いました。


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●○ ●○ 近々の私のセミナー
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 私は、会社のある場所のインターネット環境が良くないので、オンラインのセミナーの講師を請けられず、対面セミナーのみを行って来ましたが、今のコロナの状況から、対面セミナーは難しいと考え、セミナー企画会社の方と相談し、コロナが落ちつくまで、セミナーを企画しないこととしました。

 コロナが落ち着き、対面セミナーが再開できるのは、今年の冬以降になるだろうと思っておりますが、私のセミナー情報は、以下のサイトに更新情報を掲載しますので、ご参照いただけると幸甚です。

http://amplet.tokyo/nebiya/page05.html


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●○ さいごに
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 私の仕事(無線を用いた新規事業のコンサルタント)では、After コロナに、コロナ前の生活に戻ることを想定した新規事業を考えるよりも、コロナと共存する With コロナを想定した新規事業の検討に主軸を置く方が良いと考えています。私が主催するオンラインで企業の枠を超えた参加者の方々とフリーディスカッションを行う研究会(8月23日予定)で、みなさまと話し合ってみようと思います。現在、20名くらいの方の参加申し込みがありそうなので、有意義なディスカッションが行えると期待しています。

みなさまもコロナには十分に気を付けて、ご自愛くださいますようお願い申し上げます。