アマチュア無線のパケット通信が懐かしい。 | Dr. Nebiya's Blog

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無線通信技術のコンサルタント会社の経営と
大学での非常勤講師をしています。

 今でこそ、インターネットの普及で、メールや伝言板が一般の人にも普通に使われていますが、それらがなかったころには、アマチュア無線で友だち同士がメールのやりとりをしたり、電子伝言板(RBBS)にメッセージを残す「パケット通信」がアマチュア無線の世界でも大流行しました。

 

  アマチュア無線(パケット通信)の電子伝言版(RBBS : Radio Bulletin Board System)は、アマチュア無線家により世界規模で多くの場所に開設されていました。秋葉原地区では、T-Zone トヨムラの JA1YWJ、私の会社(アンプレット)の JH1YTU の電子伝言板が、多くのアマチュア無線家の伝言板として利用されていました。

 

 

  アマチュア無線でパケット通信を行うためには、リンク層のプロトコル(通信のルール)として、アメリカで開発されたAX-25(パケット通信用の X-25 をベースとしている)を実装した TNC(Terminal Node Controller)とパソコンを、アマチュア無線機器に接続します。写真は、当時、私の会社(株式会社アンプレット)の パートナー企業 (タスコ電機株式会社)が、TAPR からライセンスを受け、製造・販売していた TNC(TNC-2) です。 

 

 

 

  アマチュア無線のパケット通信は、1982年6月26日にアメリカで最初の通信実験に成功しました。その後、試行錯誤が繰り返されていたころの TNC-1(写真右側の下から2段目の紺色パネルの大きな TNC が TNC-1 対応) を用いて、アメリカで通信実験が行われました。私の会社でも、有線で接続した TNC-1 同志のベースバンドでの通信実験を行いました。1981年から、アマチュア無線のパケット通信の実用化を目指し、TAPR(Tucson Amateur Packet Radio)が TNC-2 の開発を始めました。その後、TAPR は、アマチュア無線機器メーカーが、TNC-2 のプリント基板を製造したり、配布できるためのライセンスを与えるようになり、私たちのグループ会社でも、早速、ライセンス契約を行い、TNC-2 の製造を始めました。 

 

 

 

 アマチュア無線のパケット通信は、TNC-2 から出てくるベースバンド信号(送りたい デジタル データ)を、無線機のマイク端子から入力していました(無線機は無改造)ので、伝送速度も音声の周波数帯域で制限を受けてしまうため、市販の TNC-2 の通信速度は、1200bps でした。そこで、高速のパケット通信を行うべく、通信機の局部発振器(VCO)に、直接、送信データで変調を行う(当時の市販の無線機では改造が必要になる) 9600bps のパケット通信の可能性を電波監理局に打診しましたところ、日本では免許の実績がないという回答でした。そこで、理論的な解説、実験データなどで、電波監理局に説明を行い、1993年にアマチュア無線の高速パケット通信の免許が、私個人のアマチュア無線局(JE1BQE)と会社のクラブ局(JH1YTU)の両局(1局の免許だと通信相手がいないため)に、同時に与えられました。電波監理局の、「過去に免許の実績がない」からスタートしたプロジェクトですので、おそらく、私と私の会社が、日本で最初の 9600bps のパケット通信免許をいただいたアマチュア無線局と思います。(この記事は、Ham Journal 1993年 No.83 に書きました。)