先日来られた患者さん。
私の講演を聴かれた内科の先生からの紹介で受診されました。
便秘治療に困って紹介してこられたのでした。
便は毎日出ているのですが、ウォシュレットの水で刺激しながらでないと便が出せず、それでもなかなか出ないのでトイレに数時間かかると
便が溜まっている感じがするけれど、やわらかい便が出てスッキリしない。
出したあともお腹が急に痛くなって便が出るから出かけられない。
排便に午前中いっぱいかかるようになり、そのせいで仕事を辞められていました。
仕事を辞めた後も午前中は排便のことで出かけられません。
どこにも出かけられず不便な生活を送っておられました。
出されているお薬は酸化マグネシウム。
1日3回服用すると下痢になるので1日1錠で毎日服用されています。
それでも軟便が出てくる。
だけどスッキリしない。
お腹が痛くなる。
何度も下痢のような便が出てくる。
診察すると・・・おおよそ便とは思えない塊が出口にありました。
大きさはテニスボール大くらい。
それが3個くらいありました。
ウォシュレット浣腸をしているせいで肛門が狭い
そして肛門周囲の皮膚は荒れてボロボロです
皮膚は治療すれば何とかなるけれど、狭くなった肛門は大変です。
これでは便が出せない。
坐剤を入れたけど軟便しか出ません。
出口を塞いでいる便塊をすり抜けて、酸化マグネシウムがよく効いた軟便が出て来ているだけ。
塊は出ません。
そりゃそうだ。
肛門の穴よりも大きな物体を出せるわけがない。
あきらめていつも通り摘便することに。
硬くなった便をほぐして小さくして出すのですが、便が化石化して石のようになっていてほぐせません。
なんとか形を変えて細くして出せないか奮闘しましたが無理
もう指がつりそう。
手が痛い。
腕がパンパン。
院長を呼びました。
私よりも指も長いし太いので肛門が拡がります。
あれほど摘便が得意な院長も苦戦
それでも便をなんとかつぶして形を変えることができました
少しずつ出して、指だけでは無理なので摘便用のヘラを使うことに。
この摘便用のヘラ、とっても便利なんです。
師匠の増田先生が作ったヘラ。
摘便の時には大活躍なんです。
肛門が狭いので摘便が痛い。
もうこれは無理だ・・・と思って麻酔をすることに。
普通は麻酔をかけたら指2本は楽々入るのですが全く入りません。
本当に狭い・・・
長年のウォシュレット浣腸で肛門が炎症を起こし硬くなってしまったんです
摘便用のヘラと指を使って便塊を少しずつ出して、ある程度出た所で浣腸しました。
これで全部出て終われると思って診察したら・・・
なんとまた奥からさらなる便塊が降りてきていました
これはダメだ・・・
患者さんもお疲れで「もう疲れました・・・明日だったらダメですか」と言われたのですが、この便塊、1日放置するとさらに水分が直腸から吸収されて固まります。
今日よりも明日のほうが確実に便は出しにくくなる。
今出さないと明日はない。
ということで第2ラウンド開始です。
また同じように院長に便をほぐしてもらって、少しずつ出しました。
指は痛くなる
手がつる
腕がパンパンになる
だから二人で交代しながら摘便しました。
結局4時間以上かかりました
13時半過ぎに来られた患者さんが便を全部出し切って帰られたのが20時前。
私も院長もクタクタになりました
肛門科医になってから28年。
数々の経験をしてきて摘便もたくさんやってきましたが、こんなに時間がかかったのも初めてですし、二人がかりでやって腕があがってしまった経験も初めてでした。
13時半から始まった午後診が終わったのが20時。
さすがにクタクタでした。
土曜日だったので「明日来てね」が言えないし、今日よりも明日の方が摘便の難易度は上がる。
だから摘便だけは先送りにしない。
肛門科では救急疾患です。
毎日便が出ていても、スッキリ出ずに中に残っていれば便秘です。
残った便は水分が飛んでどんどん硬くなります。
一晩寝かせて熟成した便は古く硬くなって出口を塞ぐ。
それを翌日も出さないとさらに熟成される。
一体、何日熟成したんだろう・・・
そんな「便とは思えない塊」でした。
もう岩のような塊でしたから
便が化石化すると本当に出せなくなります。
だからこうなる前に来て下さい
そしてまた詰まらないように毎日ちゃんと排泄をすること。
これが一番大事。
肛門は便の通り道。
便が通過していく所であって便を溜めておく場所ではありません。
いつも空っぽ。
そこに便はないんです。
便秘は出口で起きているのに、腸に効く下剤をいくら飲んでも出口の便は出ません。
また酸化マグネシウムは「やわらかい便を造る薬」です。
決して「便を出す薬」ではありません。
これから造られる便には効きますが、既に出来上がって出口付近までおりてきている便や、排便後に残った便には効きません。
出口の便秘に飲み薬は効かないんです。
そんな的外れな便秘治療で糞詰まりになったり痔になったりしている人は大勢いるでしょう。
特に高齢者の便栓塞(糞詰まり)は危険です。
出口に便が詰まったら、本当に便が出なくなって、腸も便でパンパンになって腸閉塞で亡くなる高齢者がいるのです。
摘便についてくれたパートのナースが糞詰まりで亡くなった高齢者を2名診たことがあると教えてくれました。
レントゲンを撮ったら腸の中、全部便が充満していて真っ白だったそうです。
そうなると嘔吐が始まります。
出口から便が出なくなったら口から出る・・・なんて冗談ぽく言う人がいましたが、これは冗談ではなく本当にあること。
たかが糞詰まりとなめていたら死ぬことがあるということを知っておいて下さいね。
だから摘便は命がけなんです。
放置すると本当に死んじゃうことがあるから。
皆さんも気をつけて下さいね。
便秘は出口で起きていませんか
ご自分の出口に意識を向けて下さいね
お知らせ
アーカイブ配信チケットは9月まで見放題です↓
患者さんのリクエストで復活させた
化粧品と発酵素するりの記事は
コチラ
便通・腸を整えて美肌を目指す 元皮膚科・現役肛門科の女医が教えるキレイ術
2020年12月25日に出版し、おかげさまで9刷目となり累計発行部数が3万部を超えるベストセラーになりました
オシリを洗っている全ての人に届けたい。
お読み頂けると幸いです。
そして2冊目も出版しました↓
手に取って頂けると幸いです
公式LINEでも情報発信中
敏感肌の私でも
かぶれずに使えて
なおかつ
美容効果を実感できる
自分のために作った
オリジナルコスメはコチラ↓
ドクターズコスメならではの技術がぎっしり詰まってます