溜まりに溜まっている患者さんが書いて下さったアンケートを今日もご紹介。
今日ご紹介する患者さんは20代女性。
治らない切れ痔に悩み、あちこちの肛門科を回ってから私の外来を受診されました。
小さな字でビッシリ書いて下さいました。
このアンケートの醍醐味は最後の一行、「先生を信じて本当に良かったと思いました」に尽きます。
患者さんが信じて治療を実践してくれなければ治らないからです。
それに私が提案する治療は非常識な便秘治療。
今までかかってきたどこの肛門科でも言われなかったこと。
ブログを読んでおられない方は呆然とされることも。
そりゃそうでしょう。
毎日便が出ていたら誰も便秘だなんて思わないし、便秘と診断する医師も居ないでしょう。
でもだったらなんで痔になったのよ
治療しているのに治らないの
毎日排便があるのに切れ痔が治らない人は「出始めの便が硬い」という現象があるので、それが前日の出残り便であることを説明し、実際に今日出し残した便をトイレで出して来てもらうと納得されます。
そうやって患者さんが納得して治療方針に賛同してくれなければ治療は成り立たない。
なぜなら痔の治療は患者さんの生活の中で日々行われる行為だから。
だから患者さんの行動なくして完治なし。
究極、私のことを信じてくれなければ痛いオシリに坐薬を入れたり肛門マッサージをしたり出来ません
だから信じて付いてきて下さった患者さんがエライんです。
私が治したわけじゃなくて患者さんが自分で治したんだもの。
患者さんが治療という行動に移せるように、私は全身全霊で説明をする。
そこが診療のキモ。
それで理解できない、納得できないのは私の説明力不足。
さらに理解できても治療に納得できない患者さんは残念ながら診療所での治療は難しい・・・
だからまずは保険診療の肛門科にかかって、そこで納得いくまで標準治療を受けて、それでも治らず困ったら受診してほしい。
そのステップを踏むか、ブログを全部読み込んで理解してから受診をお願いしたい。
診療所での治療は、他の肛門科でやっていない治療になるため、そこを分かった上で受診して欲しいと思います。
この患者さんのアンケートがポイントだらけなので、一つずつ初めから解説をしたいと思います。
1日出ていなかった便を、シャワートイレで出そうとすると、とても固くてビリッと裂けた痛みと、ペーパーに血がポタポタ・・・。
漢方薬 桃核承気湯を処方してもらいました。
しかし、ひどい下痢になっただけでしたし、腸が過敏になりすぎて、1日に5回も6回もトイレに・・・。
この患者さんが漢方薬を飲んでひどい下痢になって1日に何回もトイレに行かないといけなくなったのは、必要のない薬を飲んだからなんです。
つまり腸は正常に動いて便を製造し出口の肛門まで運んでくれていたのです。
だけど、送り届けられた完成品である便を排出する過程でつまずいた。
だからつまずいた場所である肛門でトラブルが発生したわけです。
問題は出口の肛門で起こっているのに、腸に効く薬を飲んだから下痢になったのです。
その薬、必要なかったってこと。
必要の無い下剤を飲んだせいで切れ痔を悪化させている人も多いので注意してくださいね。
何度か通いましたが、やはり「傷は深くない」と言われてボラザGをもらうといった繰り返し。
医師の指が入らなくなっていたのです。
ずっと通院を続けて薬を使い続けても、必要のない下剤を飲んで下痢便・軟便ばかり出し続けていると、傷は治らず、肛門はどんどん狭くなっていきます。
そして診察が出来ないほど狭くなってしまうと手術を勧められることが多いです。
皆さん、便通(出口の便秘)を治さずに薬だけ使っておられるんです。
だから治療しているにもかかわらず改善しない、治らない。
それどころか悪化していく。
そうなってから私の外来に来られる患者さんがいかに多いことか
マグミットを飲んだはずなのに出始めが固くて切れてしまいました。
マグミットは「やわらかい便を作る薬」です。
決して「便を出す薬」ではありません。
またこれから作られる便には効きますが、既に出来上がって出口付近に下りてきている便や、出し残した「出残り便」には効きません。
出始めの便は昨日の出し残し便。
マグミットを飲んでも出始めだけは硬かったはず。
問題は出口の肛門で起こっているのに、お腹(腸)に効くマグミットを飲んでも「びちびちドロドロの便」を作るだけで、かえって肛門に残りやすくなり、切れ痔を悪化させることも多いので要注意です。
やはり朝、出して来たはずなのに出し残し便がありましたので、出し切って再度診てもらいました。
治らない切れ痔の患者さんを診察すると、必ずと言っていいほど、便があります。
朝、いつも通り排便があったのにです。
残った便は傷を汚染します。
肛門鏡で診ると傷が便まみれということもしばしば・・・
この出残り便を出してもらうと、その場で痛みが消失することも多いです。
そりゃあ、傷口にウンコ付いてたら痛いわな
切れ痔の治療は最初は痛いです
傷があるところに坐薬を入れたり軟膏塗ったりしないといけませんから・・・。
肛門が狭い人には、さらに「肛門マッサージ」をしてもらうので、さらに過酷です
でもそれを乗り越えた先には治癒が待っています。
最初はあんなに痛くて辛かったのに、だんだん痛みが軽くなってきて、2週間ほどたつと上手に坐薬を入れたり軟膏を塗ったり、マッサージしたりできるようになる。
そしてそれが自信にもつながる。
この患者さんのように排便管理が楽しくなるとゴールは近い。
それもこれも患者さんが私のことを信じて付いてきてくれたから。
本当によく頑張りましたね。
治ったときの喜びを診察室で分かち合うとき、私も本当に幸せな気持ちで満たされます。
頑張ってくれてありがとうと心の中で叫んでいますよ
治療って「信じる」ことなのかもしれませんね。
医師を信じる。
自分を信じる。
治ると信じる。
だから信じてもらえる人を患者にしないといけないのだと悟ったのでした
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