診療所で入院患者さんと一緒にやっているエクササイズ「TRE」。
どんなエクササイズなのか?
何に効果があるのか?
知らない人のために、今日は閉鎖した診療所の公式ブログに掲載していたTREに関する記事をリライトしてお届けします。
TREとは
日本には「トラウマ開放エクササイズ」として2012年に入って来ました。
震災後のトラウマケアとして被災地で行われましたが、まだまだ広く認知されるに至っていません。
きっと「トラウマ」という言葉がハードルになっているのでしょう。
患者さんからも
「トラウマと言う言葉にちょっと怖い感じがする」
とか、
「私は別にトラウマなんてないので自分には関係ない、必要ない。」
と言われる方もいて、
「トラウマ開放エクササイズ」というネーミングを使わずに私「TRE」と、原語のまま用いるようにしてきました。
その方が患者さんも気軽に受けられるからです。
原語だと
「Tension & Trauma Releasing Exercise」。
つまりtraumaだけでなくtension、緊張も含まれているのです。
心理的なトラウマだけでなく、ちょっとした緊張やストレス、それは心理的なものだけでなく身体的なものも全部含めて考えてもらう方が分かりやすいと思います。
実際に今まで300名を超える患者さんにTREを行って来ましたが、「いわゆるトラウマ」を持っている人はほぼ皆無。
ですが様々な効果を患者さんを通して見てきました。
TREによって腰痛や肩こりが改善したり、
35度の低体温だった人が36度台にまで上がったり、
頭痛持ちだった人の頭痛が治ったり、
冷え性やむくみの改善、
血圧の正常化など、
色々な効果がありました。
何よりも手術を受けられた患者さんは、手術の時には緊張して体がガチガチになってるので、術後、お尻は痛くないけど足腰が筋肉痛っていうこともしばしばあって、TREをするとそれが治るので、入院中にTREをやって、手術の緊張とストレスを開放してから帰ってもらいたいなぁと思ったのが患者さんに始めたきっかけでした。
TREの効果
実際にTREを受けられた患者さんからは色々な感想をたくさん頂いています。
一番多かったのが腰痛の改善です。
その場で、エクササイズ直後に効果を実感出来ることが多いです。
姿勢が悪い人だと背骨が真っ直ぐになるので身長が伸びることもよく経験しています。
ただ、腰痛は日頃の姿勢と体の使い方の結果なので、ここを根本的に改めなければ何度でも繰り返します。
(便秘を直さないと痔を繰り返すのと同じですね)
起こってしまった腰痛の対処法としては即効性もありますし、何よりも整骨院などに行かなくても自宅で自分で出来るというのも便利です。
腰痛改善効果は私も実感しており、腰痛がひどいときには必ずTREをしてから寝るようにしています。
お布団の上でも出来るので便利です
次に多いのが便通の改善。
TRE翌日の排泄がスッキリ!という声を、たくさんの患者さんから頂いていて、退院後も自宅で続けておられる患者さんからメールで経過報告が届くこともしばしば。
振動が腸の蠕動(ぜんどう)運動を促すのでしょうね。
TREをするようになってから下剤が必要なくなったり、下剤の効きが良くなって減量できている患者さんも多いです。
おなか(腸)の便秘には効果があると思います。
女性で多いのがむくみの改善です。
TREをするとオシッコに何度も行きたくなる人は体に余分な水分が溜まっている証拠。
排尿回数が増加し、体重が減ったという方もおられ、思わぬ形でダイエットになったと喜んでおられましたが、余分な水分が抜けて、バランスが整うと排尿回数も元に戻ります。
脚がむくみやすい人にはオススメですね。
スタイルも良くなりますし
また低体温の人にはぜひ続けて欲しいです。
週に2〜3回程度続けていると数ヶ月したら体温が36度台になって体調が良くなったという患者さんも大勢おられます。
体温が低いと免疫力も低下していますし、代謝も悪いです。
お一人、不妊症で何年もずーっと基礎体温を付けられていた30代の女性がおられたのですが、TREをしてから35度だった基礎体温がどんどん上がり続け、初めて36度台になり、冷え性も改善、体調も良くなり、風邪もひかなくなったと喜んでおられ、そして・・・なんと、妊娠されたんです
やっぱり体温が低いと妊娠しにくいのでしょうか。
TREだけの効果ではないと思いますが、そんな嬉しい報告もありました
もちろん心理的なトラウマにも効果があります
私は肛門科医なので心理的なことには触れないようにしています。
専門外のことに手を出すことは患者さんに対して無責任だと思うからです。
だからTRE教室の時には身体的なことに絞って説明をしています。
でも本当はTREは心に脳に働きかけるエクササイズです。
脳の話まですると、それだけで2〜3時間かかってしまうため、私のTRE教室ではほとんど触れていませんが、もっと心理的な、脳神経学的なことを知りたいという方もおられるでしょう。
でも、そのような専門的な話をしなくても、うつ病の症状が良くなって抗うつ剤を飲む必要がなくなったり、引きこもっておられた方が仕事に就けるようになったりと、TREによって人生が変わった患者さんもおられます。
私は精神科医ではないので、うつ病やパニック障害の治療はしていませんが、痔や便秘で悩んで受診される患者さんの約2割くらいに、こうした疾患を持っておられる方がおられ、便通や痔の治療を通して、うつ病やパニック障害まで良くなってしまった・・・という嬉しい結果もたくさん経験しています。
そのような疾患に対してTREが深く効いていると感じています。
TREの利点は言葉を介さずに癒しが得られる点です。
別につらい体験を話してもらう必要もなく、私がカウンセリングをすることもなく、ただただエクササイズをするだけで心の傷が癒されるという、私にとったらまるで魔法のようなエクササイズです
「先生、ありがとうございます。」と言われるのですが、私のおかげじゃなくて、TREによって体が本来持っている力が引き出されただけで、私はTREの安全なやり方を指導しただけなんですよ。
治したのは あなた
癒したのは あなたのカラダ
と、いつも説明しているのですが、
人間誰しも自分のカラダを自分で癒す力(自己治癒能力)を持っているので、それをいかに高めてあげるかということが大切なのだと日々の診療でも思っています。
睡眠不足や働き過ぎで体が疲れたり、イヤなことがあったりして悩みを抱えたり、心理的なストレスでも自己治癒能力は低下します。
だからカラダとココロ、どっちも大事なんですが、ココロにアプローチするのって難しいです。
ココロは目に見えないし、たくさんのセラピーや心理療法がありますが合う合わないもある。
だけどTREは体に働きかけるエクササイズ。
体に働きかけているけどココロにも効くエクササイズ。
本当に素晴らしいです
深いです。
今月のTRE教室は7月15日(月・祝)。
午後1時から開催します。
入院中の患者さんにとっては術後3日目。
痔の手術を受けた人が、
しかも術後3日目に
運動なんて出来るのか
という質問を頂くのですが、皆さん、普通に元気にエクササイズをされています。
難しい動きもないですし、運動なんて普段しない人でも、体が硬くて柔軟性に自信がない人でも出来ます
そして覚えて帰って自宅でも是非続けて下さい。
週に2回くらいを目安にしていただければ、それだけで十分
きっとカラダとココロに変化があるでしょう
診療所のセラピードッグ「ラブ」
左側がラブです
ガールフレンドの
「ぱーるちゃん」と一緒に
ラブもTRE教室に参加しますよ
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