先日、浣腸の医療事故のニュースが報道されていました。
ポイントとなる部分にマーカーしますね。
便秘治療、過って直腸に穴 立ったまま浣腸、人工肛門に
2019年2月20日 (水)配信朝日新聞
高知市の高知医療センターで、入院中の80代男性患者に看護師が便秘治療のため浣腸(かんちょう)をした際、過って直腸に穴を開ける医療事故があったことが分かった。症状悪化を防ぐため患者は人工肛門(こうもん)を開設する手術を受け、経過観察のためセンターに通院しているという。
医療センターを運営する高知県・高知市病院企業団の議会が18日に開いた議員協議会でセンターが報告した。島田安博病院長の説明によると、事故があったのは昨年11月以降。患者は別の病気で入院中で慢性便秘だった。看護師は患者の求めに応じ、立った姿勢で浣腸のチューブを挿入した。
だが排便が難しく、肛門周囲に少量の出血などがあったため詳しく調べたところ、直腸に穴が開いていることが確認されたという。
島田病院長によると、ベッドで横たわった状態で浣腸をするのが通常の処置。立った姿勢の場合は直腸に穴が開く事例が知られている。だが、看護師は認識していなかったと話しているという。
患者は経過が良好であれば半年後をめどに人工肛門を閉じる。島田病院長は「高齢者に負担をかけ、申し訳ない。今後は、通常と異なる処置をする時は上司に相談するなど原点に返った対応をしたい」と話している。(清野貴幸)
私たちも診療で浣腸を使うことがありますし、2012年までは出口の便秘に浣腸を多用していました。
10年以上にわたり数万人の患者さんに浣腸を使いましたが事故はゼロです。
その理由は簡単です。
浣腸のノズルを奥深くまで挿入しないからです。
どんな場合も必ず5㎝以内としています。
これなら直腸を突き破ることもありません。
薬局で販売されている市販の浣腸もノズルが短いですよね?
サイズも色々あります。
赤ちゃんなら一番小さいものOK。
小児は30mlで十分。
成人は60mlが標準ですが、市販の浣腸には60mlサイズはありません。
30mlや40mlでスッキリ出る場合は、わざわざ60mlも入れる必要はありません。
だけど最近、市販でもノズルの長い浣腸が販売されているんです
介護用です。
これ、ノズルが長いので危険!
奥まで挿入すると直腸に穴を開けてしまうことがあります
だからストッパーが付いているでしょう?
このノズルを先端から5㎝の所に合わせます。
そうすれば大丈夫。
注意して使って下さいね。
次に立位(立った状態)での浣腸が何故いけないのか?
その理由は「直腸肛門角」にあります。
直腸と肛門のなす角度は立っている状態や寝ている状態だと普段は90°前後。
だから直腸に便があっても肛門から漏れないようになっているわけです。
立位で浣腸をすると、上の左の絵の直腸肛門角が90°に近い状態でノズルが挿入されるため、直腸の壁に当たりやすいのです。
立位だけではありませんよ。
横に寝転がった状態でも、足を伸ばした状態だと直腸肛門角は90°前後ですから、しっかりと膝を曲げて、太ももを胸に引き寄せるような姿勢を取る必要があります。
うちの診療所ではこうしてます↓
直腸肛門角は姿勢によって変わるのです。
例えば座位でもこんなに違います↓
同じ座位(座った姿勢)でも太ももをお腹に引き寄せるほうが、直腸肛門角が大きくなり、直腸と肛門が直線に近くなるため便が出しやすいんですね。
だから排便の時にはこの姿勢が良いと色々な本でもオススメされているわけです↓
ロダンの「考える人」。
この姿勢は直腸肛門角を大きくし、便が出やすい形になっているんですね
だから「浣腸が悪い」、「浣腸は危険」なのではなく、誤った使用方法によって危険な状態を作ってしまっただけなのです。
そして患者さんの背景も大きく作用します。
まず何日便が出ていなかったのか?
直腸指診をして便が肛門に溜まっているかどうか確認したのか?
基礎疾患は何なのか?
報道には何も情報がありません。
これでは読む人に誤解を与えかねない記事です。
そしてこのような記事が一人歩きして「浣腸はコワイ」という認識を世間の人が持つことを危惧します。
詳しい解説を院長が書いています。
続きはコチラ↓
診療所のセラピードッグ「ラブ」
すっかり春めいてきましたね♪
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