薬を使い続ければ治ります?! | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

以前に紹介した通販で購入する高価な痔疾薬

使っている人がいまだに来られます^_^;

その手法と売り方を患者さんから聞いていると最高のマーケティングをしているなあと妙に感心してしまいます^_^;
(そんなことで感心するなって-_-;)

私の外来を受診された女性患者さんは立派な脱肛でした。

医学的には手術適応です。

私の外来を受診する前に新聞広告に載っている痔の薬の通販会社に電話して色々と尋ねたそうです^_^;

薬で治るのかどれくらい使えば治るのか、費用的にはどれくらいかかるのか、質問したそうです。

そうしたら・・・

「薬で治ります」と断言され、治った人の体験談をたくさん紹介されたそうです。

話によると

イボ痔が腐ってぽろっと取れて落ちた

とか

毒が出きったら痔がしぼんで無くなった

とか

まあオモシロイお話が次から次へと出てくるわ^_^;

そしてナント!
その患者さんのお父さんがその高価な痔疾薬を10年以上使って痔が治ったそうなんです^_^;

その総額はウン千万円だったそうです(◎-◎;)

でも、よーくお話を聞くと、どうもお父さんの痔は「血栓性外痔核」のようです。

ずっとブログを読んで下さっている読者の方はもう分かりますね?

消えて無くなる痔切らなくても治る痔ニセモノイボ痔です^_^;

ご存知ない方は是非、お読み下さい。

知ってると得しますよ(*^_^*)


「血栓性外痔核」の詳しい解説はコチラ↓

「消えてなくなる痔」
「オシリの風邪?!」
「押し込んではいけない痔?!」
「オシリの血豆はなぜ出来る?!」
「『痔=手術』じゃない!」
「見なきゃ・診なきゃ分からない」

これは「薬で痔が治った」と勘違いされることが多い疾患です。

そのことも以前のブログに書いてます。

blog162

診療所のセラピードッグ「ラブ」
ドッグランが出来る秘密のカフェに行きました♥
ラブは大はしゃぎです(*^_^*)



で、まだまだ話は続きます。

大阪のおばちゃんはパワフルです^_^;

むっちゃハイテンションでしゃべっておられました^_^;

病気の説明や便秘の説明をして、治療の話になった途端、

「手術したいねんけど、入院していくらかかりますのん?」

と、もう手術する気マンマンのご様子^_^;

うちの診療所は自由診療なので高いです。

金額をお伝えすると

「なんや!そんなに安いんやね!それくらいやったら全然大丈夫ですわ!」

と大喜び。

「痔の薬に比べたら安いわ~!」

とさらに大喜び^_^;

「いや~、その通販の痔の薬、高いんですわ。『で、どれくらい使ったら治りますのん?』って訊いたらね、人によるけど数年から10年くらいって言わはるんですわ!『ほな、なんぼくらいかかりますのん?』って訊いたらね、1年で数百万円って言われましたわ!それ聞いて、私には無理!お金が続かへん!だからここに来ましてん!」

と言っておられました^_^;

はー・・・
安いからここに来たの・・・?
それだったら保険の効く肛門科に行くのが一番安いのに・・・^_^;

と思いつつ、それもオススメしたら、創立100年の伝統と実績のある専門の大阪肛門科診療所が気に入られたようで^_^;

保険の効く肛門科ではなく、選んで納得してうちの診療所に来られたようです^_^;

で、今までのお話の中で、これはちょっと待って!!と声を大にして言いたいことがあります!

電話相談で、オシリの診察もせずに、痔かどうかも分からないのに、「薬で治ります」って言わないで欲しいです。

それは無責任です。

電話相談員は医師ではありません。

医師であったとしても、診ても見てもないのに、どうやって痔であると診断するのでしょう?

以前、この手の商法を信じて高価な痔疾薬を使い続けていた患者さんで、痔ではなく癌だったというケースを数例みています。

10年以上経過しており、早期発見できていたら一命は取り留めたと思います。

人の命に関わることです。

何も見ずに、何の根拠もなく、診断をしたり、治療のアドバイスをしたりすることは医師では「無診察治療」で法的に罰せられます。

医師でないから罰せられないのはおかしいと思いました。

そんな薬を買う方も悪い?

そういう意見もあるでしょう。

でも、痔で悩んでいる患者さんって、誰にも相談できず、一人でこの世の終わりかというくらい悩んでおられて、本当にわらにもすがる思いで薬に手を出してしまう状況の方もおられます。

そういう人の心理を巧みに利用した最高のマーケティング手法で利益を上げ、社会的には成功を収めているのでしょう。

ですがその影で泣いている人がいます。

高価な薬代を支払うために借金地獄になり自殺まで考えていた患者さんもおられました。

人は誰にも相談できない孤独な状況で悩み落ち込むと、冷静な判断が出来なくなります。

そんな痔に悩む人の道しるべになれたらいいな・・・

と思い、このブログを書きました。

ちゃんと病気のことを正しく理解し、一人で悩まず受診して相談して欲しいです。

何も私の外来に来られなくてもいいんです。

肛門のことを一生懸命やっている専門の先生があなたの近くにもきっといます。

探して巡り会って欲しいです。



薬を使い続けても治らない痔もありますよ。

そもそも本当に痔ですか?

癌じゃないことだけは確かめて下さいね。

やっぱり見ないと、診ないと分からないんです。

だから勇気を持って受診して欲しいです。