私が美容外科医に転身してから早くも5年の年月が経とうとしています。

 

元々保険診療の形成外科で、火傷の治療や、ほくろ、粉瘤とり、指切断の吻合手術などどちらかというと

 

病気や怪我の治療に従事していました。

 

形成外科がカバーする分野は多様な手術の中には、眼瞼下垂や、骨切り、唇裂の唇のオペ、

 

鼻中隔湾曲症のオペなど、美容外科に通じる手術も勿論たくさんあります。

 

ただ、そういった分野のオペのトレーニングをするのは専門医取得以降のことが多いです。

 

形成外科の専門医になるには5年程度の修行が必要となります。

 

それ以降に多様な分野からスペシャリティを選ぶ流れがあり、私は特に美容外科をやりたいと思っていたので、症例のたくさんある美容外科大手クリニックに就職した経緯があります。

 

美容外科が形成外科の一分野と言っても、形成外科の勤務のみですと美容の症例は得ることがとても難しいからです。

そして、美容業界入りしてから先ほどのような美容手術を研鑽しました。

 

今振り返ってみれば決してベストの道を歩いてきたわけではありませんが、大成功とは行かなくても、それなりに頑張ってきて、あの頃望んでいたものの、全部ではなくても身につけられたものは多いと思います。

 

目の手術、鼻の手術、脂肪吸引からフェイスリフトまで。もちろん注入治療も含めてオールラウンダーとしてやっている自負があります。

 

そんなん、なにがすごいんだよ。専門で目やってるとか鼻やってないってことは全然ダメなやつなんじゃないの?

 

と思われる方もいらっしゃると思います。

そんなことはありません。オールラウンダーは貴重です。

 

オールラウンダーな美容外科医になるのは、今後入職してくる形成外科医の先生にとって非常に困難なことになっています。

 

これからはすごいことになるのです。

 

美容外科医の技術の全体的な底上げというのが理由の一つです。

 

大手美容外科が台頭したここ数年で専門医、非専門医の先生に関わらず美容外科医の技術が飛躍的に上昇しています。

ブルーオーシャンであった美容業界で多くの症例に恵まれた時代に、大手美容外科の優れた教育システムが相乗効果を生み出して、沢山のスタードクターが生まれました。

コロナという時代の波も、彼らの独立を後押しして、全国に大手美容外科出身のスター外科医たちがチェーン展開を広げています。

 

それにつれて症例数もそれぞれのクリニックに分散されていきました。

 

そのため、クリニックごとの症例が減っているのです。

 

また、プロ野球選手などと違って外科医の技術は鍛錬を続けるかぎり年数を経るごとに上達します

 

美容外科医の入職が年々増えているのにも関わらず、ベテランのドクターは仕事を辞めず、技術は向上していくのです。

 

もちろん、新入職の先生より、古参の先生の方が症例をこなしていて上手である可能性が高いわけです。

そこで何が起きるかというと、新入職の美容外科医に手術が全く回ってこないという現象がおこります。

(高須クリニックは経験者のみの採用なので当てはまりませんが)

 

そのため、少ない症例の中で自分の存在をアピールするために、目の専門医や、鼻の専門医が量産されるのです。

(お察しのように自分で勝手に名乗っている専門医なのです。経験年数が少ないことの裏返しであることが多いです)

 

美容外科という特殊な世界の事情として、育成にお金をかける必要性がないという現実があります。

なぜなら、新入職のドクターより、古参の先生に手術を任せた方が手術時間も早いので売り上げも上がるし、失敗の可能性が低くなるからです。

 

これだけクリニック間の競争が激しくなり、クリニックごとの症例数が減ってくると、育成の先生にやらせた症例で満足度を下げるわけにはいかないのです。

 

それなら、なんで高給でまた沢山の美容外科医が大手美容外科に毎年採用されるの?という疑問があると思います。

 

これは、脱毛チェック、ボトックス、ヒアルロン酸の注入、レーザーの照射をする医師が必要だからです。

 

技術の進歩により、ミラドライのような手術の代わりになる機械が出てきたり、注入、レーザーなどの皮膚科処置の需要は年々高まっていてこてらは人手が足りないわけです。

一方で、ボトックスや脱毛など、美容クリニックの入り口になる処置などは患者さんの奪い合いが激しすぎてクリニックによっては原価割れで提供されていることもあります。(もちろんそれだけして帰られたらクリニックは赤字なので、そういったクリニックではいろいろなオプションがついてくるのでしょう)

 

そうすると何が起きるか。自明でしょう。

 

手術がまだできない美容外科医たちはこういった、美容クリニックの入り口治療に従事する可能性が高いといえます。