裏の世界 ~ 狭い空を見上げながら | driveroneのブログ

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事務職は活躍が目につきにくい。

同じ職場の人でさえ、PCを眺めながらキーボードを叩く視界の中の人々が具体的に何をしているのかはなかなかわからないものだ。


そういう仕事柄、モチベーション維持というのは重要だ。


自分の場合、そのための貴重な体験だったと思うのが、大学時代にやっていた掃除屋のアルバイトだ。


掃除というのは、マンションの廊下やロビー、オフィスの床、ビルの階段などを、作業服を着ながら、ポリッシャーと呼ばれる機械でブラッシングしたり、モップで拭いたりワックスかけたりするもの。


大量の水や洗剤を運ぶのでかなり力仕事な上、最終的にはドレーン(溝)にたまったごみを素手で拾うところまでやるので、はっきり言って汚い。

何かよくわからないヌメヌメしたもの、見たこともない虫の死骸なども転がっていたりする。

汚いものを自分達の手で綺麗にしようとする訳だから、現場は常に汚い訳である。掃除というと何となく綺麗にした後の清潔な感じを思い浮かべてしまいがちだが、これほど日常的に汚れたものに触れ続ける職種はそうそうない。


更に汚れた作業服を着た作業員達は、通常にそこを使用する人々とはあまり接してはいけない、邪魔してはいけない、目についてはいけないものである。

仮に目についたとしても、まるで存在しないかのように人々は通り過ぎていく。

表玄関ではなく裏の地味で小さな通用口を使い、夏には虫がたくさんいるような建物の裏手、ビルとビルの隙間で地べたに座り、狭い空を見上げながら、コンビニおにぎりを食べペットボトルのお茶を飲み、煙草を吸ったりするのである。(自分の場合は、その場では少数派の非喫煙者だったため、ひたすら他人の副流煙を吸っていた。)


社会の片隅とはこのことだ・・・。そう実感した。


華やかに彩られたビルの表の面を仕事中に目にすることはない。裏手は綺麗な模様どころか文字一つ見当たらない彩のない世界。あるものと言えば空調の室外機くらいなものだ。


普段街を歩く限りにおいては目に触れることのない"裏"には、意外にもそうした世界が広がっている。

裏の世界からは、たった建物一つを隔てた表の世界は、実際の物理的な距離の何十倍と言えるほど遠い向こうのものであるかのように感じられた。


これは向き不向きや好みの問題でもあろうが、少なくともその頃の自分は、人と接することができる程度には綺麗な服装で、ある程度表側に近い世界で生きたいと思った。

やらされてるとか理不尽とかいう面もないことはないが、やはり選んで今の位置にいるんだということを忘れてはいけない。


そう、建物の裏口を出て、ビルとビルの間で狭い空を見上げながら、たまに思うのである。