試合が終わった後でも、赤司は会場にいた。

誰もいなくなった観客席に一人座り、携帯の画面を見つめる。

不在着信が25件、新着メッセージが11件。

《私が恋しい?》

《私が恋しい?》

《私が恋しい?》

ゆっくりと息を吐き出し、メッセージを打ち込む。

《会いたい》

そして送信ボタンを押す。

画面で砂時計が回転した。それがふっと消える。送信完了だ。

と、その時。

「だったら、最初からそう言えばよかったのに」

あの懐かしい甘美な声が背後から聞こえてきた。

振り返ると、アリスがさっき受信したばかりのメールを見つめていた。

携帯から目を離し、彼女は赤司を見た。

小首を傾げ、口元に微笑みを浮かべる。

「久しぶり、征十郎」





「聞いてもいいか?」

ハラハラした黄瀬と灰崎の試合後の帰り道。

先輩たちと別れ、黒子と2人っきりになると火神が切り出した。

「ーーーアリスとお前らーー特に赤司ーーーの間に一体何があったんだ?」

黒子は立ち止まり、値踏みするように彼を見た。「……本当に、聞きたいんですか?」

「…ああ」

奇跡の世代、特に赤司を潰そうとするアリスとそんな彼女を止めようとしつつ、どこか庇おうとする奇跡の世代六人に火神は違和感を感じていた。

そしてその理由をどうしても知りたかった。もし理由を解明しなければ、彼女の魔手から逃げるすべがないように思えたのだ。

「…これから話すことは、他言しないでください」しばらくして黒子は口を開いた。「これは、僕たち奇跡の世代にとって、最大で最悪の事件ですから」


「黄瀬から全部聞いた」

彼女に近づきながら、青峰は冷ややかに言った。「こいつとの計画もな」と顎で地面に伸びている灰崎を指す。

「そうなの」

彼女は大して感心した様子はなく、退屈そうに爪をいじった。「で、あなたのことだから私と彼を…止めに来たってわけね」

「まぁそんなところだ」

彼女は口元に笑みを浮かべた。「止められると思うの?」

「止めてやるよ、力づくでな」

そう言って、彼女の襟首を掴んで乱暴に引き寄せる。

彼女はわざとらしく驚いたような顔をした。

「お前の復讐のために…」

顔をこれでもかというほど近づけ、青峰は唸った。「あいつらの戦いにちゃちゃいれんじゃねーよ」

一瞬、彼女の瞳に怒りがよぎった。殴れるものなら殴ってみろと言わんばかりに青峰を睨みつける。

あまりに強烈なそれに、青峰も思わずたじろいだ。

だがそれは一瞬のことで、彼女はまたいつもの薄ら笑いを浮かべた。

青峰の手に触れ、小首を傾げる。「ところで大輝。あなたには感謝してるのよ」

青峰は眉を潜めた。「なに…?」

彼女は笑っている。「あなたがテツヤたちに負けてくれたおかげで私はあの人を潰す希望が見えたんだから」

何を言ってるんだ、この女は。

目の前の女を信じられない思いで見つめる。

「改めてお礼をいうわね」

彼女は気にとめた様子もなく続けた。

「負けてくれてありがとう、大輝」

青峰は彼女を掴んでいた手を力なく下ろした。

「最低だな、お前」

そういうだけで精一杯だ。

背を向け、歩き出すと後ろから彼女の笑い声が聞こえてきた。