猩影が刀を振り下ろした―――が。
「・・・なっ!」
「・・・・・!」
二人の目が驚愕に見開かれる。
「ふぅ。間に合ったわい」
猩影の刀を受け止め、溜息をついたのは行方不明だった奴良組総大将、ぬらりひょんその人だった。
「え!?総大将―――!?」
「今までどこへ・・・」
ざわめく周囲に肩をすくめ、ぬらりひょんは肩越しに唖然としている瑚々を振り返り、不思議そうに首をかしげた。
何かを思い出しかけようとしているぬらりひょんを見て、瑚々は耐えきれず視線をそらした。
「・・・お嬢ちゃん・・・あんたどこかで・・・・・・」
「おお・・・玉章・・・情けない姿になりおって・・・」
ぬらりひょんが何か言いかける前に一人の老人が妖怪たちの中から進み出た。
だが一瞬にしてその姿は本来の巨大な化け狸に変わる。
瑚々は目を見開いた。「隠神刑部狸・・・」
「久しいのう、瑚々」
彼女を見下ろすその目は、氷のように冷たい。「随分と・・・引っ掻き回してくれたくれたようじゃな」
「・・・・・・っ」
隠神刑部の怒りに息を飲む瑚々を一瞥し、リクオに視線を向ける。
「頼む・・・この・・・通りだ。こんな奴でもワシらには・・・こいつしかおらんのです。馬鹿な息子・・・償っても償いきれんだろうが四国で今後一切大人しくさせますゆえ。お願いじゃ・・・何卒命だけは・・・それ以外ならどんなけじめもとらせますから・・・」
「私からもお願いします」
土下座する隠神刑部狸と並んで、瑚々が頭を下げた。
「彼は、私たち四国の希望。そして私にとって、命よりかけがいのない人・・・」
顔を上げ、真っ直ぐな瞳でリクオを見つめる。
「私の命はどうなっても構わない。だけどお願い・・・彼だけは助けてあげて」
「リクオ・・・どうすんだ」
瑚々を見つめたまま、ぬらりひょんが尋ねる。「お前が決めろ」
「・・・・一つだけ・・・・条件がある・・・」
リクオは地面にひれ伏す玉章を見ながら言った。
「犠牲になった者を・・・絶対に弔ってほしいんだ」
瑚々は目を見開いた。
その口元に、段々と大きく笑みが広がっていく。瞳に、鮮やかな紫が広がる。
「・・・・ありがとう」
彼女の心からの感謝の言葉に、リクオは頷いた。
隠神刑部狸は涙ぐみながら、何度も何度も「ありがとう、ありがとう・・・」と頭を下げた。
そして後ろを振り返り、「帰るぞ、お前たち!」と大きく声をかけ歩きはじめる。
傷ついた仲間に肩を貸し、お互いを支えながらその後ろについて行く四国妖怪たち。
これが本来の四国八十八鬼夜行だったのだろう。
だがそれを壊したのは、皮肉なことに大将の息子と、かつて彼らを追い詰めた人間だった。
「玉章」
彼女は振り返り、よろよろと立ちあがった玉章を抱きしめた。
「大丈夫・・・もう、大丈夫よ・・・」
玉章は嬉しそうに笑いかける瑚々から目をそらした。
「玉章・・・?」
明らかに様子がおかしい玉章に、彼女は眉をよせた。「どうしたの・・・?」
「きみは・・・」
玉章は言いにくそうに目を伏せた。
「しばらくの間、ここに残れ」
「え?」
瑚々はわけが分からず聞き返した。「なに・・・どういう意味・・・?」
玉章は相変わらず瑚々を見ようとしない。
「僕たちは・・・・一緒にいない方がいい」
玉章の決断
あとがき:はいはーい。とうとうクライマックスです。
ぬらりひょんとCocoは顔見知りです。ぬらりひょんはまだ気づいてないようですが、、、
お気づきになった人いないかもですが、玉章と瑚々は「愛してる」とか言ってないんですよ。
干渉しすぎない、が二人のモットーなのかな。多分。
本気になりすぎるのが怖い感じ。素直になれよ、って感じだけど。
