「奴良組へ行くわ」

部屋に戻ると出し抜けに瑚々が言った。

復讐に燃えていて、今にも誰かを殺しそうな勢いだった。許可なく妖力を奪われ、しかも本来の力が戻るまでかなりの時間がかかるため腹が立っているのだろう。しかし玉章が自分の妖力を与えようとすると、断固拒否した。

「落ち着け、瑚々」

瑚々の剣幕に怯える子犬を宥めながら、玉章が辛抱強く言った。

玉章でさえ、これほど怒った瑚々を見るのは犬神の件以来、初めてだった。まして普段の瑚々はめったに感情を表に出さないのに。

「それに何のために奴良組へ行く?あの男と何の関係があるんだ?」

「関係ならある」

瑚々はクローゼットから服を取り出しながら素早く答えた。「あの男は関東の妖怪。四国まで来て私を襲うぐらいなんだから、関東でもそれなりのことをしてるはず。だけど、自分の島で勝手な真似をあの奴良組が許すわけない。奴良組と対峙している可能性も高いし、彼らなら事情を知っているはず。それに」

瑚々はローブを脱いだ。雪のように白い肌に、炎のように赤い髪がよく映えていた。「彼の一部は奴良組に潜伏している」

どんなに感情に流されていても、その頭の早さは変わらないようだ。どんな細かなことも見逃さず、全てを考慮して結論を導く。

玉章はふっと笑みを浮かべ、瑚々の背後に近づき、そのむき出しの肩に唇を当てた。「きみの好きなようにすればいい。僕は口を出さない。だがまたあの男が君を傷つけようとしたら、この玉章が全力で君を守ろう。それに」

玉章は懐から一通の手紙を取り出した。そこの差出人名には、奴良リクオと書かれていた。

「ちょうど招待状も受け取っているからね」

瑚々はくるりと振り返って、玉章の首に腕を回し指を組んだ。「・・・ねぇ。私があなたと一番いて良かったと思うのはどんな時だと思う?」

玉章が首を傾げると瑚々はこつん、と彼と額を合わせた。「あなたは私が求める時に与えてくれるから。それって、簡単そうにみえて、とても難しいことよ」

「たま、ず、き」

崩れ落ちる瑚々の体を玉章が支えた。

「大丈夫かい、瑚々」

だが、その髪を見てはっとする。

瑚々の艶やかなブルネットの髪が血のような赤色に染まっていく。

最初は毛先だけだったが、段々と広がっていき、最後には栗色の髪が嘘だったかのように髪全体が見事な赤毛に変わってしまった。

玉章は一度このような現象を見たことがあった。

過度の妖力放出による禁断症状だ。

「瑚々」玉章が優しく名前を呼ぶと彼女は顔を上げた。

その怒りに燃える紫色の瞳を見て玉章は体を強張らせた。

「許さない」

小さいが、はっきりと聞こえた。

「絶対に許さない」




あとがき
ふぅ。一気にUP。
原作に合わせたいのが本望。羽衣狐編と百物語編もUP予定!

次回赤毛になった瑚々の復讐が始まります。

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「んっ・・・あっ・・・」

舌が入ってきて、瑚々は自分の妖力が体から抜けて圓潮の中に入っていくのを感じた。

抵抗しようとすると、圓潮はより一層舌を絡ませてくる。

どうする?瑚々は必死でぼんやりとししている頭を回転させた。どうすればいい?

次の瞬間、瑚々の体がびくっと弓なりになった。

一日の許要限度を越えたのに気づき、意識が遠のきかけるーーー・・・。

その時。

「僕の嫁に手を出すな」

冷たい声。だがその声を聞いた瞬間安堵が押し寄せてくる。

瑚々がうっすらと瞼を開けるとそこには圓潮の首筋に刀を当てている玉章がいた。

圓潮は瑚々から唇を離し、肩越しに振り返った。「これはこれは・・・若き組長殿」

「僕の嫁から離れろ。さもなけば斬る」

玉章の目は怒りに燃えていて、その声は氷のように冷たかった。

圓潮は微笑を浮かべ、もう一度瑚々に向き合った。「また君を迎えにくる」小さな声で耳元に囁きかける。「だが今度はーー容赦はしない」

次の瞬間、玉章の刀が圓潮の首を切り裂いた。

だがその体は煙のように宙に漂った。

驚く二人に圓潮はにっこりと微笑みかけた。「また会おう」

そう言い残して、圓潮は姿を消した。









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