何度も別れたいと思った。

彼の言葉に傷つき、眠るまで泣き続けたこともあった。

「私とバスケ、どっちが大切なわけ?」

ある日、あまりに勝利にこだわり続ける彼に聞いた。

すると彼は、あの冷たい視線を私に向け、肩を掴んで、壁に押し付けた。


「バスケ、っていえば君は逃げるだろう?」

恐怖で口が聞けない私に彼は歪んだ笑みを浮かべてみせた。


「だからこういうことにした。逃げる気なら、地獄まで追いかけて殺してやるって」

そう言って、激しく唇を私の唇に押し付けた。





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部屋を出る前に瑚々は瞳の色を虎目石色に変え、膨大な妖力を閉じ込めた。

今はまだ、自分の正体を気付かれるわけにはいかない。

「おーいい女発見ー」

部屋を出ると、突然そんな声が聞こえてきて瑚々は振り返った。

そこには酒甕を持った体格のいい男が口調とは裏腹に探るような視線で瑚々を見つめていた。「なんだぁ、奴良組ってのは、お盛んってかー?」

「私は四国の者です」

瑚々は礼儀正しく、しかし冷たい声で言った。

「おっと、そいつは失礼」

男は悪びれた様子はなく、肩を竦めてみせた。「でもあんたがいい女ってのは本当だぜーーヒック」

瑚々は目を瞬かせた。もしかして酔ってるの?

「なぁに、まだ会議には時間がある」

男は瑚々の腰に腕を回した。

「それまで、俺と酒を飲みながら話さないか?服を脱がしあってよ…」

「悪いけど」瑚々は段々近づいてくる酒臭い男の唇に人差し指を押し当てた。「酒飲みと遊び人は嫌いなの。それに私人妻よ」

にっこり微笑みながらそう言う彼女に男は目をぱちくりさせた。

そして残念そうに肩を落とす。

「そいつぁ、残念。俺は他の男のもんには手ぇ出さない主義でねーーーまぁ、あんたの旦那が死ぬまで酒を舐めながら指折り数えてるよ」

「それなら一生無理ね。彼は死なないから」

たっぷり皮肉を言い残し、瑚々は男に背を向け、会議の間へむかった。

男の視線を感じたが、瑚々が振り返ることは一度もなかった。










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「まぁ、安心して」

唖然とするリクオに瑚々は肩を竦めてみせた。「そう簡単に靡くタマじゃないし。それに、あなたにとって私が弱点であるように、あいつらも私が弱点なのよ」

リクオは眉を寄せた。「どういう意味?」

「今は無理だけど、私が他の誰かに能力を移したら?清明を倒せるほどの妖力を。だからそうなる前に奴らは私の妖力を奪って、力づくで私を手元におきたがっているの」

リクオはその納得のいく分析に舌を巻いた。そして自分達にとって、目の前の少女がどれだけ重要なのかを改めて認識した。

彼女が奪われれば、自分たちは確実にーー負ける。

だけど、彼女がいればーーー…。

リクオは瑚々を見た。どれだけ妖力を持っていても、その姿はまだ子供だ。

だからーーリクオは思ったーー彼女を守ろう。勝敗とは関係なく、同じ敵を持つ仲間として。


リクオは新たな気持ちで瑚々と向き合った。「ーーー回復にはどのくらいかかるの?」

「一年。だけどちょっとしたプランがあるの。だからあなたは他のことを心配しないで私を守ることだけに集中して」

瑚々はリクオの胸を指で突きながら一言ずつ強調した。「分かった?」

リクオが頷くと、瑚々はすっと目を細めた。

「…それに、あいつらに思い知らせなくてはね」

「何を?」

口元に浮かんだ笑みをみて、リクオは背筋が凍るのを感じた。

「誰を相手に怒らせたか」








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