「雨、ねぇ」

コンビニから出た瞬間にこれだ。しかもただの雨じゃなく、大雨。

傘を買えば済む話だが、家からそう遠くないのにわざわざ金払うのが勿体ねぇ。

さつきに傘持ってこいとメールしたら、「私は誰かさんと違って部活に参加してますので」と返ってきた。

携帯を閉じ、空を見上げる。「…このまま待つか」

だけど、本当に止むのか、この雨。

雨というよりゲリラ豪雨じゃねぇのか。

はぁーとため息をつき、ふと横を見ると一人の女が座りこんでいた。

顔は俯いているため分からないが髪や服はずぶ濡れで靴にしても泥塗れだ。

大方歩いている時にこの雨にあったんだろう。

俺の視線に気づき、女は顔を上げた。

艶やかな長いブロンドの髪。陶器のように滑らかな肌。ふっくらとしたピンク色の唇。大きなブルーの目の周りはアイラインで囲っているが、雨のせいで頬に流れている。

俺は思わず口をぽかんと開けた。すっげぇ美人。

見ていると女が妖艶に微笑んだ。「こんにちは」

声はセクシーなハスキーヴォイス。

「高1?」

「ああ」

「奇遇ね。私もよ」

そう言って立ち上がり、俺のそばに寄る。俺はヒューと口笛を吹いた。スタイルも抜群だな。

でもこの顔どこかで…。

「ねぇ、このまま私とセックスしない?」

「……は?」

突然の言葉に俺は目を丸くした。「何言ってんだ、あんた」

「いいじゃない。雨もやまないし、暇でしょ」

だから、と俺の首に腕を回す。「暇つぶしにどう?」

首を傾げ、にっこり微笑む。

やべぇ。俺は無意識にその女の腰を引き寄せた。断るには、目の前の女は美しすぎる。

と、その時。

「霜月」

聞き覚えのある声が聞こえ、はっと振り返ると。

「…緑間?」

「久しぶりだな、青峰」

元チームメイトの緑間が、傘を片手に不機嫌そうに俺を見ていた。「ここで何してる」

「あー…」

チラッと女を見下ろすと驚いたことに、そいつは顔をぱっと輝かせ、緑間の方に身を乗り出していた。「あら緑間君!」

「あら緑間君じゃないのだよ。電話しておいてなんで青峰といちゃついてる」

「あら、知り合いだったの?」

「元チームメイトだ」

「じゃあこの状況気まずいわね」

わざとらしく眉をあげるが、明らかに女が面白がっているがわかった。

俺を見上げ、残念そうに唇を尖らせる。「お迎えが来たみたいだから、私行くわね」

そう言って、首を伸ばし、俺の唇の横にキスをする。

「続きはまた今度♡」

唖然とする俺に向かって、女はウィンクした。

緑間も信じられないと言わんばかりに女を見ている。

「じゃあね」と女は陽だまりのように笑って俺の腕から抜け出し、緑間の元に駆け出した。

「お前…」
「やだ、焼かないで緑間クン」
「焼いてないのだよ!」
「あははは!」

一つの傘の中でじゃれ合う二人の姿を俺はぽかんと見つめた。

緑間は途中振り返って、手をあげたが、女の方は一度も振り返らなかった。

「…はっ。なんて女だぜ」

言葉と裏腹に、思わず笑みが漏れる。

唇の横に手をやると、あの感触がまだ残っていた。

















iPhoneからの投稿
「退院おめでとう、アリス」

「ありがとう、ドクター」

白髪頭の老人に向かって、彼女はにっこり微笑した。

息を呑むようなその美しい笑みに、老人は思わず顔を赤らめた。

「これからどうするつもりだい?」慌てて咳払いをし、書類にサインをしながらぶっきらぼうに尋ねる。

「そうね…」手渡された書類を手に取ると、彼女はとろけるような笑みを浮かべた。突然の活気が、より一層彼女の表情に輝きを与える。

「まずは古い友人たちに会おうと思います」






「ひゃあーすっかり遅くなっちゃったな…」

桐皇学園男子バスケ部マネージャー、桃井さつきは沈んだ太陽を見てうんざりとため息をついた。

腕時計に目をやる。七時五十分。

一人で帰るには危ない時間帯だ。


「青峰君もいないし…どうしよう…」

「誰かお探し?」

突然背後から聞こえた、甘美な声。

はっと振り返ると、そこには彼女が立っていた。

「こんばんは、さつき」

唖然とする桃井に向かって、彼女はにっこり微笑んだ。

「ア、アリスちゃん…?」

驚きと恐怖から後ずさりする桃井の首を、彼女は素早く掴み、勢いよく後ろの壁に押し付けた。

「寂しかった?」

息ができず苦しそうに顔をしかめる桃井をおもしろそうに見ながら、彼女ーーーアリスーーーは愛らしく小首を傾げた。

長い艶やかな漆黒の髪。雪のように白い肌。血のように赤い唇。トパーズ色に輝く瞳。

目が覚めるような美人だが、その瞳の中の狂気が揺れ動くのを、桃井は信じられない思いで見つめた。

(夢でもみてるの…?)

まさか、また彼女に会うなんて…。

心の中で舌打ちをする。

(まだ入院していると思ってたのに…!)


「携帯借りるわね」

いつの間にとったのか、アリスは桃井の携帯を目の前で振ってみせた。完璧な口元は弧を描いている。「みんなに私のことを知らせないと」

「…どう、して…ここに…ッ」

息も絶え絶えで尋ねる。「あなたは…病院にいるはずじゃ…!」

「さっき退院したのよ」

片方の手で桃井の首を、もう片方の手でメールを打ちながら彼女は事も無げに答えた。

「まず最初にあなたに会おうと思って」

そう言って微笑む姿に、桃井は背筋が凍るのを感じた。これほど寒気がするような微笑は見たことがない。

携帯をパチンと閉じると、アリスは桃井の首からようやく手を離した。

「ごめんなさいね」首をさすりながら咳き込む桃井をみて、困ったように彼女は眉を八の字にした。「でもこうもしないと逃げるでしょ、あなたは」

顔を近づけ、声を低くする。「あの時みたいに」

「…ッ!」

目を見開き、震え出す彼女の反応を見てアリスは満足そうに微笑した。

「久しぶりに会えてよかったわ、さつき」

また会いましょう。

そう耳元で囁き、彼女は桃井に背を向けた。

夜の闇に消えて行くその後ろ姿を桃井は呆然と見つめた。


そして次の瞬間一気に力が抜け、へなへなと地面に座り込んだ。


既に彼女の姿は見えなくなっていた。






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名前:柊 アリス

年齢:16歳

身長:172センチ

体重:43キロ

誕生日:12月16日

血液型:B型

容姿:漆黒の髪 トパーズ色の瞳

備考:赤司と幼馴染で帝光中学出身。元チアリーダー。ある事件がきっかけで一年間精神病院に入院していた。愛らしい顔立ちと裏腹に執念深く非情な性格で、何をしでかすか分からないため周囲に恐れられている。武術に長けており、かなりの怪力。人間味に欠けているが、唯一赤司にだけは少女らしい言動を見せる。