雨が本降りになってきた18時頃、また、ヨウコさんからメールが来た

今度はなんだろうってみてみたら

「さっき妹の家に行ってきた帰りにれいじクンの住んでる近くを通ったよ!れいじクンの住んでるアパートは県道沿いの○○信用金庫の向かい側でベージュの建物だよね?家に着いてれいじクンから来た年賀状の住所見たらアパートの部屋番号201号室は二階の角部屋カナ?電気がつけっぱなしだったよ!(笑)それとも???来週の週末は絶対に一緒に晩ゴハン食べようね!」


あちゃあ〜…バレてしまった…

しかも、住んでるアパートも部屋もバレた…

このメールには返信できないよなぁ…

なんか執着されてるみたいなカンジだし…

来週はホントに妻の実家に逃げるしかないか…

今までオンナを追っかけたことは幾度もあるが…

オンナに追っかけられたのは初めてだ…

しかも相手は友達の奥サンだし…

その奥サンと関係を持ってしまった…

ダンナさんの単身赴任中にその奥サンが浮気なんてよくある話しだが…

まさかオレが渦中の人間になるなんて…


いろんな思いがアタマの中をぐるぐる駆け巡る

外の雨音はさらに強くなっていたけど

オレの気持ちも土砂降りだった

一時間ほどウダウダと考えていたら、携帯電話が鳴った

電話をしてきたのはヨウコさんだ

オレが妻の実家には行かず、まだ家にいることを承知で電話をしてきたハズだ

電話に出てはいけないと思い、スルーしていたら電話は切れた

1分もしないウチにまた携帯電話が鳴る…

相手はヨウコさん…

なんかあったのカナ?

でも…緊急の用件なら家族にかけるだろう…

またスルーしていたら電話は切れた


迷ったが気になってヨウコさんにメールした

「電話くれたみたいだけど、どーしたんですか?」


すぐにヨウコさんから電話がかかって来た

ヨウコさん
「ゴメンね、れいじクン。ワタシ、車ぶつけちゃって、もう、どうしたらいいかわかんなくて…」

オレ
「エッ!大丈夫ですか?ケガは?相手はあるんですか?」

ヨウコさん
「ケガとかは全然ないよ。自損事故だから相手はないけどクルマの前輪が側溝に落ちちゃって動かせないの。」

オレ
「保険入ってるんですよね?まずは警察に電話してから、保険会社に電話してください!ご家族には電話されたんですか?」

ヨウコさん
「妹に電話しても圏外みたいで繋がらないし、お父さんとお母さんはフルムーン旅行で留守してるし、そもそも携帯電話持ってないのよ。」

オレ
「そうなんですね…場所はどこなんですか?」

ヨウコさん
「○○農協近くのカーブのところなの…カーブ手前でトラックとすれ違ったら思いっきり水しぶきが飛んできて…思わずハンドル左に切ったらガードレールに当たっちゃって…焦ってブレーキとアクセル間違えたから左側の前輪が側溝に落ちちゃった…」

オレ
「ヨウコさん、事故やったの初めてなんですか?」

ヨウコさん
「そうなの…だから、なにをどうしていいのか…あっ、どうしよう!携帯の電源切れそうだから、電話切るね。」


ヨウコさんの事故ったところは畑と田んぼばかりで、民家や店舗はほとんどない

あるのは農協の建物と農家の小屋ぐらいだから

おそらくヨウコさんは農協の建物の軒先から電話してるのだろう

迷いに迷って、結局、オレは車のキーを持った


30分後、オレが農協の駐車場に車を停めると同時ぐらいに警査の交通事故対応の車が入ってきた

ヨウコさんはやっぱり農協の建物の軒下にいた

外は土砂降りの雨だ…

ヨウコさんに駆け寄ると、ヨウコさんはビッショリとなっていた  


オレ
「ヨウコさん!大丈夫ですか?」

ヨウコさん
「れいじクン!来てくれてありがとう!ワタシ…」


ヨウコさんは俯いて顔を覆う…

よほど心細かったのだろう…


オレ
「警察が来てくれたようですね。保険会社には電話しましたか?」

ヨウコさん
「それが、警察に電話した後、携帯電話の電源が切れちゃって…」


ヨウコさんと話しをしていたら、警察官がやってきた

警察官
「事故をおこしたのはどちらさん?お体は大丈夫ですか?」

ヨウコさん
「ワタシです…ケガはありません…」

警察官
「そう、この雨の中大変でしたね。申し訳ないが事故状況を調べて記録するんで、しばらくお付き合いしていただけますか?」


すぐに警察官の実況検分が始まり、ヨウコさんはそれに立ち合った

その間にオレはヨウコさんの保険会社に電話し、ディーラーにも電話した

警察官の実況検分が終わる頃、レッカー車が到着し、ヨウコさんの車はディーラーに運ばれた

雨は益々強くなり少し風も出てきた

傘をさしても全く雨は防げず、オレもヨウコさんもビショビショだった

やっと帰宅できる状況になったが、ヨウコさんにはアシがない

タクシーで帰ってください、とも言えず

ヨウコさんを自宅アパートまで送っていくコトに…

助手席のヨウコさんは申し訳なさそうにして、ずっと無口のまま…

オレもなにを話していいかわからず…

土砂降りなんで運転に集中しなきゃいけないんだけど

雨に濡れたヨウコさんのシャツがピッタリ体にくっついているので

ヨウコさんの胸の盛り上がりがイヤでも目に入る

それに気がつき、ドキドキしてしまった

その時、ヨウコさんが口を開く

ヨウコさん
「なんか…いろいろ…ゴメンネ…」

オレ
「謝らないでくださいよ…困った時はオタガイサマじゃないですか…」

ヨウコさん
「携帯電話の電源が切れた時はどうしようかと思って…誰も頼れるヒトいなくて…れいじクン来てくれるなんて…」


ここまで喋って、また、ヨウコさんは手で顔を覆った

ヨウコさん
「れいじクンをしつこくメールで誘って…でも、断られて…居留守使われて…よく考えたらワタシなにやってんだろうって思って…ワタシもれいじクンも結婚してるのに…この事故も…いろいろ望み過ぎてワタシにバチがあたったんだと思う…」

オレ
「それじゃ、そのうちにオレにもバチが当たっちゃうのカナ…」

ヨウコさん
「ゴメン…れいじクン…」

オレ
「冗談ですよ!もう、ヨウコさんは謝らないでくださいよ…アッ…もうすぐアパート着きますよ!」

ヨウコさん
「ゴメンネ、れいじクン。ホントに今日はありがとう。ワタシれいじクンに世話ばっかりかけてるね。」

オレ
「今はお互い "独身" 同士なんだから、どうしても困った時は助けあいましょうよ!でも、この前の夜のようなコトはナシでね。」

ヨウコさん
「…半分わかった…半分だけ…」

オレ
「さあ、アパート着きましたよ!風邪引かないように気をつけてくださいね!」


傘をさしても仕方ないほどの横殴りの雨の中

ヨウコさんは車から飛び出してアパートに走って行った

ホッとしてたら妻からメールが入ってきた

「そっちは凄い雨みたいだけど大丈夫?」

なんとなく、さっきまでの出来事を全て妻に見られているような気がした

「今、明日の朝メシ買おうと思ってコンビニに来たんだけど、凄く降ってるよ。そっちは雨降ってないみたいだね。体調はどう?」


とメールを返した。

妻からメールの返事が来た


「この頃、お腹の中で動くのがわかるようになってきたよ。つわりはそんなでもないから大丈夫だよ。雨に濡れるから風邪引かないようにしてね。」


そうだ…オレは父親になるんだ…

身重な妻はオレのコトを気遣ってくれている…

なのに…オレは…


「オレは大丈夫だよ!体に気をつけてね。明日、またメールか電話するよ。じゃあね。」


と妻に返信した

さあ、帰らなきゃ…

車をバックさせようとしたその瞬間

助手席の窓を激しく叩かれた

振り返ってみたらヨウコさんだった

すぐにドアのロックを外すとヨウコさんはビショ濡れで車の中に入ってきた


ヨウコさん
「どうしよう…アパートのカギは車のカギについたままだったの…だから、アパートに入れないの…」

オレ
「エッ!ホントですか⁈じゃあ、ディーラーに電話しましょう。」


時間は21時を過ぎていたため、ディーラーの電話は案内アナウンスになってしまう…

不動産管理会社に電話しても同じ結果だった…


ヨウコさん
「妹は県外に住んでる彼氏のところへお泊まりデートに行っちゃったし…実家は留守だし…私、今日はお財布に三千円ぐらいしか入ってないし…どうしよう…」


ウ〜ン…万事休す…なのか…

今オレの持ち合わせは二千円程度しかないから

ビジネスホテル素泊りだと少し足らないかも

この状況じゃあ逃げ場がないような…

それに、さっきはオレは

「今はお互い "独身" 同士なんだから、どうしても困った時は助けあいましょうよ!」

と言ったばかりじゃないか…でも…

考え込んでいるウチにヨウコさんはガチガチと震えだした

オレ
「よかったらウチに来ますか?今晩だけですけど…」

ヨウコさん
「いいの?迷惑じゃない?」

オレ
「そんなこといってる場合じゃないでしょう。」

ヨウコさん
「れいじクン、ゴメンね…ありがとう…」

オレ
「なんにもしませんから、なんにもしないでくださいネ!」

ヨウコさん
「ハイ!」


シマッタ!と思った…

その時のヨウコさんは先週、新幹線の駅で見せた顔をしていた…