オレとヨウコさんはホテルの送迎バスで最寄りの私鉄の駅へ向かった

私鉄の駅からは地元のJRの駅まで私鉄電車に揺られた

私鉄電車がJRの駅に近づいてきた…

見知った顔に出くわしてはと思ってオレはひとつ隣の車両に移った…

ヨウコさんが時々切なそうな顔をしてオレの方を覗いていた…

JRの駅に着き私鉄を降りてバスターミナルへ向かった…

ヨウコさんはオレの少し先を歩いていた…

1番から20番まである円形のバスターミナルはとても広い

オレの乗るバス停とヨウコさんの乗るバス停は背中合わせの位置にあった…

お互いの姿はなんとなく見えるくらいの距離だ…


バスを待つ間にヨウコさんからメールが来た…

"れいじクン、いろいろとありがとう。自分の気持ちに正直になるって大事なことだね。私なんだか生まれ変わった気がするよ。晩ごはん楽しみにしてるね!"


メールを見て振り向くと、バス停を出て行くバスの車窓からこっちを見るヨウコさんの顔が見えた…


返事のメールを打とうとして携帯電話を開いたらバスが来た…

メールを返しそびれたオレはそのままバスに揺られて帰宅した…



アパートの玄関を開けると部屋がムッとしていた

カーテンと窓を開けて部屋の空気を入れ替えた

Tシャツと短パンに着替えてから扇風機をつけてソファーに寝転がった


昨夜からいろんなコトがあり過ぎた…

思うがままに行動してしまった…

ヨウコさんとのこれからを考えてみた…

どうにもならないと分かっているのに惹かれあってしまった…

ユミとは違う美しさと儚さを持ち合わせているヨウコさん…

誰かを必要とし必要とされていたいヨウコさん…


でも…オレでいいのか…


ふと、テレビの横のサイドボードに置かれたユミとのツーショットの写真が眼に入った…

ユミにはオレが必要だし、オレもユミが必要だ…

ましてやユミはオレとの子を出産するのに…


答えが出ないまま、鬱々としていたが、やがてオレは眠りについていた…



ピリリリリリリリ ピリリリリリリリ 

携帯電話の呼び出し音で目が覚めた

ヨウコさんからの電話だった


オレ
…ハ..イ…モシモシ…

ヨウコさん
アレッ!ひょっとしてれいじクン寝起きなの?今16時だよ。

オレ
エッ、ウン…寝てました…

ヨウコさん
起こしちゃってゴメンね。メール何通か送ったけど返事がなかったもんだから…

オレ
エッ!本当ですか?スミマセン、気がつかなくて…

ヨウコさん
晩ごはんまでには少し早いけど、できればれいじクンに一緒に行ってもらいたいところがあるの。

オレ
構いませんけど…どこへ行くんですが…

ヨウコさん
うーんと…一緒に行くまで内緒じゃダメ?ヘンなところじゃないよ。

オレ
なんだかワケがありそうですね。いいですよ。お付き合いしますよ。どこへ行けばいいですか?

ヨウコさん
場所は街中だから私がれいじクンを迎えに行ってもイイ?

オレ
分かりました。お願いします。この前みたいにアパートの来客用駐車場だとちょっとアレなんで、近くの県道沿いの○○信用金庫の駐車場まで来てください。到着したら電話してもらえますか?

ヨウコさん
ウン。着いたら電話するね!


ヨウコさんはオレをどこに連れて行こうとしているのだろう…

シャワーを浴びて眠気を覚ました

少し伸びた髭を剃った

Tシャツを替えシャツを羽織って短パンからデニムのパンツに履き替えた

一通りの準備を終えてソファーに座って寛いでいたら携帯電話が鳴った


ヨウコさん
れいじクン、お待たせ!着いたよ!

オレ
ハイ。すぐ行きますね。



○○信用金庫の駐車場の端っこにヨウコさんの車が停まっていた

オレは車に乗り込みヨウコさんは車を出した


ヨウコさん
ゴメンね、れいじクン、無理やり付き合わせちゃって。

オレ
大丈夫ですよ。行き先秘密ってなんか好奇心くすぐられますよ。

ヨウコさん
たいしたところじゃないから、あんまり期待しないでね。


ふと、車を運転するヨウコさんを見てみた…

その時ヨウコさんの雰囲気がなんとなくおかしいことに気がついた

なんだろう…なんだかいつものヨウコさんじゃないようだ…

しばらく黙ってヨウコさんを見ていたら



ヨウコさん
ん?…どうしたの?れいじクン。

オレ
アッ…いや…あの…なんとなく、いつものヨウコさんと雰囲気違うカナって…髪切ったからカナ?

ヨウコさん
ウフフ。れいじクンって、私のこと良く見てるのね。


アッ!そうだ!そこでオレはやっと分かった…

ヨウコさんは今アクセサリーをなにも着けていなかった…


オレ
あの…ヨウコさん…ピアスとかのアクセサリーはどうされたんですか?

ヨウコさん
わかった?…着けてるのも、持ってるのもイヤになっちゃったの…もう必要ないし…


そう言ってヨウコさんはオレの手を握り黙って運転していた

車を街中の駐車場に停め、ヨウコさんは小さな箱が幾つか詰まった紙袋を手にした

ヨウコさんとオレは駐車場を出て、やや陽が傾いてきた街中を少し離れて歩いた

ヨウコさんは、ショーウィンドウにアクセサリーや時計やブランド物のバッグが展示されている店の前で立ち止まった


ヨウコさん
れいじクン、ここが目的地なの。

オレ
エッ…この店って?質屋さん?

ヨウコさん
アクセサリーとか時計とかブランド品の買取専門店なの。


ヨウコさんに続いて店内に入った

黒ぶちメガネの中年男性の店員が声をかけてきた


店員
いらっしゃいませ!買取りのお客様でしょうか?どうぞこちらにお座りくださいませ。お連れのお客様もどうぞ。



ヨウコさんとオレはテーブル席に座った

ヨウコさんは手に持った紙袋をテーブルの上に置いた


ヨウコさん
中の物は全てアクセサリーとジュエリーです。全て買取りでお願いします。

店員
承知いたしました。それでは全て箱から出させていただき、一度拝見させてください。


オレはここでようやくヨウコさんのしようとしていたことが理解できた

そして、ヨウコさんから聞いた話しを思い出した…


"50代の人はお金持ってて…会う度にワタシに何かをプレゼントしてくれる…最初はお小遣いくれようとしたけど…なんか、そういうのイヤで断ったら…会うたびにアクセサリーをプレゼントされるの…"



そういうことだったのか…