「世紀末リーダー伝たけし!」のように、
ギャグ漫画からバトル漫画にスイッチした漫画作品は結構多いのですが、
スイッチはうまくいかないこともあり、
残念ながら打ち切りになってしまった漫画も数多くあると聞きます。
このように、「スイッチする」ということはなかなか難しい問題であり、
細菌感染症に対して抗菌薬を静注から経口にスイッチするのをどうするか、
という問題も、エビデンスが不足している分野で、
いつも困ってしまうわけであります。
Lancet Infectious Diseaseに小児の抗菌薬経口スイッチに関するレビューが
載っていましたので、自分の覚え書きの意味も含めてブログに載せてしまう
ことにしました。
LID June 16, 2016 http;//dx.doi.org/10.1016/S1473-3099(16)30024-X
B J Mcmullan et al. Antibiotic duration and timing of the switch from
intravenous to oral route for bacterial infection in children:
systematic review and guidelines
・髄膜炎菌への静注投与期間は4-5日の短期コース、
7-10日間の長期コース両群とも死亡、再発なし。
観察研究で4日間の静注コースは超過死亡、再発を増加させず。
・肺炎球菌の無症候性菌血症は経口、静注で
重篤な合併症率に差がないが、発熱の長期持続例では
経口の場合に局所の感染や持続性菌血症を起こしやすい。
2日間静注後、10日間経口というレジメで合併症なし。
肺炎を伴う菌血症の場合は初期投与が静注のほうが入院率が低い。
・新生児の黄色ブドウ球菌血症では7日間の静注治療は
14日間の静注治療に比べて治療失敗率が高い。
レトロでみると静注治療期間は5-162日間まで大きな差がある。
新生児のMRSA菌血症では14日間未満の治療と14日間以上の治療で
合併症率に差がないが、前者では再発率が高くなる。
治療しているのに消えない持続性MRSA菌血症の
治療期間の中央値は22日(12-29)。
・非複雑性のグラム陰性桿菌(緑膿菌含む)菌血症では
長期コース(10日間)と短期コース(14-17日)の静注投与で
致死率、再発率に差なし。 ほとんど成人データだが、
造血幹細胞移植後の緑膿菌菌血症では14日間未満の静注治療は
14日以上の静注治療と比べて再発が多い(有意差はない p=0.06)。
多剤耐性グラム陰性桿菌に対するデータは成人を対象とした
1個しかないが、菌血症発症からの入院期間は薬剤感受性の
腸内細菌科と耐性の腸内細菌科で有意差なく、
長期投与は不要と考えられる。
・非チフスサルモネラによる菌血症では7日未満の静注治療と
7日以上の静注治療で合併症、再発率に差はない。
・黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌の中心静脈カテーテル感染症
(こども、おとな含む)では菌血症の迅速な改善で救出できる。
小児の中心静脈カテーテル関連黄色ブドウ球菌菌血症に関する
2つの後方視的解析では静注抗菌薬投与期間中央値はそれぞれ10日と14日、
投与期間とカテーテル抜去の有無は再発率と関連せず。
成人では長期投与で合併症を減少させる。
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌とバチルス属による
中心静脈カテーテル感染症では、カテーテル抜去後の抗菌薬投与は
短期投与(3-5日)でも長期投与(5-7日)と比べて非劣性。
免疫不全を含む中心静脈カテーテル関連菌血症では
7-21日間の静注抗菌薬で改善していたが、
カテーテル抜去の有無で抗菌薬投与期間を比較した研究はない。
抗菌薬ロックの研究は少なく、結果がまちまち。
・感染性心内膜炎の小児での臨床試験はなく、
成人データからの推測となる。後方視的にみた小児データでは
静注抗菌薬投与期間は合併症率、再発率に関連がない
(黄色ブドウ球菌:4-6週間の静注コース、2-6週間静注後
長期経口投与に切り替えコース 肺炎球菌:4-8週間の静注コース)。
viridans streptococciの治療ガイドラインでは、
成人データだが、2-4週間の感受性のある抗菌薬投与が有効とされる。
1977年に行われた小さなスタディでは中央値6週間の
経口抗菌薬投与のみで再発はなかったとされている。
・・・菌血症編だけでこのボリュームでしたので、
このへんで一旦おしまいにしますが、
本編は中心系感染症編、呼吸器感染症編、とまだまだ続いていきます。
引き続き、気が向いた時にあげていくことにしましょう。
というか、菌血症編なんでしょうがないのかもしれませんが、
経口スイッチのことほとんど書いてないじゃないか・・・。