殿下が生まれてから、大事なものの優先順位が変わった。

それまでほぼわたしの全てだった仕事(=演劇)よりも、殿下と一緒にいる時間、彼の成長を見守れること、彼の人生の選択肢を最大限に増やす為に、親であるわたしとメガネ氏の人生を見直して軌道修正すること、がずっと大切になった。


もっと言えば、殿下がいることで「幸せ」のアベレージが格段に底上げされ、どう頑張っても不幸せになりようがなくなり、拗ねたり落ち込んだり沼に潜ったりすることがなくなった。


もちろん、愛しくてかけがえのない子どもの存在は、それ故に「失う痛み」の恐怖と表裏一体で、キラキラ眩しい面だけではない。

大切であればあるほど、何かあったらどうしよう、とか、この子がいなくなったら…という不安や恐怖もまた跳ね上がる。


それでもそんな恐怖よりも、


今日一日、今この瞬間を共に過ごせる奇跡をとにかく大切に、大切に大切に噛み締めて、目の前の命に最大限の感謝と敬意を持って湯水のように愛情を注ぎ倒したい


という欲求が勝つ。



命は有限で、誰にも等しく「死」が訪れること、
そしてそれは必ずしも年功序列ではなく、次の瞬間に突然やって来るかもしれないことを知っているから、一緒に過ごせる時間の密度を、出来る限り濃いものにしたいと思ってる。

(そうでなくともわたしは高齢出産で、一緒にいられる時間が短いだろうしな笑い泣き



散歩嫌い。いつも不機嫌。


まもなく9ヶ月になる殿下は、赤ちゃんの形をしているものの中身はどう考えてもわたしの数段上手をいく「賢者のおっさん」って感じで、

言葉も通じるし、
わたしを心底困らせるようなことは絶対しないし、
いつもニコニコしてご機嫌で、
人見知りすることもなく色んな人に可愛がられ、
わたしが待っていて欲しい時はじっと待っていてくれて、
笑いのツボも似てて 笑、

とにかく小さなその背中に教えられることが山のようにある。


殿下が生まれてきてくれたことでわたしは、


変わっていくこと、大事なものの順番が変わることの不安がなくなり、

星の数ほどの「要らないモノ」から「本当に大切なもの」を拾い上げることの大切さ、
本質を見抜く力の重要性、
シンプルな人生の極意、

みたいなものに気付かされた。


まだ生まれて一年も経っていないのに、殿下はわたしとメガネ氏の人生の旗振り役として、それはそれは大きな役割を果たしてくれている。


今しかない急成長の時期を見逃すことなく、殿下の側で、寄り添いながら共に成長したい。


子どもがいない人生を想像してたわたしたちに、殿下がくれたものはもうこの時点でとてつもなく大きいけれど、

それはわたしとメガネ氏にとって、そして殿下自身にとって必要な出会いと関係性だったのだろうな、と単純に思う。


子どもがいる人生だけが素晴らしいとは、微塵も思ってない。

ただわたしたちには必要な運命だったんだな、と。


殿下と親子でいられるこの人生を、メガネ氏と共に楽しみ尽くしたいな。


おやつは加湿器。



9ヶ月を前に、ちょっとした回想録でした。