目眩に怯えながら起き上がり、
貧血に怯えながら歩き、
おまたの傷に怯えながら座り、
乳首の痛みに怯えながら授乳し、
イボンヌに怯えながらトイレへ行き、
胸の張りに怯えながら時計をチェックし、
傷だらけのおまたと、
イボンヌ&キレジーナに支配されたお尻と、
縮み切ってない子宮と、
ガタガタの骨盤と、
終始どこかしら痛いおっぱいと、
瀕死の乳首と、
きったねぇジジイ妖怪の口みたいになってる不気味すぎるヘソと、
消えない正中線と、
寝不足の連続で消えないクマを抱え、
東に乳を求め泣く子あれば飛んで行って乳を与え、
西に濡れたおむつに泣く子あれば飛んで行っておむつを替え、
南に抱っこをせがみ泣く子あれば飛んで行って抱っこし、
北にご機嫌に一人遊ぶ子あれば可愛さのあまり顔面にキスの雨を降らし、
鏡に映る、
ボサボサヘアにスッピンで、
3ターンの授乳用パジャマを着続け、
ストラップ代わりの白ゴムを首からぶら下げ、
くすんだ顔色にクマだけがエメラルドグリーンに輝き、
ブルーライトカットのメガネをかけ、
どこか虚ろな目をした自分の姿に
今はこれでいいんだ…
と日に何度も語りかけながら、
天気さえもよくわからない牢獄のような四畳半で、
ひたすら都合よく盛った、
出産前より何倍も若々しく美しい姿でキラキラと仕事をしつつ、イケメン街道まっしぐらの顔面に成長した息子を抱えて微笑む自分
を妄想して薄笑いを浮かべる。
そんな自分が、今はただひたすらに愛しい。
世間はもう秋。
少しずつ、ひとつずつ、治ってくれたらそれでいい。
晩夏の激痛フェスティバルを越えて、たぶん少しだけ、わたしは強くなった。