吉田修一「静かな爆弾」(2008年)という文庫本を読了した。
耳の障害を持つ女性との単純な恋愛小説である。
こういった分かり易く、疲れないストーリーは以前から大好きだ。文体が素晴らしいのだ。全然疲労感のない、面倒臭い感じもしない、次々とページの捲れるスピード感がある。言葉の突っかかりが少なく、前へどんどん進める。
吉田修一作品は、これで確か2作目になると思う。前作品のことは忘れたが、今回良かったのでまた是非読みたいと思う。
全227ページ。
世界全体が分厚い嘘で以て、完全に覆い尽くされていた近代から現代という時代であったが、この今となっては、その分厚い嘘の覆いには、幾つもの箇所でボコボコと穴が開いてしまっている。その穴は天空へと通じている。
しかも、その穴の大きさはそれぞれの場所で拡大し続けている。
嘘の源泉、ディープステートの勢力が明らかに弱まっているのだ。
嘘で以て分厚く覆われていた空間は、徐々に圧縮されゆく方向にあり、その分、我々の使える真実の空間は拡大してゆく。
ディープステートは力を失いつつ、向こうの方へと追いやられているばかりではなく、勢力範囲まで縮小している。
我々の肉体も精神も、ディープステートの衰弱傾向と共に、益々、自由闊達に元気を取り戻してゆく。
今は確かに大変な時期にあるが、決して深刻な時代ではない。
寧ろ、失っていたもの、真実や元気を取り戻すことの出来る、輝かしい時代とも言える。
まだ嘘の数々が所々にしぶとく存在している為、それを見つけては、我々はいちいち深刻に思えてしまうだけである。
天空へと通じるそれぞれの穴からは、太陽の強い光が射してくる。
その穴の数が増えれば増える程に、それだけ光の射す光線の数は増え、明るくなってゆく。
穴の大きさが拡大すれば拡大する程に、それだけ光の射す面積は拡大し、どんどんと明るくなりゆく。
いずれ嘘は無くなり、穴も無くなる。我々の真実の空間だけになり、太陽全体が顔を出す。