麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」(2015年)という文庫本を読み終えた。
麻耶雄嵩という作家は初読みだが、以前から気になっていた。
いざ読んでみると文章が頗る上手いので、スラスラと理解しながら疲労することなく、読むことが出来た。
主人公の「叔父さん」に当たる人物は、同じ地域内で起こる様々な殺人事件の現場に関わっていることから、私は終盤までにはこの「あぶない叔父さん」の正体が次々とバレてゆく展開だろうな、と読んでいた。
ネタバレにはなるが、結局は、途中において、叔父さんが少しだけ怪しまれる程度であり、全然そういう展開ではなかった。言ってみれば、終始、最後まで「優しくて良い叔父さん」という話で幕を閉じる。
小説とはいえども、普通、こんなにも連続して同じ地域内で殺人事件は起きない。
そして、それぞれの事件の解明や犯人の特定すら完全にはなされることなく、物語が断片的に終わってしまうことに、私は何とも腑に落ちない気もした。
よく考えてみれば、まぁ、叔父さんの正体が悪魔の殺人鬼で……、という展開は、とてもエキサイティングで或る意味面白いのだろうが、読後の暫くは、トラウマというか、少しダメージを受けた精神状態にもなる。
何の苦しみも、要らない興奮もなく、爽やかに淡々と読み終えることが出来たことに、私は幾分の安堵を覚え、次の新しい本へと移ることにした。
全388ぺージ。