井上ひさし「私家版 日本語文法」(1981年)という文庫本を読み終えた。
井上ひさしは初読み。とても著名な作家なので、当然、御名前と顔は知っていた。文章をじっくりと読むのは初となった。これが非常に明るく楽しく、良い文章なので私は驚いてしまった。
日本語文法についての講義である。
普通は国文法が題材の話なんぞ、ただ眠くなるだけの詰まらないものだ。小学・中学の国語の授業では、国文法は圧倒的に生徒に不人気だった気がしている。
しかし一度、井上ひさしという名手が手掛ければ、退屈で詰まらない話も実に楽しい気分にさせてくれる。学校の授業内容は、この本の前では色褪せ、無意味と化する。
学校や塾の先生なんかは、或る意味、この本を生徒に出来れば読んで欲しくないと考えるだろう。
どんな参考書も授業も、この本に負けてしまうことだろう。
具体的内容だが、本に書かれている引用元の文章は様々であり、何と歌謡曲の歌詞、新聞の広告の言葉、野球場での野次の言葉なんかを積極的に取り上げている。実生活に根差す言葉からは、あっと驚くような気付きがある。勿論、例えば谷崎潤一郎のような明治の文豪による名文なども使用される。
多岐に渡る豊富な文章を材料とし、それらを文法的に分析し明瞭に語られているのだ。
今回は、2010年に死去されている井上ひさしという素晴らしい作家を知れた機会となった。
続けて、井上ひさし氏の他作品を読みたいと思う。
全285ページ。