イギー・ポップ「BRICK BY BRICK」(1990年)という作品。
もうすぐ77歳を迎える非常に長いキャリアのイギー・ポップの作品の中では、私はこのアルバムが一番頻繁に聴くし、思い入れが深い。聴く人によって勿論、評価や好みは違うが、私としては、このアルバムはよく出来ていると思っている。何より、曲の調子がいい。
ストゥージズというバンドの頃の作品もいいが、ソロ活動となって更に彼の音楽センスに磨きがかかった。
ストゥージズの頃は如何にもロックらしい感じがあって、もしかすると、そこに拘りがあるかのようにも思えた。
ソロ活動となってからは、そういう縛りや拘りがなくなり、イギー・ポップは、より自由闊達なアーティストに成長した印象がある。
全14曲収録。
今までのようなデタラメの世界への批判をすることは、とても簡単である。全てにおいて、矛盾が存在し、間違っていた。
逆に、これからの新世界へのイメージを膨らませることや、実際に創造してゆくことを具体的に考えたりすることは、実に難しいことである。
今までのように、何かマニュアルがあって、手順も決まっていて、それをするとどれくらいの儲けがあるかとか、そういう定まったことは、これからの新世界にはないのだ。誰も経験したことのない、広大な未知の世界だからだ。
しかし考えようによっては、我々の自由を阻害する支配者たちが居ないことで、本当の意味で自由であるし、無限の可能性があるというもの。
もしかすると、新世界へのイメージというものも、人によって全く違うものであっていいのかもしれない。今までは、それが画一的というほど均質に統制されていた。近未来のイメージとは、みんなが同じような世界を思い浮かべていた。
地獄のイメージとか、暗黒世界とか、そういうものは余り良くないけれども、或る程度の明るく温かいイメージであれば、どういった世界でも良いのだろう。マニュアルは全くない。よって正しいとされる事柄や推奨されるものも、特に決まっていない。本当の意味での自由である。個々がいろんなイメージを持って生きていい。
よって、いろんなイメージを持った人間が世に出現するようになる。それこそが真の多様性社会、ということである。