多和田葉子、尼僧とキューピッドの弓 | 新時代思考記

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多和田葉子「尼僧とキューピッドの弓」(2010年)という文庫本を読み終えた。

前回、初めて読んだ多和田葉子「犬婿入り」という話が最高に面白かったので、もう一冊、多和田葉子作品として大いに期待して読み始めたのが、この「尼僧とキューピッドの弓」というお話だった。

 

期待に反して、同じ著者なのか? とつい疑いたくなるくらい詰まらなかった。面白くなかった。

 

同じ著者の作品なのにここまで2作品の文体が違い、ストーリー展開もスローになり、物語の読感や何もかもまでもが大きく差がついてしまっている。

そりゃ「犬婿入り」は1990年代発表というだいぶ昔の作品であり、それから約20年近く経ったこの「尼僧とキューピッドの弓」と作風が違うのは当然だと言えよう。

しかし約20年という長い年月が経過したとはいえ、その変化の度合いが余りに大きかったので私は驚いたのである。

 

修道院の中でのお話で、物語の世界観やスケールが割と小さく、読んでいて若干狭苦しい想いがする。

人間関係のあれこれや恋などの人間模様が、豊かな言葉で巧みに描かれるが、それらが余りに些末な日常的出来事なので、退屈に感じた。

 

この詰まらない作品が紫式部文学賞受賞作というから、更に驚きである。

全250ページ。