穂村弘「本当はちがうんだ日記」(2005年)という単行本を読み終えた。
初めて読む詩人の書くエッセイになるが、どこか椎名誠に雰囲気が似ていると思った。
日常の些細な出来事や事柄を、面白可笑しい視点で書かれている。
そして自分のことを特別に素晴らしい人として書かないところがいい。どちらかというと自分を蔑んだ感じで書いている。これは町田康みたいで、或る意味、村上春樹のように自分のことを良くは書かない。両者は、非常に対照的に映ってしまう。
そういう風に、自分のことを低く表現する文体というのは、文章を書く時だけの一朝一夕の心掛けでは、かなりの無理がある、というもの。日々、自分の頭で考えていることが、文章には知らず知らず、如実に滲み出るように現われるものだ。偉そうにいつも考えていたら、充分に分かっていても、結局どこか偉そうな文章になる。自己肯定感という言葉とも、ちょっと違う話だろうか。
だから、自分のことを世間体において良く書く人のことを、私は昔から余り信用しない。
譬え大勢の中にあっても、いつも自然な振る舞いと平身低頭で、ちょこんと居る人は尊敬に値する。なるべくなら人間は、出しゃばったり偉そうにしない方がいい。
しかし、この時点で、自分は何か偉そうなことを書いている気がする。アカン。
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