今回は、中小企業の経営戦略についてお話したいと思います。


経営戦略と一言でいっても、いろいろな戦略があります。


今回は、中小企業に合致する戦略といわれる集中戦略、ニッチャー戦略をとりあげます。


集中戦略とは、マーケット全体に対して経営資源を投入するのではなく、市場を地域別などに限定したり特殊な商品に絞り込むなどする戦略です。


また、ニッチャー戦略とは、市場のニッチな部分(すき間)を探り出し、その特定市場で圧倒的な優位性を築くことを目指す戦略です。


要は、ニッチな市場に経営資源を集中して投入するということです。


なぜこの戦略が中小企業に合致しているかというと、、、


①中小企業は大企業と比較して経営資源が限られているため、多角化には向いていないため

②大企業はその知名度と潤沢な経営資源を最大限使って、市場シェア1位を狙ってきます。ですので、大企業が参入しそうな市場セグメントで中小企業が勝負しようとすると、完膚無きまでに大企業に打ちのめされてしまいます。

例えば、中小企業が新製品を市場に投入したとしても、大企業はそれと同じ製品、しかも安価なものを市場に投入し、シェアを取りにきます。


ですので、シェア1位をとれるような大企業が参入しても旨みのないニッチな市場を狙いにいき、そこに限りある経営資源を集中させるのが中小企業の鉄則なのです。



さて、みなさまの会社の製品・提供サービスの種類はどのくらいありますでしょうかはてなマーク


何十種類もあるという会社はちょっと注意です。

そのような会社は製品を洗い出して、絞り込むことを検討すべきだと思います。


さて、どう絞り込むか。


各製品、サービスごとに競合のシェア、自社のシェアなど分ればいいのですが、今回は会計データに基づき製品別の売上、損益を時系列に見ることでその製品の市場におけるポジションを推定する方法を取り上げてみたいと思います。


これには、製品ライフサイクルの考え方が必要になります。


製品ライフサイクルとは、製品を市場に導入してからその製品が市場から消えていくまでの製品の一生を時系列で、「製品導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4つのサイクルに分けた考え方です。


それぞれのライフサイクルで製品の売上や利益率は変わってきます。


例えば、製品の導入期には、まだまだ市場に認知されていないため売上も少ないし、利益も出ません。

その後、成長期に入ると売上が急成長し、利益も黒字となってきますが、競合も参入してくるため、価格競争になってきます。

成熟期になると市場競争は最大となり、大企業でないとなかなか利益が出にくくなってくる、といった具合です。


ですので、自社の製品の売上推移、利益(率)推移などを(出来れば月次推移で)追っていけば、上記製品ライフサイクルに沿って、今その製品がどのサイクルにいるかが把握できます。


ある製品の売上・利益が導入してからずっと低調であれば、もしかしたら大企業がシェア上位を占める市場に無謀にも勝負にいってしまったのかもしれません。

また、以前は売上・利益もでていたのに、最近急に売上、利益が減少してきている製品の場合、ライフサイクルの成長・成熟期に大企業がシェアを取りに参入してきたのかもしれません。


このような場合、早目に見切りをつけてニッチな市場に合致したものに製品を絞り込み、とにかく地域NO1を目指してください。



というわけで、今回は中小企業の経営戦略のお話でした。


長文最後までお読みいただきありがとうございました。


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6月4日に公表された日本政策金融公庫の決算状況です。


平成22年3月期の純損失は1兆1,128億円だそうです。


とてつもない金額ですねあせる


そして1兆円の損失を出したということは、当然貸借対照表の純資産もそれだけ減ります。

1兆円以上も損失を出したら、債務超過にならないのかと思いましたが、そこは政府から2兆8,512億円の出資金を受け入れたそうで、純資産は4兆5,746億円に増えたようです。

これもまたすごい金額だ。


普通の会社なら考えられないことですね。


前期も6カ月で6,554億円の純損失を出しているため、どうやら毎期これぐらいの損失を出すビジネスモデルのようです。


では、なぜこんな損失になるのでしょうかはてなマーク


日本政策金融公庫にはいくつかの事業があるのですが、損失が最も大きいのは信用保険業務です。

日本政策金融公庫の前身である中小企業金融公庫が主として行っていた業務です。

内容としては、企業が金融機関から借入をする際に、信用保証協会の保証を付けたりしますが、その後借り入れたお金が返済できなくなった時に信用保証協会が代わりに弁済してくれます(代位弁済といいます)。

で、この信用保証協会が代位弁済した場合にその7割もしくは8割を日本政策金融公庫が保険金として支払います。

要は、信用保証協会と日本政策金融公庫との保険契約です。


信用保証協会はバンバン代位弁済をして大丈夫なのかと思いきや、その後ろに日本政策金融公庫がいるんですね。


日本政策金融公庫は、保険契約のなかで信用保証協会から保険料を受け取りますので、代位弁済が少なければ(企業が借入金をきちんと返済すれば)、保険料の受取でもうかる、というビジネスです。


ここで、22年3月期の実際の信用保険業務の数字を見てみますと。。。

 

保険引受収益    1,565億円

保険引受費用  1兆1,483億円


上記の保険引受収益が保険料の受取り、保険引受費用が代位弁済にかかる保険金の支払いです。

これだけで、9,921億円の損失が出ています。


不景気を反映してでしょうか、企業が借入金を返済できずに保証協会による代位弁済が増えているようです。


とはいえ、保険料の受取(収益)1,565億円に対し、保険引受費用1兆1,483億円って、収益構造おかしくないですかね。


多少景気が良くなっても、代位弁済ゼロはあり得ないと思うので、保険料の料率を変更するなどしなければ、このビジネスモデルでは利益はでなさそうですね。


中小企業支援の一方で採算度外視の過剰支援となると、結局その損失の穴埋めは政府出資、すなわち我々が負うことになるので、その線引きは難しいところだなぁ、と思いました。



長文、最後までお読みいただきありがとうございました。


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今回は中小企業の経理のお話です。


会計事務所として記帳の代行を依頼されると、証憑類の保管状況や帳簿のつけかたなど会社によってさまざまなことが分ります。


ほとんど何もしていない会社もあれば、領収書をきちんと貼り付けて、きれいに保管してある会社、月次の決算資料がきれいにファイリングされてある会社等さまざまです。


何もしてないのも困りものですが、やりすぎている、無駄なことをやっているというのも困りものです。


どの程度のことまでやればいいのでしょうかはてなマーク


まずは、経理業務の中での記帳処理がなぜ必要なのかを考えてみましょう。


通常、領収書、請求書、預金通帳等があれば記帳処理はできます。

記帳をすることにより決算書、申告書が作成されるわけですから、記帳は必ず行う必要があります。

また、社長は常に会社の財務状況を把握しておく必要性から、月次試算表の作成も迅速に行う必要があるため、月次の記帳処理も翌月10日以内に行うことが望ましいとされています。

そして決算書や月次試算表の他にも、記帳処理の結果、部門別損益の状況や各種財務指標の分析などを行うことができます。


このように記帳処理は、税務申告や会社の財務状況を適時適格に把握するために必要であることが分ります。


ただし、記帳の作業自体は、領収書、請求書、預金通帳の内容を会計システムに転記するだけですから、極力時間・手間をかけずに行うべきです。


現在は、スキャナなどにより証憑類を読み込み、人件費の安いインドなどに記帳代行を依頼しているところもあるぐらいです。



それでは、一体どれくらいのコストを経理にかけるべきなのでしょうかはてなマーク



明確な指標はありませんが、国税庁が1,000円の税金を徴収するのにかける税務調査等のコストは、だいたい1~2円ぐらいだそうです。


このとこを鑑みると、経理事務にかけるコストは粗利益の2%以内にすべき、というのが一つの目安ではないでしょうか。


よく再生会社の調査などを行った際、組織図と人員表などの資料を入手して見るのですが、会社規模に比べて経理部の人が多いなぁと感じることがよくあります。

そういう会社はたいてい無駄な作業や非合理的なやり方をしています。



経理の合理化はさほど難しいことはありません。

経理合理化の具体的な手法は次回以降に譲りたいと思います。


みなさまの会社の経理コストはどれくらいでしょうかはてなマーク



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久々の更新です。


本日の日経新聞記事。


会計士100人 企業に出向

新日本監査法人は2012年までに100人程度の公認会計士を企業に出向させる。監査だけではなく企業経営に精通した会計士を育てる。


とありました。


個人的には、とてもいい試みだと思います。

私も監査法人にいたころに企業への出向があってもいいのではないかと思っていましたし。


今回のケースは、おそらく会計士の合格人数の増加と企業側のIFRS対応のニーズが合致したのだと思います。


監査法人内もかなりの人余りという情報も聞きますし、今後このような企業出向の流れも増えていくのかもしれません。


しかし意外かもしれませんが、会計士は財務諸表のチェックは得意でも財務諸表を作成するのは苦手なんです。

法人税の申告書すら作成したことがない人が大勢いるのが事実です。


ですので、IFRSの需要が一服したあとも産業界から引き続き企業内会計士のニーズがあるのかなぁ、という気がしますが、何にしても日本の会計士のあり方もこれを機に変わってくるのかもしれませんね。


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しばらく、ブログを更新できていませんでしたが、今回久々の更新です。


当ブログの検索ワードの上位にM&A関連のものが多いため、今回は改めてM&Aについて書きたいと思います。


M&Aは、Mergers&Acquisitionsの略ですが、日本語では合併と買収と訳されます。


その名の通り、M&Aはまず、合併と買収に分類されます。


買収には、「株式の取得」と「事業の取得」の2種類があります。


さらに、株式の取得には、誰から取得するかにより株式譲り受けと新株引受に分類されます。


図で表すと以下のようになります↓↓



社長目線で思考する会計士’Sブログ


【合併について】

上記のうち合併は、2つ以上の会社が一つになる組織法上の行為です。

単純にA社とB社が合併すると、A社とB社を足した資産・負債・純資産・損益となり、効果が目に見えて分りやすい手法と言えます。

ただし、A社とB社という全く別の法人が一つの法人になるわけですから、互いの組織を統合するのに苦労する手法と言えます。

ですので、後述の株式取得をして子会社化し、統合の準備をしたあとに合併するというケースが多いようです。

企業の統合についての記事はコチラ

100%子会社を吸収合併した時の会計処理についての記事はコチラ


【株式取得について】

株式取得は、資本を売買する手法です。

対象会社の株式を取得することで、所有権、経営権獲得をします。

目安としては、議決権の50%超・2/3以上の取得となります。

この手法の利点としては、合併と異なり、株式を取得して子会社化しても法人格は別なので、組織の統合という課題をゆっくり解決することができます。

また、子会社株式を売却するだけで資本関係を解消することができるという点で非常に柔軟な手法だといえるのではないでしょうか。


【事業取得について】

事業取得は、資産を売買する手法です。

合併が組織法上の行為となるのに対し事業取得(事業譲渡)は、個別取引法上の行為となります。

ですので、合併だと会社の全ての資産・負債(簿外負債があればそれも)・従業員・取引先等がついてきてしまいますが、事業譲渡ならば、必要な資産・負債(簿外負債を隔離できる)・従業員・取引先等を選択して取得できます。



M&Aというと上場企業でよく行われている気がしますが、中小企業の再生や事業承継の出口戦略としてもよく使われます。

その際、それぞれの手法により、税負担が大きく変わることがあります。

M&Aと税務についてはまた次回以降に回したいと思います。


長文、最後までお付き合いいただきありがとうございます。


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