パーティーはとてもリラックスしたムードで始まった。
パーティーとは言ってもマヤコの家でちょっとした食べ物とお酒と共に会話を楽しむホームパーティーだから、元からそんなに畏まったものではないけれど。
マヤコに私、そしてマヤコの同居人。
その中に何の違和感もなく溶け込んだステファンは、現在私の横でプレートにローストビーフを取り分けている。
「どうぞ、お嬢様」
私はその一切れをフォークに乗せて、ステファンの口元に差し出した。
「お嬢様!?」
「食べてごらんなさい」
マヤコのホームパーティーでは必ず出て来るこのローストビーフは、ヴィゴの手作りだ。
そのこだわりは私のシェフにも勝るもので最高級のビーフを取り寄せて作るから、どこのレストランのものよりもおいしいのだ。
ステファンは私のフォークからローストビーフを味わうと幸せそうに笑った。
「貴方もこれが作れるようになってちょうだい」
私がそう言うとその笑顔が一瞬引きつり、ステファンはちらりとヴィゴを見る。
「今度レシピを教えてやる」
救いを求めるその視線を受けてヴィゴは苦笑しながら言った。
それに笑顔で御礼を言うステファンを見て、マヤコが笑った。
「カナコはグアバとローストビーフがあれば機嫌が良くなるから。それとアイランドプリンセスのキャラメルポップコーン」
確かにそれは全部私の好きなものだ。
そして好きだけれど日本ではなかなか口に出来ないもの。
「覚えておきます」
ステファンは心得たとばかりに頷いた。
そしてマヤコの空のグラスを見て言った。
「次のお飲み物は何にいたしましょうか」
「そうね、ステフに任せるわ。何か素敵なカクテルをお願い」
「かしこまりました」
そう優雅な仕草で一礼すると、ステファンは私の横に膝をついた。
そして私と視線が合うと微笑んだ。
「お嬢様にはグアバを使ったカクテルでもお作りいたしましょうか」
「いただくわ」
すぐに答えた私にステファンはますますその笑みを濃くして、私の空のグラスを手にカウンターの向こうに回った。
私はその後ろで揺れるブロンドを、不思議な気持ちで見つめていた。