西山事件は、1972年の沖縄返還協定にからみ米国と日本政府の間で密約が存在することを毎日新聞の西山記者がスクープしましたが、日本政府はこの密約を否定し、西山記者が国家公務員法違反で逮捕され有罪となった事件です。山崎豊子さんの小説「運命の人」でも題材とされています。
私は、最近の加計学園問題に関して語る前川前文部科学省事務次官に対する読売新聞の個人攻撃報道、政府の不誠実な厳しい対応をみていると西山事件を思い出します。
西山事件では、外務省の女性事務官から資料を入手した西山記者が「ひそかに情を通じ、これを利用して」という言葉で起訴されたことから、密約の有無という本質的な問題、あるいは「報道の自由」と「国家機密」のどちらを優先させるべきかという極めて重要な議論がすり替わってしまいました。
加計学園に関して、総理や官邸の意向で行政がゆがめられたか否かの議論の中、読売新聞が前川氏が出会い系バーに出入りしていると極めて個人的なことを報道し、菅官房長官が、「さすがに強い違和感を覚えた、常識的に、教育行政の最高責任者がそうした店に出入りして、小遣いを渡すようなことは到底考えられない」と会見で語り、本質議論をすり替えようとしています。
その後、報道等で、前川氏のまっすぐな人物像が伝わるようになり、また文部科学省の現役官僚からも、使命感を持って前川氏の話を裏付ける話をする人も出始めており、西山事件のような印象操作、世論誘導に対する厳しい国民の目も出始めています。
西山事件の本質である、沖縄返還時の密約があったことを日本政府が認めたのは2009年岡田外務大臣の時で35年の歳月を要しました。
私は、多くの政治家と出会い一緒に仕事をしてきた中で、素晴らしい政治家がたくさんいることを知っています。一方ダメな政治家もいることを知っています。ダメな政治家とは、噓をつく、人の悪口を言う、威張る人です。
政治主導の政府内で嘘に嘘を重ねる仕事を官僚にさせるのではなく、胸を張って仕事ができるように声をあげる政治家がいることを期待します。声を上げ始めた、まさに命がけの官僚の声をしっかりと聞く政治家が政府内にいることを期待します。
先ほど文部科学省が今回の件に関して再調査をすることが報道されました。もし今回の加計学園の問題がこのままうやむやに過ぎていけば、未来の人たちから厳しい評価をされることになると思います。再調査で良識が示されることを期待します。