この本は小林秀雄氏が昭和36年から53年の間に九州で開かれた「全国学生青年合宿教室」で学生と交わした対話の記録です。薄い文庫本のため移動中に読もうと駅で気軽に買ったのですが内容が濃く、文学、歴史、哲学と私には難しい所が多々ありましたが、頭を研ぎ澄ませてじっくり読むいい本でした。

本書の中で、学生が「戦後、民主主義は錦の御旗で絶対の風潮がありますが民主主義は戦争に敗れた現在の日本にとって本当に救いになるのか疑問に感じます。」との問いに、小林氏は、「民主主義を人生観と間違えるのは一番いけない。しかし、民主主義の政体というものは厳としてあり、民主主義的な制度は封建主義的制度よりいいということは争うことはない。僕は、何主義でもいいと思う。政治は目的を達するもので、目的とは僕らの幸福じゃないか。政治には正しい思想なんてないが、学問には正しいことと正しくないことがある。」と答えています。

 

私なりにまとめたので分かりにくいかもしれませんが、この学生が政治と学問について更に突っ込んでいます。私は今の時代に、このような「民主主義とは何ぞや」といったような青臭い議論が必要なのではないかと強く感じています。

 

これまでの保守派の知識人や革新派の知識人から学ぶことをせず、SNSが普及したことで、両極端な自分にとって耳障りのいいことだけの情報を得て、その背景や歴史を学ばず、真実を求める努力をしない人が極端な考え方に染まり成長していくことを私は危惧しています。

 

私も恥ずかしながら小林秀雄氏の著書をこれまで意識したことはありませんでしたが、この機会に、戦前戦後を生きた保守文化人の代表と言われる小林氏の著書から学びたいと思います。