1. 見事な作劇

🖱️ネタバレ 日本の無条件降伏も、以後の日本の経済発展も知る観客には、終戦後に投降をめぐり日本人同士が殺し合った哀しい事件。投降は基本みんな反対で、中でも島田少尉は部下に銃口を向けて身を挺して止めようとする。一方で、シニカルで戦場でも自己中心的な態度を隠さない小杉伍長が、リスクを冒してまで投降を手助けする。
 終盤の作劇は、ある局面で優れている者が、他の状況では必ずしも正解に辿り付け無い事を示している。「天皇」の為に戦い抜くべきという教育(洗脳)が行き届いていた島田少尉だから、戦地の局面を正しく理解し、物資の略奪など局所的な戦術の立案・実行にも優れていたのかもしれない。その代り、国のために死んでこいと送り出した日本人が、敗戦後に米兵のまでヘラヘラしている程の大局的変化が起きるとは、思えなかったのかもしれない。一方、戦場ですら日常的な行動原理を保ち続けられる小杉伍長の方が、敗戦を確信までできずとも、可能性があると思えたのかもしれない。
 とにかく、複数の日本兵の信念が不器用にすれ違い、ぶつかり合う終盤は、残酷なまでにエモーショナルでドラマティックな悲劇だった。

2. 島田少尉は愚か者か?

🖱️ネタバレ 投降こそ正解だと知る観客には、島田少尉は愚かでしかなく、彼が日本に帰らない結末は「罰」にすら感じられる。ただ、島田少尉は本当に間違っていたのか? 英字新聞の記事は確かに傍証たりえたが、主人公の田丸均でさえ真実とは確信できなかった。仮に、日本の降伏も投降した日本兵の安全も事実ではなかったら、投降した者の命が危ういだけでない。拷問の末、部隊の潜伏先をゲロされたら、部隊全体が危うくなる。だから、英字新聞以上に説得力のある証拠があがるまで、投降を禁止する方が部隊の為かしれない。あの状況で投降にbetしない覚悟は、部下の命の手綱を握る指揮官こそ故かもしれない。