2026年6月19日の最終回から、3日経って今更ではありますが、「国牢城」や「豊臣兄弟!」やW杯チュニジア戦など、感想を整理する時間がなかったので、このタイミングで気になった事を備忘を兼ねて記します。本作から受け取ったメッセージは、視聴者によって千差万別でしょうが、私は「時効の残酷さ」と「復讐の愚かさ」の2つが大きなテーマに感じました、
| Netflix「田鎖ブラザーズ」 |
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1. 時効の残酷さ
時間が経つに連れて、証言者の記憶が曖昧になったり、現場から新たな物証を得にくくなる事から、2010年の法改正まで時効が存在した理由も分かります。少なくとも、時効はミステリ作品に於いて重要なギミックだったし、「第三の時効」みたいな名作も生んできました。ですが、科学技術の発達で、過去には不可能だった分で新証拠が得られ、真犯人を突き止めたのに法的には罪を問えない事態は、やはり問題に感じます。
田鎖兄弟の様に、ギリギリのタイミングで時効撤廃を逃れた事件の遺族も大きく落胆したでしょう。無論、時効が撤廃されても、すべての事件が解決するまで捜査されるわけじゃないので、時効が撤廃されたからといって解決される確率が格段に上がるわけでもないでしょう。それでも、真犯人が野放しが確定する時効は、遺族に無念さを募らせそうです。
2. 復讐の愚かさ
一方で、時効の対象になった事が、田鎖兄弟に時効になっても自らの手で復讐することを決意させたのも不幸。「安倍元総理暗殺」の例を挙げるまでもなく、どんな理由を付けようとも、復讐者が殺人等の違法行為をすれば、罪に問われる。仇討ちを幕府が認めていた、江戸時代も決して良い結果を招いていません。復讐者は日常を捨てて、仇討ち相手を探し回らねばならず、運良く見つけても圧倒的な剣術の差故、返り討ちにされることのほうが多かったようです。成功率は数%程度だったという記述もあります。
加えて、しばしば当人は正当な復讐と信じていても、傍らからみるとただの逆恨みにしか見えないケースも少なくありません。安倍元総理の暗殺はまさにその例で、元々犯人は旧統一教会の幹部を狙っていたのに、彼等の居場所を特定したり接近するのが難しかったから、関連イベントにコメントを送っていた安倍元総理をターゲットに定め、公表されていた動向を頼りに、応援演説安倍氏を銃撃した事件でした。確かに、安倍政権が旧統一教会の活動を直接/間接的に援助していた可能性もなくはないのですが、日本信者から金を吸い上げる非合法活動を安倍氏が了解した上で支援していた筈はないので、贔屓目にみても逆恨みにしか見えない。最終回で明かされた毒殺犯も、田鎖兄弟の父が原因で自身の父が死んだと曲解した上結果、田鎖夫妻を復讐の為に毒殺していた。事件の全体像を知っていれば、田鎖夫妻へ復讐は明らかな逆恨みだが、16歳の少女が立ち聞きした断片だけで下す判断なんてそんなもの。何れにせよ、捜査権限も経験もないパンピーが、復讐心で頭が一杯の状況で、手が届く範囲にいる人を仇と定め復讐を実行すると、非のない相手に二次被害を齎しやすいのかもしれない。
捜査のプロである田鎖兄弟自身も、初週から9週まで犯人の特定を間違い続け、最終回でやっと真相に辿り着く。ただその仇の動機も、死んだ実父の復讐だった。復讐の成功が、新たな復讐を生む連鎖は、このジャンルではあるあるではあるが、復讐に為の銃を向ける相手に田鎖兄が「復讐に成功して満足だったか?」と叱責する様が象徴的だった。仇の犯罪を非難しながら、仇に同じ犯罪を行使する。仇に家族がいなければ連鎖は止まるかもしれないが、復讐という行為の矛盾や空虚さを示すにはピッタリのラストだった。
加えて、田鎖弟が世話になったもっちゃんを無実と信じ込みたいのにも無理がある。確かに、刺す前に両親がジギタリスで亡くなっていたなら、もっちゃんは殺人罪に問われないかもしれない。ただ、他人に教唆されたとは言え、もっちゃんが明確な殺意を持って両親と弟を刺した事実は変わらない。その後、田鎖兄弟の心を救ったのが事実でも、その殺意を許せるものだろうか?
3. 期待した結末
自分は最終回の数回前から、こうなったらいいなぁという結末を妄想していました。それは、田鎖兄弟もしくは第3者が密造銃を使った瞬間、銃が壊れて(暴発して)、使用者が大怪我する展開。右往左往させられた銃がその程度の性能で、密造自体は犯罪だけど、そこまで騒ぎ立てる脅威でなかった事が分かるオチ。また、田鎖兄弟のどちらかが大怪我する事で彼等が我に返り、復讐の愚かさに気付く結末を期待しいました。ですが、弾はキレイに発射されていたので、この期待は見事に外れました。
4. 発射後の解釈
本作が罪作りなのは、重発射後の数分がポエム展開になり、実際に何が起きたのかは視聴者のご想像に任されてしまった処。最後のタイトル・ロゴに鎖が無い事から、兄弟が復讐心から解放されたのは確か。ただ、亡くなった両親と焼きそばを食べるシーンは、兄弟が黄泉に逝ってしまった可能性も匂わす。
最終回の解説放送版をTVerで見返すと、血が滴った夜から昼に転換した直後、「...幼い兄弟が自転車で走る。現在の兄弟が重なる」という解説音声が入る。港で「大きくなったら何になりたい」という兄の問い。少し離れた場所にある子供用自転車。警察署に向かう二人。直後に、両親と共に囲む4人の食卓。鎖なしのタイトル・ロゴ。
誰しも納得できる解釈は思いつきませんが、兄弟が両親の死に屈託を抱える以前の子供時代の状態に戻った事は示していそう。それが精神的健康状態のみの描写なのか、兄弟の死んで時空越える存在になったのかは判断がつかない。ただ、あの程度の血の量では、兄弟も真犯人も死ねていない気はする。
