公開週なのでネタバレ無しの雑感です。
観ると語りたくなるタイプの映画なので、SNS等でのネタバレ前に観賞をお勧めします。
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1. ミステリ好きにはcustomar-centricな快作
 冒頭から企みタップリ。中盤までのミスリードの塩梅も程よい。少しずつ種が明かされても、じゃあ何であんな事言ったの?みたいな違和感が意図的に残され、終盤でごっそり回収する。起承が結するまで、転がりまくる展開は見事。
 「アンナチュラル」ヒット後、「伏線回収を書くのなんて簡単」と言ってミステリを軽んじた辺りに、連続ミステリを書ける作家として便利遣いされたくない野木氏の意思を感じた。「MIU404」では話数を減らせた事を自慢し、敢えて正統派なミステリに属さない警察ドラマに仕上げた。御本人の嗜好は「フェイクニュース」「罪の声」のような、社会派サスペンスにあるのかも。にも関わらず本作は、流通産業への問題提起こそ主題だが、伏線の配置と回収手際が見事で、ミステリ好きの痒い処に手が行き届く映画に仕上がっていた。
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2. シェアードユニバースは両刃の剣
 「アンナチュラル」「MIU404」と地続きにしてお馴染みの人物をチョイ出しする事は、国内で興収を稼ぐ上では役に立ちそう。ただ、顔見せ程度過ぎて、蛇足にも感じた。UDIひついては、組織の役割と位置づけの説明が無いのは致命的。国際配信された際、「アンナチュラル」未見の一見さんは、民間の監察医組織(公益法人)と理解できるだろうか? 名探偵コナンで毎回子供化した経緯を説明するような、やぼったさも許容すべきでは。

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3. 敢えてツッコムなら
 終盤の畳み掛けられた要素の中には、この短期間では無理じゃない?という事項もあった。爆破に乗じて初めて可能になったとしても、特に日本では根回しに時間を要しそうな事なので現実味を感じにくかった。映画で語られてないだけで、事件前から根回しして可能性は0ではないが...。
 事件の発端になる人物が取った行動は理解できていないかもしれない。その職業の経験もなく、其処まで追い込まれて事もないので、完全には共感できない。ただ同じ苦しみに喘ぐ日本人が沢山いるのなら、責任の一端を追う者として心が痛む。