VIVANT最終回、見事でしたね。
 孤児を支える為の蛍石採掘を、ノコルが引き継げるよう日本政府に協力してもらう代わりに、ベキ等テント幹部が日本に投降する。と思いきや、日本に安全に護送してもらった後、ベキ達は脱走。ヘリコプターを引き返えさし、乃木家族を見捨てたかつての上司に復讐する。しかし、実子である憂助が駆けつけ、私怨より国防を優先してベキ等を射殺。と思いきや、ベキ達の銃は未装填だったし、憂助も急所を撃ち抜いてはいなかった。終盤のどんでん返しの連続は、ジェットコースター並みに心地よかったです。
 と基本絶賛な訳ですが、2点だけ愚痴らせて下さい。あと、ノコル疑って御免なさい。

①唐突なラスボスへのガッカリ感
 最終回中盤まではラスボスはワニズ外務大臣(河内大和)のようにも思えましたが、結局終盤に初主演した上原史郎(橋爪功)でした。現在の内閣官房副長官であり、かつての公安部外事課課長でありベキの上司でした。妻に託された復讐が、日本全体ではなくヘリコプターを引き返えさせた上司に向かっていたのは、自然で予想可能な結末かもしれません。実際、事前に指摘した考察者もいました。ただ、ミステリやサスペンスドラマでは、真犯人や黒幕が中盤までに全く登場しないまま、誰だか判明するタイミングで初登場するのはもの凄く下手っぴな演出に感じられます。何故なら、もの凄く短い出番でも、中盤までにそれとなく出演していれば、視聴者が推理(考察)する材料になるし、読者に推理を求めるエラリー・クイーン型の本格ミステリでは、最低限の推理材料を提供することが必須上限になっているからです。

 

 なので、橋爪さんが登場した瞬間に感じたのは、作演出家に対するやっちまった感です。あーあ、折角ここまで用意周到に積み重ねて来たのに、最後の最後でラスボス初出しって、恥ずかしいーっ。橋爪功さんは好きな役者さんのなので腐したくはないが、少なくとも自分にサプライズ感は皆無。ましてや、海外の視聴者にはよく知らないお爺さんでしかないでしょう。VIVANTが海外に打って出る作品なら、最後の最後に爪の甘さが露呈してガッカリしました。

②新庄がモニターなら、公安部長がミスリード過ぎる
 注目ポイントの1つだった、山本以外のモニターは竜星涼さん演じる新庄浩太郎でした。ファンミでの監督の言葉によると、山本の尾行に失敗したのはわざとだったらしく、新庄は初回からモニターとして描かれていたようです。ただ、だとしたら6,7話の公安部長の言動はミスリード過ぎる気がします。6話のもんじゃ焼き屋で公安部長は、「乃木が別班員というのは此処だけにしておこう。国防の最先端を担う彼等、たった1人でも明るみにでれば国に不利益が生じる」と語り、野崎も同意します。実際、7話で乃木は別班だと強弁する新庄を、2人は「乃木は別班ではないとふんでいいだろう」と諭しています。つまり、公安では野崎以外の捜査官に、別班員の素性を明かさない方針なのです。なので、銃撃された別班4人を発見した野崎は、彼等を日本に搬送し入院させる際にも、公安部長以外の同僚や部下に、4人が別班であることを明かす筈がないと考えました。必然的に、新庄も4人を別班だと知る術がない筈なので、彼をモニター候補から外してしまいました。
 ただ新庄がテントから、乃木が別班4人を『射殺』したと報告を受けていれば、野崎が連れ帰った4人の銃創患者が別班だと考えるのは自然かもしれません。2重の仮定をおかないと成り立たない推理なので、事前には辿り着けませんでした。