風守~幸せの場所~ 6、いつか、また
―――“守り人”
それは、人間でありながら大精霊に好かれ、その力を与えられた者。
この世には、魔術師と呼ばれる精霊使いがたくさんいるけど、
その人たちはただ精霊と交渉して力を借りるだけ。
わかりやすく言うと、魔術師は力を使うけど、実際に使うのは精霊だから
その交渉のための言葉、詠唱がいる。
守り人はその力そのものをその人が所持しているのだから、詠唱なんていらない。
それに、精霊の中でも力の強い大精霊に与えられる力なので、
その効力は魔術師よりもはるかに上である。
だからこそ、その力は、
ある時は国の武器に、
ある時は国の脅威になることが多い。
だからこそ、その力を持つ“守人”は、
権力者の私利私欲に動かされることが多い。
誰かが階段を上ってくる音がする。
今日はこの前の質問の日からちょうど一ヶ月。
彼に付いて行くか、行かないか答えを出す日。
少し緊張して、彼らが塔に辿り着くのを待つ。
答えは、決まっている。
私は彼らに付いていくことは出来ない。
だって
約束だから。
私は
そのためにここにいるのだから。
この命尽きるまで、隠し通さなければならない嘘がある。
―――私は・・・フィスだから。
「姉さま・・・」
生きていらっしゃるのかしら。
また、利用されるために捕まっていらっしゃったりしないかしら。
姉は天真爛漫な人だった。
引っ込み思案な私とは真逆の性格で
明るくて、強くて、一つの考えに縛られるのが嫌いで。
いつも教養の授業を抜け出しては、新しい世界へ飛び込んでいった。
私は本が好きだったから、ただ、黙々と読んで、
それを鵜呑みにしていただけだったけど
姉はいつも、本を疑っていた。
「何が正しくて、何が間違いなのかなんて、
こんな紙切れだけじゃわかんないわ。世界は広いのよ?
“絶対”なんて、きっとこの世に少ししかないのよ。
そう思わない?アリア」
私にはわからなかった。
だって私の世界はそれで完成していたんだもの。
でも、きっと姉なら、
その想像を確信に変えることが出来ると、そう思った。
ここから、出ることさえできれば。
だから
姉が“守り人”だとと国王にばれてしまった時、
私は彼女の身代わりになろうと決めた。
「姉さま、逃げて。
その力を、貴女の見つけた正しいことに使えるように。
私は、姉さまの幸せを誰よりも願っております。」
「アリア、」
「私には、お姉さまのような行動力や考える頭脳はありませんけれど
でも、お姉さまのことを理解する力は誰にも負けませんわ。
・・・外に、出たいのでしょう?ここから、解放されて。
今なら出ることが出来る。だから行ってらして。」
「でも、それじゃあ貴女が・・・」
「私の幸せは、ここでも十分に叶います。私はここが好きですわ。
でも、お姉さまの幸せは、ここでは叶わないのでしょう?
お姉さまに幸せになってもらいたいのです。
私がここで、お姉さまとして、自由に生きていきます。
だから、お姉さまは私として、自由に、外に飛び立ってください。」
「・・・アリア」
「・・・違うわ。フィスよ。
今から私は、貴女の姉の、フィス。
良い?アリア。気をつけて。
捕まってはダメ。貴女が見つけた正しいことにだけ、
その力を使ってちょうだい。
そしていつか―――」
いつかまた、「姉さま」と、呼べる日が来ますように
――――扉が、開いた。
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