俺の相方 蝕む夢
夢を見た。
血の海に、人が、沈んでいく夢。
夢の中なのに、あの、鉄臭い血の臭いがして
僕はその人を助けようと必死になって、手を伸ばす。
だけど、血が重たくて、足が上がらない。
声を上げても、響かない。
自分は、ただ、彼女が沈んでいくのを、見ているだけ。
「零?」
「・・・うん?」
相方の反応がぎこちない。そう思ったのは2限目の授業が終わった後。
3限目の体育に出るために更衣室に入ってきた零に声をかけたときだった。
「なんかいつにも増して顔色悪くね?」
体操着に着替えつつ声をかけてみる。
「そうかな」
「体育出れるのか?今日バスケだぞ」
「はは、大丈夫だよ」
鷹森は心配性だなぁ、と笑いながら言う声が聞こえる。
「何々?お世話役がうざいって?」
「宇佐美、てめぇ。・・・はっ、がり勉タイプのくせに
中間で俺に抜かれたのがそんなにくやしいかぁ?」
今日張り出された中間テストの結果。
俺は学年5位、こいつは7位だった。当然零は2位の座をキープしている。
一度だけ、零が転校してきたその月の期末テストだけ、
彼が1位になったことがあったが、それ以降2回のテストは全て2位だった。
その1位は言わずもがな、「不動の一位」宇佐美の兄だ。
彼の兄はひとつ年上だが、留学のため一年留年ししており、
今は俺たちと同じ学年だった。
「・・っ、何を!僕は運動も得意だ!!」
「へぇ、じゃあかけようぜ、昼飯」
「お前には絶対負けん!!!!」
「二人とも整列だって、行くよ」
零の冷静な声に、俺たちははっとして体育館へと急いだ。
夢の、続き。
足元をみると、また、そこは血の海だった。
足を上げて、進みたいのに、
その血はずっしりと俺の脚に絡み付いて、動けなかった。
ただ、おもい。
気持ちが?身体が?
視界に映るものはモノクロなのに、ソレははっきりと鮮やかな赤い色をしていた。
俺は、この色を知ってる。
―――華南
「零!」
その声にはっとする。
気がつくと、俺は、壁に背をあずけて、ずるずると座り込んでいた。
ひどく気分が悪い。冷や汗が頬を伝って落ちていくのがわかる。
「おま・・・なんちゅう顔色」
そう言ったのは鷹森だとわかっていたが、視界にはモザイクがかかっていて
彼の顔は見えなかった。頭がグラグラする。ただの貧血だ。
だから、おそらく酷く心配した顔して自分の側にいるだろう鷹森を
安心させるために声をかける。
「大丈夫、ただの貧血」
「貧血って・・・」
「高村、動けないならそこに横になったらどうだ?」
この声は・・・彼に似てるけど少し違う。彼の声はもっと低いから。
だったら、この声は―――
「・・・宇佐美、くん?」
「な、なんだよ。僕じゃ何か不満―――」
「ご、ごめん、前が見えなくて、誰かわからなかったから・・・」
「宇佐美、お前こんな時まで卑屈にならなくてもいいだろ」
―――気分が悪い。
手が、身体の感覚がなくなっている。
鷹森たちが何か言ってるけど、耳鳴りがして何を言ってるかわからなかった。
「うるさい誰が卑屈―――」
「新」
「兄さん!」
「あれ、宇佐美兄。そっち試合終わったのか」
「高村、具合が悪いのか?」
「・・・」
「―――レイ」
低い、声。
「・・・と、おる?」
「ああ。そのまま寝てろ」
頭に、ひんやりとした感覚が伝わる。床に寝かされたのがわかった。
身体の全体重が、寝かされた部分からゆっくりと床へと移動していく。
―――彼が、透がいるなら、大丈夫だ。
そこでその後の記憶は途絶えた。
TOP