22年前、私はドラマセラピストになった。
 

その頃、アジアの他の国々でも
ドラマセラピーや、
ドラマを教育に取り入れていく動きなどが
少しずつ花開き始めていた。
 

今では、韓国ドラマセラピー学会は300名以上のドラマセラピストを輩出し、
台湾でも学会が正式に設立され、社会的な認知度はどんどん上がっている。
 

インドでもタイでも学術的に認められており、ドラマセラピストは増え続けている。
 

一方日本はいまだ数名のドラマセラピストしかおらず
認知度は低いままで、
アジアでダントツで一番遅れた存在だ。
 

それはさておき・・・
 

22年前、ドラマセラピストになったばかりの私は
この素晴らしい世界を
たくさんの人に伝えたくて仕方なかった。
 

日本でドラマセラピーについて初めて
公の場で語ったのは
教育におけるドラマ活動を
欧米から取り入れて、
日本に広めていたあるNPO団体の集まりだった。

 

その団体の話し合いで
ただドラマセラピストとして意見を言ってみただけだった。
もちろん否定的な意見ではなく、
ドラマの仲間として繋がれるような話だ。
 

てっきり興味を示してもらえると思っていたのに、
私が受け取ったのは
団体の代表からの
マシンガンのような批判だった。
 

危険です!
みなさん、いいですか?ドラマセラピーって
心の治療をするとか言ってるんですよ!?
これは危険です!
絶対に信じないでください!
危険です!!!
演劇が心を治療するなんて、あってはいけません!
危険です!絶対に受け入れないでください!
 

マシンガンの威力が凄まじく、
あまりのことに言葉を失ってしまった私だけれど、
発言を始めたのだから、後には引けない。
 

新人とはいえ、
私は、大学院での学びや
1年間の精神病院のグループホームでのインターン経験、
2年間毎週行ってきた、教育分析(自分自身のセラピー)などから
ドラマセラピーが素晴らしいことを
この場にいる誰よりも知っているのだ。
 

おそらく彼女は「心理療法」という言葉に反応しているだけだ。
何も知らないで心理療法を批判的にみてくる人は
20年前なんて、ゴロゴロいた。
 

香港のドラマ教育界は
ドラマセラピーから学ぶことが多いと、
ドラマセラピストを大歓迎してくれていたのと同じ時に、
私はなんて体験をしているのだろう。

 

彼女は私に一切の言葉を話させないようにし
とにかく危険だと結論づけた。
 

誰も何も言わなかった。

敵だらけの場所に、一人でポツンと立っている感じだった。
 

それでも、ドラマ教育とドラマセラピーには
共通点もあるので
共存して学び会える関係になれたら嬉しいと
私はなんとか言った。

 

やっぱり彼女は
「みなさんいいですか、こんな危険なものと
共通点なんかないですからね」と言い切った。

彼女はこの世界では力のある存在で、
その彼女に危険人物扱いされ、
ドラマセラピーの価値をふみにじられた気がして、
まだ20代の終わりの若い私は、
一気に落ち込んでしまった。
 

これから私は、日本で、本当に
ドラマセラピーなんて、広めていけるんだろうか。
 

その日は眠れずに過ごし、
私はいつの間にか
「どうやったら彼女に認めてもらえるのか」を
ずっと考えていた。
 

そもそもなぜ心理療法が危険だと
思うのだろうか。

あそこまで毛嫌いしているということは、
そしてあんなふうに人を攻撃し、
なんだかいじめている感じ
彼女自身に相当闇がありそうだ・・・

 

ドラマ教育を日本に広める目的に
子どもたちの心を育てる側面があるのなら
彼女はドラマ教育の何を見ているのだろう?

大体、彼女自身がまるでいじめをしていることに、気づけないのか?

そんな彼女にどうやって
認めてもらったらいいのだろう・・・

 

鬱々となって考えている時に
私はふと
そばにあった本に手を伸ばし開いてみた。
 

そして開いたページの最初の文章には
こんな言葉が書かれていた。
 

「あなたを批判してくる人に合わせてしまったら、相手に失礼だ」


 


何の本だったのか、今では思い出せないし、
なぜその本が私の手元にあったのかもよくわからない。

でもこの本は、この一文だけを私に見せるために
存在してくれていたのだと言っていい。
 

 
この文章が教えてくれたこと、それは、

あなたを批判してきた人は、
あなたが合わせてしまったら、
その人は、もう批判できなくなってしまう。

 


あなたはその批判に値するくらい
すごいものを持っているんだから、
それを持ち続けなさい。



そんな感じのことを私は理解した。

ドラマセラピーという素晴らしいものを
私は持っていて、
それについて彼女が批判したいのなら、
批判し続ければいい。

私は堂々と、この素晴らしさを伝え続ける。
それでいい。

そういうことか。
 

私は、彼女に認めてもらおうとすることを
きっぱりとやめた。


 

 そしてその団体から離れた。

私だってこれまでの彼女の活動を支えたメンバーなのだ。
メンバーにそんなことができる人の場所にいる必要はないし、
ドラマセラピーを求めている人たちに向かって
歩いていけばいい。
 

あれから、十数年がたったころ、
ある演出家の方と話をしていた時、ふと彼女の話になった。

 演出家の方は笑いながらこう言った。
「あの人はさ、煙もないところに大火事を起こす女として有名なんだよね。
だから、彼女の人生は敵だらけなのよね」
 

そうだったんだ。
せめて彼女の敵とあのとき一人でも出会っていたら、
私はもっと楽だっただろうなあ。
 

とはいえ、
今の私はもし彼女が批判をしてきても、
笑いながら受け止めて、かわすことができるだろう。
無駄だから攻撃をし返すことはしないだろうけれど、
何を言われても、きっと全然落ち込まないはずだ。

私にはドラマセラピーへの揺るぎない信頼と誇りがあるのだもの。

 

この一件は、
日本でドラマセラピーという新しい分野を
パイオニアとして伝えていく道を選んだ私の
通過儀礼だったと思っている。
 

それは私に決意と覚悟を持たせてくれた。


その後だって、何度も批判されたし、
いろんなことも言われてきた。
 

ある学術団体で発表したときも、
攻撃的に批判してきたおじ様がいた。
感情的になっているあたり、
ご自身の心の問題に触れているようだし、
心理が専門の方でもなく、きちんと理解もされていないようだったので、
私はただ黙って聞いていた。

興奮気味に近づいてくるので、唾が飛んでくるのは
とっても嫌だったけど笑い泣き
 

唾を交わしながら一歩引きつつ
反論する気にもなれないので、
私の頭の中は、ふざけたことを考えていた。

 

もし、アメリカ人の大物博士の先生とかが発表していたら、
ヘラヘラ笑いながら
ハロー、ベリーグッド!とか言ったりするんだろうなー

とか、

ではアメリカの学会に、直接文句をお書きになったらどうですか?
とか勧めたら、そんなことできもしないので、ますます怒るだろうなあ〜

とか。
 

そんな批判を、たびたび受けてきたけれど、
やっぱり私はめげなかったし、
何よりも
ドラマセラピーはずっと素晴らしいままだった。

だから、ドラマセラピーに触れ、
たくさんの笑顔と喜びの涙で満たされた
美しい人たちに、たくさんたくさん、出会えてきた。
 

こんなにも素晴らしいものを批判してくる人に
媚びる必要はない。

批判してくる人に、認められなくていい。
批判し続けられるくらい、堂々としていたらいい。

 

あのとき、彼女に認めてもらえなくてよかったと本当に思う。

あの時のことがいい思い出になってしまうなんて、
人生って本当に面白い。



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今日もお読みくださりありがとうございました。