人情の演技表現にこだわる価値

「〈情〉というものが作る距離感をどのように理解していくか・・・」

これは、

作品作りに置いて、

私が、声優さんや役者さんに求めるもっとも繊細で重要な部分なのです

新人声優さんとシナリオの読み込みをトレーニングしてる時なども、

ほとんどの時間を費やされるのが、

キャラクター達の会話の中で起こっている真実を探る作業です。

そこには、

必ず「人情」と呼ばれる、

我が国特有の思いやりのようなものが漂っています。

ここをどのように感じるか、どのように解釈するかが、

表現の味わいを左右するものになってくるのです。

人情を上手に表現できれば、

それは詩情となってドラマに現れてきます。

観客の皆さんというのは、

暗黙のうちに、こういった人物表現の本質を楽しむものなんですよね〜

人気のアニメなどは、

基本的には、

仲間や家族の絆をテーマとして扱ったものが多く、

そこには、

170年前まで存在した江戸の町人文化が今へ残した、

江戸っ子気質の価値観での人情味というものが色濃く残っているものなのです。

しかし、

若い声優さんと過ごしていると、

この人情が分からない方が多いことに、驚かされることが少なくないのです・・・。

日本人というのは、

他者へ寄り添うときに、

常に人情を持って接しようとします。

これは、

精神的な距離のことでもあり、

物理的な距離のことでもあります。

ここが、

いつの時代も閉鎖的だった島国の文化だけに、

とても繊細に扱われていると思いますね

例えば、

英語圏などは、

近親者を亡くされた方への言葉として、

「I'm sorry」と言います。

（日本語で言うところの「お悔やみ申し上げます」でしょうか。）

そんな場面では、

手を握ったり、肩を抱いたりして、直接的に同情の意を伝えるのが彼らです。

悲しみの中にいる者にとっては、とても勇気づけられ癒される行為でしょうね。

しかし、

わが国では、

お悔やみの言葉を述べ、丁寧に会釈をするのです。

実に淡々としたものです。

（そのように見えますよね。）

私には、どこか突き放すような厳しささえ感じています。

我々日本人というのは、

むやみに相手へ触れてみたり、体を寄せ合ったりはしないのです。

でも、

真実は、

どちらも相手への気持ちの強さは変わらないのです

同じように思いやりの表現として成り立っている行動なのです。

私は、

これに、

人情というものの一片が垣間見れるように思うのです。

人情と同情とを混合しない気質があるのです。

人情には、

もっと無償の愛情が含まれていると思いますね。

現代では、

なかなか理解されにくい「人情」かも知れませんが、

（ほとんど絶滅しているのでしょうか・・・）

この他者との接し方は、

日本の歴史が作った距離感だと思っています。

歴史があるからこそ、

そういったシーンを見たときに、

観客はジ～～〜ンと感動させられてしまうのです

私は、

この日本特有の接し方に、

魅力を感じてしまうのです〜

私は自分の人生を使って、

ここの魅力を「伝える・残す」ことに、

尽力できないかと思っています。

この活動には、

共に作品作りをお願いする声優さんの存在が欠かせませんから、

若い方にも、

習得して頂きたい演技スキルなのです。

私も未だ勉強中である「人情」という文化。

この奥深い魅力へ、今後も迫っていきたいですねぇ。

日本人が日本語を扱ってドラマを作るのだから、