真田部長が振ってくれた、<一国の王様や女王様だったとしたら、

思ったことを言うことが出来るのではありませんか?>という

問いに対して、私もだけど、みんなも一つの答えが導き出された。

 

 

自信を持てるor持てないは、立場には関係ないってこと。どんなに

偉くなったとしても、自信が持てるワケではないってこと

なんだよね(苦笑)マジで、自信を持つって、大切なことなんだけど、

なぜか難しいんだよね(汗)

 

「ありがとうございます。ということは、自己価値という点においては、

久遠チーフが言うように、皆さん、低いんだと思いますよ。先程、

三神くんが言ったように自信があるか、ないか、そこなんでしょうね。

 

と言いますか、自己価値と自信は相互に影響を与え合っているもの

なんです。自己価値が上がれば、自信がついてくるし、自信が持てれば、

自己価値も上がってくるんです。

 

 

ただ、自己価値を上げるというのは、分かりづらいことでもあります。

まだ、自信を持つということの方が分かりやすいと思うんです。だから、

まずは自信を持つということを目標に定めてみてはいかがでしょう?

久遠チーフは、いかがですか?」

 

「真田部長のおっしゃる通りだと思います。実は、自信ということに

ついては、私にとっても課題なんですよ(苦笑)これが、なかなか

克服できないと言いますか・・・(汗)だから、私自身も自己価値が、

まだまだ低いんですよね(苦笑)」

 

 

「久遠さん、大丈夫ですよ。自信があって、自己価値も高くて、

という人は、あまり居ないでしょうから。一般的な人は、出世したら、

有名になったら、お金持ちになったらと思うんですが、どんなに高い地位に

ついても、有名人になっても、どれほど稼ぐようになったとしても、

変わらないんですよね(苦笑)

 

だから、自信を持つことと表面的なことは何も関係ないということ

なんです。大切なのは、今、この時点で、自信を持つということなんです。

ですから、今、ここで、皆さんに考えて頂きたいのは、どうしたら自信が

持てるのかということなんです」

 

「なるほど!でも、どうしたら自信が持てるのか?っていうのも難しい

ですね(汗)」

 

「確かにね。私、特に何かが出来るってわけでもないしなぁ・・・」

 

「理沙ちゃんがそうだったら、私なんて、もっと何もない。子供の頃から

蔑まれてきたし、バカにされ続けてきたしね(苦笑)」

 

 

「う〜ん、そもそも自信っていうワードと自分は無縁だって、ずっと

思ってきちゃってますから、今更、自信を持つと言われても・・・って

感じですね(苦笑)

 

 

そういえば、チーフもさっき、自信を持つことが課題だって言ってました

けど、僕から見たら、チーフはいつも自信があって、堂々としてて、

めっちゃカッコイイって思ってたんです。だから、意外でした。しかも

自己価値も低いなんて、『えっ、ウッソー!』って、マジで驚きました」

 

「三神くん、良いところに気がつきましたね。ひと言で自信を持つと言っても、

人それぞれなんですよ。自信という軸があると考えると分かりやすいかも

しれません。

 

 

0から10までの目盛りがあるとすると、久遠さんは、7くらいで、

三神さんは3くらいなのかもしれません。7の人は、10まで届いて

いませんから、『自信がない』と思うかもしれませんが、3の人から見たら、

充分に自信があるように見えるということです」

 

「部長、さすがです!めっちゃ分かりやすい!」

 

「ありがとうございます。このように、ここにいらっしゃる皆さんそれぞれが、

同じ自信がないと言っても違いがあるということです。まずは、その程度に

ついて見極めていくと良いのでしょうね」

 

 

「部長、でも、どうやって見極めていけば良いんでしょう?」

 

「久遠さん、先程のお話を参考にされたら良いのではありませんか?」

 

「先程のお話ですか?」

 

「はい、そうです。私が感じたことを申し上げるなら、五十嵐さんは1、

三神さんは3、中川さんと谷さんは5くらいですかね」

 

「スゴイ!私たちの話を聞いて、そこまで割り出していたんですね!

さすが、部長です!でも、程度が違うと取り組み方も変わって

くるんですか?」

 

 

「程度の違いでは、取り組み方に違いはありません。ただ、五十嵐さんの場合、

自信は、限りなく0に近い状態なのですが、プライドはあるんですよ。

そこがまた、自信を持つことを邪魔してしまっているんですね(苦笑)

 

 

他の皆さんは、プライドが全くないわけではないと思いますが、

自信を持つことを邪魔するほどではないといった感じでしょうか」

 

「えっ、プライドって、あった方が良いんじゃないんですか?」

 

「あった方が良いのは、プライドではなく、矜持です。と言っても、

プライドと矜持の違いは、分かりづらいですよね?

 

簡単に説明すると、プライドというのは、自分が属する集団の一員である

ことによって、自尊心を高めて、自分を高く評価し、他者と自分を比較して

自分の優位性を誇示すること。

 

 

矜持は、自分自身の価値観や人格を尊重し、自分を卑下せずに立ち振る舞う

こと。違い、分かりますか?」

 

 

「う〜ん、プライドは、人に見せびらかす感が強いですけど、矜持は、

他者は関係なく、自分の心の中にあるものという感じですか?」

 

「久遠さん、その通りなんですが、見せびらかすというのは、

少し言い過ぎかな(笑)焦点をどこに合わせるのかが一番の違いですね。

 

矜持は、自分自身の内面に焦点を合わせるのに対して、プライドは、

外部の要素に焦点を合わせているという点が大きく違うんです。

 

もちろん、皆さんが、我が社の社員であること、このチームの皆さんが

久遠チーフのチームに属していることにプライドを持つことは否定しませんが、

それよりも各自が、自分自身に対する自尊心や人格を尊重することを忘れて

欲しくありません。それぞれが、自分自身のことを認めていることは、

何よりも大きな武器になりますからね。

 

 

そういった意味も含めて、どちらが、本当の意味で、自己価値が高く、

自信を持っているのか、分かりますよね?」

 

「はい!矜持は、あった方が良いけど、プライドはなくても良いのかなぁ?

いや、でも、俺は、このチームの一員だってことへのプライドは持ってたい

かな(笑)」

 

 

「それは、僕もそう」

 

「私も!今までは自分が所属するチームにプライドなんて持てなかったけど、

今は、なんか、このチームの一員だってことが、自慢だったりするもん(笑)」

 

 

「私もみんなが誇りに思ってくれるチームであり続けるように、精進して

いきたいですね!智ちゃんは、どうかな?」

 

「今の私、これまでの私じゃないみたいで不思議なんです。昨日までの私

だったら、こんなこと言われたら、猛烈に反撃してたと思うんですけど、

今の私は、『なるほどね』って受け容れてるんです。

 

私、部長はご存知かもしれませんけど、縁故入社だから・・・。

たぶん、親の職業っていうか、役職っていうか。にもかかわらず、

軽んじられてるっていうことが許せなかったんだと思う。これがプライド

なんですよね?しょうもない理由。マジでバカバカしい(苦笑)

 

 

でも、みんなと同じように、このチームの一員だってことへのプライドは、

私も持ってたいです。チーフのことも、なんだかんだ文句言ってるけど

好きだし・・・。

 

それにしても部長、私の中で、いったい何が起こってるんでしょう?

内側が、今まで経験したことがないくらい穏やかっていうか・・・、

全く波立ってないんです。不思議なんだけど、とっても楽で、ずっと私が

望んでいたのは、こういう状態なんじゃないかなって、今、やっと

気づいた感じです」

 

 

ポツポツと語る五十嵐智美の表情が、どんどん柔らかくなっていく。

さっきとは別人みたいに、今はとっても穏やかな顔になった。心が変わると

顔つきまで変わってくるんだなぁって、なんか感慨深かったの。

 

私もいつも良い顔でいたいなって。心が穏やかだと良い顔になっていくんだと

思うから、いつも、どんな時でも穏やかな心で過ごしたいって、初めて強く

願ったかもしれない。

 

 

<次回へ続く>