よく分かんないけど、なんか勢いでレオンくんをランチに

誘っちゃった(汗)でも、たぶん、いや、きっと、私は無意識だった

けど、レオンくんをランチに誘ったってことは、何か意味があるんだと

思うんだ。

 

 

だって、何も考えてなかったのに、いきなり<たまには、ランチ行かない?>

って誘ってたんだもん。誘った私自身が一番ビックリしたよ(笑)

 

なんか、こういう言い方をすると、めっちゃ無責任みたいな感じだけど、

こういう何も考えてないのに、身体が勝手に仕切って何かを始めた時の方が、

上手く行くことが多いんだよね。っていうか、動いて正解ってことが

多い気がする。

 

 

「レオンくん、ランチ、何食べに行く?」

 

とりあえず、会社を出て来ちゃったけど、何も決めてないんだよね(苦笑)

私も今日は、何が良いんだろう?今日は、パスタでもご飯でも

良い感じなんだよね。

 

「僕よりもミウさんは、何が良いんですか?」

 

「私は・・・パスタかご飯かな」

 

「パスタかご飯ですか・・・。範囲が広いですね(苦笑)

じゃあ、パスタにしましょう」

 

「うん、分かった!じゃ、パスタね」

 

ってことで、近場のイタリアンに行こうと思って向かったんだけど、

思いの外、混んでて並ばないといけない感じだったから、カフェのランチ

メニューに落ち着いたの。ここなら、混むこともないし、のんびり出来るからね。

 

 

「ミウさん、突然、僕をランチに誘うなんて何かあったんじゃないんですか?」

 

「ううん。特に何もないけど、なんで?」

 

「ミウさんからランチに誘われるなんて、初めてのことなので、

何かあったんじゃないのかなって思っただけです」

 

「そっか・・・。でもね、残念ながら、何もないの。最近は、何事もなく、

スムーズに進んでいるし、あとはイベント開催まで、突っ走るだけでしょ?

みんなもそれぞれのペースで進めてるみたいだしね。私も特に困ったことも

なく、順調に進めて行けてるし」

 

「そうですか・・・。それなら良いんですけどね」

 

「レオンくんってさ、お父さんとか、お母さんみたいだよね。いつも遠くから

見守ってくれてる感じ。それが安心感を与えてくれて、ホッとするんだよ。

でも、あまり遠すぎちゃうと不安になるの。

 

 

私には、実家がないから分かんなかったけど、たぶん、みんなが実家の両親に

対して感じる気持ちを私はレオンくんに感じてるのかなって思う。

だから、ありがとうって思うし、それを伝えたかったんだ」

 

「どうしたんですか、いきなり?本当に何もないんですか?

穏やかな分だけ、心配になりますよ」

 

「大丈夫だよ。私も成長したってことなんじゃないの?(笑)」

 

「何か、僕に話したいことがあったんじゃないんですか?」

 

「いや、特に何もないけど」

 

「ミウさんが言わないなら、僕が言いますけど、弦夜と個人的に連絡を

取っているんですよね?それで、先日、五十嵐智美さんと何か

ありませんでしたか?」

 

「藤崎さんとレオンくんは仲良しなの?」

 

「特に仲良しということではありませんけど、一応、元守護天使同士

ですからね。こうして、一緒に仕事をすることになったので、

とりあえず連絡先くらいは、お互いに交換したんですよ」

 

「そうだったんだ。別に五十嵐智美とは、この間、ランチに誘われたけど、

何も問題は起きなかったよ」

 

「そうなんですね。彼女が弦夜のことを個人的に食事に誘ったという話を

聞いたんです。でも、弦夜は、その誘いを断った。それで、ミウさんと

彼女の関係が拗れてはいないか、弦夜が心配していました」

 

「そうなの?だったら、直接、私に聞いてくれれば良いのにね」

 

「女性同士の問題は、時にややこしくなることもありますし、デリケートな

問題でもあるみたいでしたから、弦夜も気を遣ったんだと思います。

それで、それとなく、僕に探って欲しいって言って来たんです」

 

「それで、レオンくんは、探ってたの?」

 

「特に探らなくても、二人を見ていれば、なんとなく分かりますから」

 

「それで、何かあったように感じたの?」

 

「いいえ。特に問題は感じませんでした。彼女がミウさんのことをランチに

誘うところは見ていました。それで、少し心配していたんですが、あの場で、

僕も一緒に行くというのは、少し可笑しいと思ったので、知らないフリを

していました。

 

でも、ランチから帰って来た二人を見て、僕の取り越し苦労だったと

思ったので、何も言いませんでした。一応、弦夜には、五十嵐智美が

ミウさんのことをランチに誘ったことは話しました。でも、何も起こらなかった

みたいだという報告もしておきました。

 

昔からそうなんですが、弦夜は、大切な人に対して過保護になるところが

あるんですよ。それで、僕が近くに居るから、これ幸いと僕のことを

使おうとするんです(苦笑)」

 

 

「過保護って言ったら、レオンくんも過保護だと思うけどね(笑)」

 

「僕も過保護ですか?」

 

「うん。過保護だと思う。だって、レオンくんが傍に居てくれると

守られてる感、ハンパないよ(笑)」

 

 

「そうですか・・・。それは、ミウさんが今まで、あまりにも守られて

来なかっただけだと思いますよ」

 

「そうやって・・・さりげなく毒吐くの、やめて頂けます?(笑)

確かに、私は守られ慣れてはいないけどね」

 

「それで、弦夜とつきあうんですか?」

 

「まだ分かりません。ただ、食事には誘って頂いたので行こうとは

思ってます」

 

「そうですか。それが、先日のハンバーグ事件に繋がるわけですね」

 

「ハンバーグ事件って・・・。そんなに大袈裟なこと?」

 

「僕が大袈裟にしているのではなくて、五十嵐智美にとっては、

事件だったんじゃないんですか?ミウさんをランチに誘ったのも

その件だったんですよね?」

 

「う、うん、まあね(苦笑)」

「五十嵐智美には、弦夜と食事に行く話はしたんですか?」

 

「いいえ、してません。何も聞かれてないのに、わざわざ言う

必要なんてないでしょ?」

 

「良かった。ミウさん、ちゃんと成長しているんですね」

 

「それ、どういう意味?」

 

「以前のミウさんだったら、聞かれてもいないことを言って、自ら問題を

作ってしまうところがあったなぁと思っただけです。聞かれてないから

言わないというのは、嘘を吐いたことにはならないので、悪いことでは

ないんですよ。それをミウさんも分かってくれたのかなって、

少しほっとしました」

 

「なんか、アトランティーナみたいなこと言うよね(苦笑)」

 

「立場的には、僕とアトランティーナは近いですからね」

 

「まぁ、そうなのかもしれないけどね」

 

「ミウさん、ミウさんが弦夜と食事に行くのはミウさんの自由です。

でも、くれぐれも五十嵐智美というか、チームメンバーには知られない

ようにした方が良い。色恋沙汰が原因で、関係性が壊れてしまうなんて

いうことは起こり得ることですから」

 

「ご忠告ありがとう。私は悟られないようにするつもりだよ。

それに、私的には、色恋沙汰でもないしね」

 

「ミウさんサイドの話ではないんですよ。五十嵐智美が弦夜のことを

個人的に食事に誘った話は、弦夜から聞いていますよね?さっき、僕が

話した時も驚かなかったので、弦夜から連絡があったんだろうなと

思いましたけど」

 

 

「うん。藤崎さんから聞いたよ。会社に電話がかかってきて、食事に

誘われたけど、断りましたって」

 

「ですよね?それって、彼女が一人で少し残りたいって言った日ですよね?

もし、彼女に恋愛感情が無かったら、みんなが居るところで、食事に誘った

と思いませんか?それに、ミウさんにハンバーグのことを聞くために、

わざわざランチに誘ったりもしませんよね?

 

ということは、つまり、彼女の中には、まだ淡い思いかもしれませんけど、

弦夜に対する恋愛感情があると思って間違いないんですよ。ということは、

自分は食事に誘ったけど、断れたのに、ミウさんは、弦夜から誘って、

食事に行くんですよ。それを彼女が知ったら、どう思うか。良くは思わない

ですよね?しかも今、イベントを控えている中、チームの足並みが

崩れることは避けたいんです」

「分かってます。私だって、そのくらいのことは理解してるつもりだし・・・。

でもさ、可笑しな話だよね。自分に好きな人がいる。その好きな人を食事に

誘ったけど、断られてしまった。それで、その好きな人が別の人を誘って

食事に行った。それだけのことじゃない?それで、人間関係がギクシャクする

とかって、あり得ないって思っちゃう」

 

 

「ミウさんは、アトランティーナと一緒に様々なことを学び、経験してきて

いるし、目指すところがあるから、そう思うのかもしれません。僕も今、

ミウさんが言ったことは、その通りだと思います。

 

でも、多くの人はエゴをコントロールすることを知らないし、話しても

理解するまでには時間がかかるでしょう。だから、エゴに振り回されて

しまう場合が多いんです。となると、エゴのメカニズムを知っている側が

上手くコントロールしてあげないと、上手く進むものも進まなくなって

しまう。これは分かりますよね?」

 

 

「はい、理解してます。だから、周りには知られないようにしようと思って

いるし、藤崎さんにも、あまり連絡をして来ないで欲しいって言ってる。

現に、レオンくんより個人的な連絡は取り合っていないと思うよ」

 

「そうですか。じゃ、ミウさんより、この話をする必要があるのは

弦夜の方なのかもしれませんね。あのランチの時もそうです。

いきなり、何を言い出すんだ!って思いましたからね(苦笑)

なんとか、誤魔化しましたけど・・・」

 

「あっ、私も思った!レオンくん、『ナイス!』って心の中で、

思ってたもん。藤崎さんには、ランチに行く前に、せめてイベントが

終わるまでくらいは、藤崎さんと私が個人的に連絡を取っていることは、

メンバーに知られたくないっていう話をしてたんだけどね(苦笑)」

 

「そうだったんですね。弦夜も嬉しくなっちゃったのかもしれませんね。

 

 

ま、とりあえず、僕からも弦夜には釘を刺しておきます。せっかくの大きな

チャンスですからね。こんなことで、イベントを台無しにするわけにも

いきませんから」

 

「ホント、その通り!じゃ、その点については、レオンくんにお願いします」

 

「分かりました。僕から弦夜に話します」

 

「ありがとう!ほらね、やっぱりレオンくんは、頼りになるんだよ(笑)」

 

 

「お父さんとか、お母さんみたいですか?(笑)」

 

「うん!お父さん、お母さんプラスお兄ちゃんもあるかな(笑)」

 

「僕は、ミウさんにとって身内みたいな存在ということですね(苦笑)」

 

「そうだね。アトランティーナとレオンくんは、家族みたいな感じかな」

 

「褒められている気がしないですね(苦笑)」

 

やっぱり、レオンくんとランチに行って正解だった。だって、今まで私の中で

引っかかってたものが、スーッと流れて行ったし、五十嵐智美のことも藤崎さん

のこともレオンくんに任せておけば大丈夫ってことが分かったんだもん。

 

ほらね、身体が勝手に動いた時は、逆らわずに従うのが得策。頭であれこれ

考えてから動くよりもずっと効率的だし、成功率も高いからね。

 

 

<次回へ続く>