あ、俺は笹崎と言って〇〇大学の3年だよ。あまり就職の役には
たちそうもないFラン大学だけどな。しかも所属してるサークルは
オカルト研究会なんだよ。つまり根っからの暗いオタクなんだ。
でな、夏休み中のことだったんだが、全メンバーがサークル室に
夕方6時に集まったんだよ。本当はもっと遅い時間にしたかったんだが、
サークル室の利用は午後8時までと決まっていたんでしかたがない。
で、何をやったかというと6物語会だ。まあ、江戸時代に流行したという
百物語会の縮小バージョンだな。なんで6物語かというと、研究会の
メンバーが6人しかいなかったからだよ。1年が3人と2年が2人、
3年は俺1人で、4年は引退してもういない。だから俺が会を仕切らなくちゃ
なんない。といっても、会が終わったあとにみなで飲みに行く予定に
なっていて、どっちかというとそれがメインだったんだけどな。
どういうふうにやるかというと、全員がその日までに怖い話を一人1つ
集めてきて語る。だから全部で6話しか話さないことになる。
それで6物語会。少ないと思うかもしれないが、じつは怪談というのは
話数が多ければ怖いってもんじゃない。一人が何話も集めなくちゃなんない
となると、どうしても嘘くさい話やあんまり怖くない話が混じってしまうんだよ。
で、7時きっかりに始めることにして、まずサークル室の照明を消して、
窓にブラインドを下ろす。そして用意した黒模造紙をガムテープではって
できるだけ暗くするんだ。そして各自が持ち寄った懐中電灯をつける。
そして話が終わるたびに一本ずつ消していくんだよ。ロウソクだと大学から
許可が出ないし、俺らも火事が怖い。大学を燃やしたら洒落にならないからな。
で、時間になって会が始まった。まず最初に俺が、ひとしきり百物語会に
ついての講釈を言い、会が終わった後に出てくるという青行燈という
妖怪の話もした。話す順番は学年順も考えたが、どうせ6人なんだし、
テーブル2つをくっつけて座った順番に右回りで話をしていくことにした。
で、最初は2年のAというやつで、題名は「陸軍病院」というものだった。
ある大学病院は、もともと戦前に陸軍病院があった跡地に建てられていて、
夜間に地下へ非常階段で降りていくと、昔の陸軍病院の病棟に出てしまう
ことがあるという話だった。これがけっこう怖かった。そして2人目は1年のF。
こいつの話はどっかで聞いたことのある廃墟探索もので、結末もまあ
ありきたり。ネットとかで仕入れた話くさかった。次が俺、いちおうは
サークル長だからな。あまり怖くない話をすると面子にかかわる。
だから、とっておきの話をしたんだよ。けっこうウケてたな。まあ、
成功した部類だと思った。そしてその後、2人の話が終わって、1本ずつ
懐中電灯が消され、室内はかなり暗くなった。時間も、始まってから40分
くらいたってたしな。で、いよいよ最後の一人、1年のUが話し始めたんだが、
題名が「星を見る少女」というもの。これを聞いて少し嫌な予感がした。
だって、有名な都市伝説があって、それと同んなじ題だったから。
しかしさすがに、それじゃないだろうと思ってたら、やはり同一の話
だったんだよ。ある大学生が駅通りのマンションをふと見上げたときに、
4階のベランダから夜空を見上げている少女を見つけた。顔立ちの細部までは
わからなかったが、長い髪で、きれいな人のように思えた。
夜空を見上げるなんてロマンチックだな。、とそのときは思った。
ところが翌日、同じ道を通って、そのマンションを見ると、やはり
同じ位置に前日の少女がいた。次の日も、また次の日も。すっかりその
少女に一目惚れしてしまった大学生は、とうとう我慢できず、
その少女に会いにいくことにした。その日も少女は空を見ていて、
大学生はそのマンションに入ってそこの部屋のある階までエレベーターで
のぼった。勇気を出して、部屋のインターホンを押したが返事はなし。
しかもドアには鍵がかかってる。しかし中に人がいるのは間違いない。
そこで彼はマンションの管理人室に行き、弟だと嘘をついて部屋の
鍵を開けてもらった。そしてそこで彼が見たものは、マンションの
ベランダで首を吊った少女の遺体だった・・・そこまで語ってUは話を終えた。
俺は「お前なあ・・・せっかく話をしてくれたのに悪いが、それは
ちょっと、いや、かなりおかしい話だぜ。まず、下の道から4階の部屋の
ベランダなんて見えないよ。そういうつくりにはなってない。それと、
弟だと嘘をついて、それで管理人が部屋の鍵を開けてくれるってのも
おかしいだろ。そんな甘々なセキュリティがあるわけない。もしもストーカー
とかだったらどうするんだ。何かあったら管理人の責任になってしまう。
それにベランダで首を吊って数日がたったのなら、たとえ冬でも
遺体は腐敗するだろ。近隣の部屋の住人もベランダには出るだろうから、
必ずわかってしまうよ。・・・それに最もおかしいのは、首を吊った場合、
頭は空を見上げるような形にはならないんだよ。確実に顔が下向きに
なるはず・・・こんなふうに、都市伝説ってのは、よく考えれば細部が
おかしいことばかりなんだよ。お前もオカルト研究会のメンバー
なんだからそれくらいのことは考えろよな」と言った。
少しきつい言い方になってしまったが、今後のためにも言っておくべきだと
思ったんだよ。他のメンバーも、そうだそうだという感じでうなずいてた。
しかし、当のUはぼんやりした様子だった。心ここにあらず。という感じで、
視線も定まっていない。「おい、お前どうしたんだよ」と、そのとき、
「この人はここに来る途中で私を見たのよ。それで急遽、あらかじめ
用意してた話をチェンジしたみたい。あまり怒らないであげて」Uの背後から
女の声が聞こえ、Uの体の横から白い手が出てきて、Uの前に置かれた
懐中電灯のスイッチを切った。部屋が真っ暗になった。「うわあああ!」
・・・後日、この大学の女子学生が首を吊って亡くなっていたことが
発覚した。どうやらノイローゼだったらしい。しかもその女子学生は髪が長く、
