今回はこういう題でいきますが、この記事は書くかどうかひじょうに
迷ったんですね。というのは、きわめて難しい上に、
医師の間でも議論が定まっていない問題だからです。ですから、
この記事を書くうえでは、AIとはだいぶ議論しました。
まず、オリゴとは少数という意味で、プログレッションは進行、少数転移
に対する治療アプローチのことなんです。つまり、広範な転移のない状態で、
一部の進行した転移巣を治療していく。主に放射線治療を指しますが、
外科手術が行われないわけではありません。
さて、がんというのはイボのようなものです。ただしふつうのイボは
転移しません。これは良性腫瘍ということになります。
ですが、がんは全身に転移して患者の命を縮めます。

では、どうやって亡くなるかというと、がんが毒性の物質を出す
わけではありません。サイトカイン(情報伝達物質)を出したり、
全身の栄養を奪ってしまうことはありますが、基本的には
がんが増えることによる圧迫が問題になります。
ここで、その圧迫の大きい臓器を治療することによって、臓器を
守ることができれば、延命につながるのではないかという考え方が
あります。ただし、全身につぎつぎと転移が出てくるようだと難しい。
かえって局所治療したことが、患者の不利益になる可能性がある。
例えば胃がんで、肝臓に転移があったとします。もしも肝臓だけなら、
その転移病巣を放射線で、あるいはラジオ波や抗がん剤の
動脈注射で治療すれば、延命につながるかもしれません。

しかし同時に、腹膜播種や脳転移があったとすれば、肝臓だけを
治療しても意味がないかもしれないんですね。いずれ全身に
転移してしまうでしょう。そして肝臓をいじった分だけ体が弱る。
一般的な病院では、うんとは言わないでしょう。
この判断が難しいんです。ここで自分が考えたのは女優の樹木希林さんの
事例です。樹木希林さんは乳がんに罹患しましが、抗がん剤を
嫌っていて、服用を拒否しています。外科手術はしたようです。
では、どういう治療をしたのか。彼女のがんは腸や副腎、脊髄など
全身に転移しており、2012年に「全身がん」であることを
スポーツ紙のインタビューで告白しました。

治療をは、九州にある個人病院で、何度も放射線の3D照射というのを
受けています。3Dというのは、体の動きに合わせて、
微妙にずらしながら放射線をかけるもの。
おそらくですが、これでがんが増大した部分の臓器に放射線を
かけて、がんの総量を減らしていったんだと思います。そして
その臓器を守る。完治はできませんが、なかなか考えられた戦略です。
オリゴプログレッションで延命してきたんですね。抗がん剤を
やらなかったので副作用もなかった。
ただ、樹木希林さんに勧められた芸能人仲間がこの治療を受け、
成功しなかった人もいたようです。樹木希林さんは全身がんであっても、
自力で動くことができ、最後まで仕事をしていました。
最期は大腿骨骨折し、そして75歳で亡くなっています。

留意すべきは、この放射線治療は自由診療で、
治療費は1回300万~500万ほどかかり、その上九州への旅費や
滞在費も必要でした。そして彼女には付き人もいたでしょうし、
なかなかふつうの患者にできることではなかったでしょう。
誰にでもできる治療法ではないんですね。ただし、お金と時間に
余裕があり、自由に動けるのならば、やってみる価値は
あるのかもしれません。

ただし、上でも書いたように、腹膜播種などがあれば厳しいと
考えられます。ということで、樹木希林さんを例にして、
オリゴプログレッションについて考えてみました。
このような考え方もあるのだということを知ってほしいと
思ったからです。ですが、どのような患者にもあてはまるものでは
ないことは覚えておいてください。主治医との綿密な打ち合わせや、
セカンドオピニオンが必要です。では、今回はこのへんで。
まとめ ・ オリゴプログレッションとは、少数の転移の一つが
進行した場合、そこだけをなんとか対処しようとする方法
・ うまく使えば延命につながるが、全身転移状態では難しい
