bigbossmanです。今回もまた、Kさんと話した内容です。Kさんは
自分より10歳以上年上の男性で、本業は実業家、貸しビルなどを
手広く経営されています。幼少の頃から霊能があり、全国各地を
飛び回って霊障事件を解決されていますが、すべてボランティアであり、
交通費すらいただいたことはありません。いくつかの事件は自分も
解決にかかわっています。普段は沖縄の石垣島に在住です。
いつもの大阪のホテルのバーで話しました。そのとき自分が飲んでいたのは
アニゼットという薬草のリキュールです。「ねえKさん、不死というものは
ありますか?」 「うーん、一般的な不死というのは、自分の身体のまま、
いつまでも永久に生き続けるということだろ。それはないと思う。
今までそんな人は見たことがない」 「まあそうですよね」
「中国には仙人という概念があるな。内丹法や外丹法の修行をして仙人になる。
そうしていつの日か空に飛び上がり、永遠の命を得て高い山の洞窟などに
住んでいる。しかし、実際にそういう実例はないと思うよ。不死に対する
あこがれから考え出された話なんじゃないかな」 「西洋ではどうです?」
「西洋というか、キリスト教国では、不死は悪いものだと考えられている」
「どうして?」 「お前、英語のimmotalという言葉を知ってるか?」
「文字どおり、不死という意味ですよね」 「ああ、そうだ。だが、
キリスト教世界では、いったん死んで、神に復活させられてから最後の
審判を受けるのが正しい道と考えられている」 「はい」 「だから不死
というのは一種の神の罰なんだ。例えば吸血鬼や狼男は不死の仲間、
イモータルな存在だ。そういうものは、天国には行くことができず、永遠に
地上をさまよわなくてはならない」 「なるほど、いいことではないんですね」
「そうだ。お前はフライング・ダッチマンの話を知っているか? 正式な
キリスト教の話ではないが、あるときアフリカの喜望峰沖で神を呪った
船長がいた。そしてその罰として、永遠に生き続ける運命を背負わされた」
「なるほど。つまり安息することができないわけなんですね」 「そうだ」
「ところで、中国の仙人のように、自分の身体のままいつまでも生き続ける
形以外の不死ってあるんですか?」 「うーん、それがあるんだよ」
「どういうことです。教えてください」 「また、ブログのネタに使うのか。
まあいいけどな。例によって登場人物は仮名にしてくれよ」 「了解しました」
「ある大学に70歳を過ぎた教授がいた。専攻はヨーロッパの中世史」
「はい」 「その中でも特に魔術について深く研究してた」 「黒魔術ですか?」
「まあ、そのたぐいだな」 「で?」 「俺はその人物、A教授をずっと
マークしてたんだ」 「どうして?」 「というのは、その人物の
周囲で不審な死がいくつもあったんだよ」 「不審な死?」
「まあ事故死とか病死なんだが、その人物が死ぬことによってA教授に
利益が出る人物ばかり。研究のライバルとか、生命保険をかけた親戚とか」
「怪しいですね」 「ああ、だが証拠はまったくない。警察が疑うことのできない
事例ばかり」 「どうしたんです?」 「それで、探偵社から人を雇って、
A教授について調べてもらった。国会図書館でどんな本を閲覧したかとか、
どこの店で何を買ったかとか」 「はい」 「その結果、A教授の研究分野が
だいたいわかったんだ」 「どんな研究です?」 「人にのり移る魔術だ。
自分の死の間際、魂を体外に出して他の人の体内に入る」 「そんなこと
できるんですか?」 「どうやらできるらしい。ただし特殊な儀式が必要だ」
「うーん、ハリー・ポッターのような話ですね」 「まあそうだな」
「どうしたんです」 「A教授は末期の胃がんにかかり、〇〇大学病院の
個室に入院してた」 「で?」 「その部屋を封印したんだよ」
「どうやって?」 「四方の壁に特殊な結界を張った。霊的なものはその部屋から
出られないように」 「それで?」 「家族には知らせなかった。説明しても
信じてもらえるようなことじゃないからな」 「そうでしょうね」
「ただ、家族には特殊なマスクをつけてもらったんだ。病院でどうしても
これが必要だと言って」 「で」 「でな、俺も白衣を来て医師の格好をして
A教授の死期を看取ったんだよ」 「そしたら?」 「A教授はすでに
心電図がつけられ、いつ亡くなってもおかしくない状態。鎮静をさせられて
意識もなかった」 「で?」 「A教授がいよいよ臨終となって最後の息を
したとき、その口からポッと白い玉のようなものが飛び出た。おそらく
俺にしか見えなかったと思う。教授の家族も医師たちも気にして
なかったからな」 「それで?」 「その玉は、まず病室にいた人たちの
口のまわりを飛び回ったが、マスクのところで跳ね返される。それにも
護符が入ってたからな。そして壁や天井にあたってスーパーボールの
ように跳ね返る。結界の効果だ。そうしてるうち、10分くらいかな。
その玉はだんだんに光を失ってスーッと消えたんだよ」 「じゃあ、もしも
その玉が体内に入ったら」 「そうだ。おそらくA教授の教授に体をのっとられて
たんじゃないかな」 「そうやってずっと生き続けると」 「ああ、A教授が
何度目かの生かはわからんが、他人の体をのっとるたび、魔術の研究を続け
たんだろう」 「ううう、すごい話ですね。ところでのりうつりの魔術は?」
「封印したよ。いいことではないと思うからね」 「なるほど」
