bigbossmanです。この間また、大阪のホテルのバーでKさんと
お話しました。Kさんをご存じない方のために説明すると、自分より
10歳以上年上の男性で、実業家です。貸しビルなどを経営されていて、
年商は数億。幼少のときから霊能力があり、お仕事と並行して、
全国を飛び回って霊障事件の解決をされてるんですが、すべて
ボランティアで、交通費もいただいたことはありません。現在は
沖縄の石垣島に住まわれていて、仕事があるたびに大阪や東京に
出てこられているんです。そのときKさんはスコッチのシングルモルト、
自分はペルノという薬草のリキュールを飲んでいました。
「Kさん、何か事件の話を聞かせてくださいよ」 「またブログのネタに
使うつもりか。まあ、かまわないけど、登場人物はまだ生きてるから仮名な」
「わかりました」 「今から12年ほど前の事件だ。発端はある
大学病院の救急だ。夕方頃だった」 「はい」 「これは幸いなことだ」
「というと?」 「大病院だと、夜になると勤務医は当直以外は
帰ってしまうことが多い」 「まあそうですよね」 「だから夜間の
救急医は専門でない場合も多いんだ」 「なるほど」 「ところが
夕方ならまだ各科の先生方もいる。そこから応援を呼ぶことができる」
「そうでしょうね」 「だから、救急にかかる場合、深夜などは
助からないこともあるんだ。といって、いつ病気になるかはわからないしな」
「はい」 「その病院に救急車で運ばれてきたのは12歳の女の子だった。
中学1年生。胃のあたりを抑えて七転八倒苦しんでる。額には玉の汗。
救急医が腸閉塞、腸捻転を真っ先に疑うような症状。さっそく
血液検査が実施され、それと並行してCTが撮られた。血液検査の結果は
炎症の値が高まってる。そしてCT画像には、胃の下部から12指腸にかけて
長さ7cmほど、幅3cmの異物が映っている」 「はあ、それは何かを
飲み込んだんでしょうか?」 「その子にも聞いたんだが、まったく
心あたりがないと言うんだ。昼に給食を食べ、夕飯はまだ。その間、間食も
いっさいしていない」 「うーん、何でしょうね」 「とにかくその子の
苦しみがあまりにひどいので、緊急に手術をすることになった」
「はい」 「その当時も腹腔鏡手術はあったが、出始めで対応できない
可能性もあり、開腹手術になった」 「それで?」 「手術には
消化器外科の医師が対応してくれた。それほど時間はかからず、腹部から
異物が取り出された」 「ああ、助かったんですね」 「まあ、そうだ。
ただ、取り出されたものが・・・胎児のような赤ん坊のような形を
していたんだ。頭部にはまばらに髪も生え、爪のようなものもあった。
しかし胎児ではない。体全体が軟骨のようなものでできていた」
「異形成ということですか?」 「ああ、よく知ってるな。だがもちろん
子宮にできたわけじゃない。まあ、病院ではその特殊なケースを疑ったが、
細胞診の結果、驚愕の事実がわかったんだよ」 「というと?」
「そのお腹が痛んだ子、本人の細胞とは明らかに違うものでできてたんだ」
「ええ?」 「ただまあ、その女の子は手術から回復すると、ケロッとして
何でもなかったように退院していったんだよ」 「はあ」 「ただな、
その病院にたまたま俺の知り合いの医師がいてな。俺のところに
連絡が来た。どういうことかまるでわからないから究明してくれとな」
「ははあ、それでどうしました?」 「その女の子の親に連絡して、その子から
話を聞かせてもらうことになった」 「はい」 「バレー部に入っているという
活発な子でな。体格も大きかった」 「はい」 「そしたらその日、
先生方の会議が長引いて部活の開始が遅れた。それでバレー部の1年の子たちと
4人で空き教室に集まってこっくりさんをやったんだそうだ」 「で?」
「形式どおりにこっくりさんを呼び出し、たわいもないことを聞いていたらしい。
そして、〇〇は誰のことが好き?という質問を始めたそうだ」
「ああ、ありがちですね」 「でな、そのときその場にいた沢美という子と、
好きな相手が同じだという答えが返ってきたらしい。男子バレー部の男の子」
「はい」 「そして本人はそのことで沢美と気まずくなったが、ケンカと
いうまでにはいたらなかったらしい」 「はい」 「その後おかしなことが起きた。
こっくりさんは最後に、お帰りくださいと言って霊を戻すだろう。ところが
10円玉が素早く、いやだと動いたんだそうだ。何度やってもいやだ」
「どういうことでしょう」 「もちろん女の子たちにはわからない。その後、
バレーの練習が始まり、何事もなく帰宅した。そして家に戻ってすぐ腹痛が
始まって、家の人が救急車を呼んだということだったんだよ」
「どういうことでしょう」 「わからんよ、これだけじゃ。そこで沢美という
子にも話を聞くことにした。そしたら事情は今話したとおりで、腹痛を起こした
子には腹が立っていたけど、原因に心当たりはない。まるで見当がつかないと」
「まあそうでしょうね」 「ただな、そのときに気になる話を聞いたんだよ」
「どんな?」 「沢美さんは2卵性双生児だったんだそうだ。それでなのか
わからないが、難産になり、片割れが未熟児で産まれた」 「はい」
「で、4日後に亡くなってしまったんだそうだ」 「はい、気の毒ですね」
「その子はあやこという名を決めていたそうだが、どの漢字なのかは
沢美さんにはわからなかった」 「うーん、どういうことです?」
「お前、アポートって知っているか?」 「ああ、わかります。超能力の
一種で、何もないところから物体を呼び出すものですよね。一時期、
インドのサイババという術者が、空中から灰を取り出すというパフォーマンスで
有名になりました」 「それじゃないかと思うんだよ」 「わかりません」
「おそらくその沢美という子がその能力者で、腹痛を起こした子の腸内に
双子のあやこを呼び寄せたんじゃないかと。ただし、本人は意識しないまま。
おそらくこっくりさんがきっかけだろう」 「うう」 「わからんがな。
ただもしかしたら、そういうことはまたあるのかもしれない。それで、もう
成人しているが、その沢美という子のことは今も気にかけているんだよ」
