今回はこういうお題でいきます。さて、現代の教育では
「個性を伸ばす」ということが重視されているようです。人間の
能力は一人ひとり違う。中には理系が得意な人も、文系の人も

スポーツや裁縫などが得意な人もいる。考え方も一人ひとりが違う。
ですから、それぞれが自分の得意な能力を伸ばしていき、
違った分野で活躍することが社会の発展につながる。

まあ、この考え自体は間違ってないとは思いますが、自分はこれも
進化の一つの方向性だと考えているんです。どういうことかというと、
海にはサルパという生物がいます。

 



これはホヤの仲間で、体は半透明、樽形でプランクトン食性。
収縮により、寒天質の体に水を通すことでジェット噴射で移動します。
大きさは1~10cm程度ですが、20cm近い個体もいます。

世界中の海にいるんですが、とくに南極海に多く、大発生することが
あるようです。怪獣のおもちゃのような形をしていて、しばしば
何十mの群体になることがあります。つまり、多数の個体がつながって
生活し、一つの生物のようにふるまう。

人類とはまったく異なる進化の形をしているんですね。生殖しかたは
一世代ごとに交互に変わります。どの個体もひじょうによく似ていて、
人間が識別するのは難しいでしょう。どんどん個性をなくして、全体として

一つの生き物になるような方向に向かっている。

 

サルパの群体 一つ一つは個性を消す方向に向かう



これがどういうことかというと、人間は個性を伸ばす方向に進化の
舵を切っており、逆にサルパは個性をなくす方向に舵を切っている。
では、種としてどちらが繁栄していると言えるでしょうか?
どちらが幸せなんでしょう?

これは難しいですね。「繁栄」 「幸せ」の定義によって答えは変わって
くるだろうと思われるからです。では、別の角度から考えてみましょう。
人類ははたしてサルパのようになれるのか?

こういう思考実験をしてみましょう。同一の遺伝子から20人の人間の
クローンをつくったとします。人間のクローンはもちろん禁断の研究で、
許されていませんが、これはあくまで思考実験です。

 



このクローンたちには、母というものはなく、乳幼児のときからまったく
同じように育てられる。大きくなっても、髪型も同じ。服装も同じで、
学習することも全員同じにする。そして集団生活を送る。

この社会はいったいどうなるでしょう? 同一遺伝子ですから一卵性双生児が
20人いるようなものです。鏡に囲まれて暮らしているような
感じですね。知能も運動神経などもほとんど差異はないはずです。

もちろん実際にはできませんが、きわめて興味深い思考実験です。
彼らはどういった行動をとるでしょう。おそらくですが・・・まずは他との
差異を際立たせようとするんじゃないでしょうか。同じ形に
髪を刈られていても、一部をはね上げるなどの工夫をする。

 



やはり人間である以上、自己のアイデンティティはあるのではないかという
気がするんです。ただし、考え方もほぼ同じでしょうから、
共感的思考に入るのは容易だろうと思われます。

では、この集団に宗教のようなものは生まれるんでしょうか? これも
わかりませんが、自分たちのもとになった遺伝子配列を崇めるなどの
ことは起きるかもしれません。

 



では、彼らが思春期になったとき、集団の中に一人の異性を入れれば
どうでしょう? おそらく彼らの平穏だった生活の中に
かなりの波風が立つのではないかと予想されます。

さてさて、ということで考えてみましたが、人間はどうもサルパの
ようにはなれないようです。ただ、サルパが環境の変化以外で滅びることは
なさそうですが、人間は違うでしょう。戦争や温暖化などで滅びる
危険性はつねにありそうです。では、今回はこのへんで。