今回はこういうお題でいきます。これは行動心理学の用語ですね。
バイアスというのは、「偏り」「偏見」「先入観」などと訳されます。
「この統計にはさまざまなバイアスがかかっている」という使い方をします。
で、確証バイアスですが、ネット辞書にはこのように出てきます。
「自分の考えや信念を裏付ける理論や情報だけを、積極的に集めてしまう
心理傾向のこと」まあこのとおりなんですが、
怖いのは、結果として、反対意見などの異なる考えに対して強い抵抗感を
持ち、無意識に軽視・排除するようになってしまうことなんですね。
うーん、そうですね。いろいろな例で説明していきましょう。

まず、自分が職業にしている占いについて。例えば、ある依頼者が夫と
離婚しようかどうしようか迷っているとします。ただ・・・迷ってると
言っても、依頼者の心の中ではどうしたいか決まっている場合が多い。
その自分の決定を支持してもらいたくて占い師を訪れることが多いんです。
で、自分の結論どおりのことを言う占い師に対して、「この人は信頼できる」
と思う。逆に、自分の心の中と反対のことを言う占い師に対しては、
「この人、なんだかインチキ臭い」と、こうなってしまうことが多いんです。
そして、自分の心と合致することを言ってくれる占い師に出会うまで、
何度も何度も別の占い師のところを訪れる。

でも、たいていの占い師は、そういうお客の心理状態を知っています。
「ははあ、この人はもうすでに答えを自分で決めていて、その決断を
後押ししてくれるようなことを言ってほしいんだな」と考えます。
そういう場合、さりげない雑談や質問で、依頼者の心理を見抜くことは
簡単にできます。まあ、そこはプロですからね。そして最も依頼者が
喜ぶような、自分が信頼されるようなことを言う。
また、こういう場合はどうでしょう。ゲルソン療法というのがあります。
極端な減塩、野菜(人参ジュース)の大量服用、肉や魚を食べない、
コーヒー浣腸をする・・・などを組み合わせた民間療法なんですが、

もともとこれを考案したゲルソンという医師は、抗生物質が未発見の
時代の結核の治療法として考えたはずなのに、日本ではなぜか、
がん治療法として有名になっています。
で、これを信じて確証バイアスがかかっている人に対して、
そんなものは効かない、とか、もともとがんの療法ではなかった、などと
言っても信じようとしないんですね。むしろ、そういう人間に対しては、
激しい敵意を剥き出しにして反論してきます。でも、ゲルソン療法を
信奉している人でも、なぜかコーヒー浣腸はやらないことが多いんです(笑)。
こうして見てくると、世の中にはいろいろな確証バイアスがあることが
わかりますし、それを使って商売をしている業者もいます。
まあ、何を信じて何を信じないかはその人の勝手なんですが、親切に忠告して
くれた人も、激しい抵抗や拒絶にあうと、だんだんに何も言わなくなります。

「この人はこういう人なんだ」と思われてしまい、その人からは離れていき、
その人は、結局、自分の考えを肯定してくれる仲間とだけ付き合うように
なります。そしてカルト集団のようなものができあがる。
この確証バイアスと似たものに、トゥルー・ビリーバー・シンドロームと
呼ばれるものがあります。アメリカでインチキ霊媒師として活躍した
ラマー・キーンという人物が、自分の生き方を反省して書いた
という著書の中で出てきます。
それによれば「一度何かを信用してしまった人は、それに相反する証拠を
見せられても、絶対に認めようとしない」と言っています。認めることで、
自分が壊れてしまうと感じるからです。せっせと築き上げてきた世界が
崩壊するんですね。そしてそのことを熟知していて、巧みに商売に
利用している人間もこの世には存在するんです。では、今回はこのへんで。
