bigbossmanです。今回は人から聞いた話です。自分は深夜のバーに
よく行くんですが、そこで会って意気投合した男性からうかがいました。
その男性は30歳くらいで、名前は聞きそびれました。
大学2年のときの夏のキャンプ場でのことだそうです。
「そのとき俺は神戸の大学にいて夏休み中だった。でな、帰省しないやつを
中心に男だけ4人でキャンプに行ったんだよ」  「はい」  「免許を持ってる
やつがいて、そいつが家からミニバンを出してくれてな」  「はい。場所は
どこですか」  「くわしくは言えないけど、北陸のほうだ」  「遠いですね」
「ああ、行きは7時間近くかかったな」  「それで?」  「オートキャンプだよ。
家族連れが多かった。すでにテントはたててあって、それを借りるんだ」
「じゃあ、準備はほとんどいらないですね」  「寝袋と食料くらい」  「はい」

「でな、キャンプについて、テントは70くらいあって、その真ん中に
炊事場とトイレがあった」  「夏休み中だとテントは暑かったでしょう」
「ああ、だからほとんど外にいて、テントは寝るときだけ。外も暑いし、セミの
声がとにかくうるさかった」  「で?」  「キャンプ場だけ木が伐ってあって、
まわりは林なんだよ。でな、着いてすぐ、みなでうろうろ歩き回ってたら、
佐田ってやつがいないんだよ。まあでも、心配はしなかった。山の中だけど
平地だし、迷うこともないだろうと考えた」  「で?」  「あんのじょう、
30分くらいして佐田は林の中から出てきた。何をやってたんだよと言うと、
魚を食ってたっていうんだ」  「どういうことです?」  「佐田のやつ、
虫が好きなんだよ。それでカブトなんかがいないかと思って林の中を
見て回ってたっていうんだ。でも、どの木にもついてない。そのうちに

林が切れて、渓流の流れる川原が見えた。で、そこで青い煙が上がってる」
「・・・」  「川原の石の上で焚き火をしている男がいて、その上で
木の枝に刺した魚を焼いてる。近くに寄ってって、何をしてるんですか?と
聞くと、イワナを焼いてるんだ、喰うかい?と言われた。それで
一匹ごちそうになったそうだ」  「へえ」  「塩焼きで、焼きすぎ気味だったが
美味かったそうだよ」  「どんな男だったんですか?」  「それは聞かなかった。
でな、それから炊事場でみなでカレーを作った。といってもレトルトをお湯で

温めただけだけどな。そのうちに夜になって、俺たちは焚き火スペースに
酒を持って行ったんだよ。そこのキャンプ場は焚き火をしてもいい場所があって、
鉄製の焚き火台も用意してある。その上で火を起こして、肉やソーセージを
焼いて食いながらウイスキーを飲んだんだよ」  「それで?」

「それまでの間、佐田のやつはなんか大人しかった。口数も少なかったし。
まあ、今考えればだけどな」  「はい」  「で、時間も12時近くなって、そろそろ
火の始末をしようかってときだな。気温はだいぶ下がってた。突然、佐田が
立ち上がって、約束を果たさないと。って言い出した。約束って何だよ?と
聞いても答えず、林の中に走ってったんだよ」  「で?」  「わけわからんだろ。
どうしたんだよ? と叫んで追いかけたが、佐田は振り向きもせずに林に
走り込んで姿が見えなくなった。で、俺たちは一度テントで懐中電灯をとってから、
林の中を追いかけたんだよ。おーい、佐田!って呼びながら?」  「それで」
「佐田の姿は見えなかったが、走るザッザッという音は聞こえた。それを頼りに
進んでったら、林が切れて渓流に出たんだ。丸石がゴロゴロしてる川原だ。
で、その日は満月に近くて、月明かりで渓流の水がキラキラ光ってたのを

覚えてる。でな、川を超えた向こうに人の姿があったんだ」  「佐田さんですか?」
「一人はそうだったけど、もう一人いたんだ」  「誰です?」  「わからん。
背は高かった。佐田が175cmくらいだったけど、それよりかなり高い。
でも、すべて真っ黒で、顔も、何を着てるかもわからなかったんだ。佐田のほうは
見えるのに」  「黒い服を着てたんですか?」  「いや・・・そうじゃないと思う。
夜の中にさらに穴が空いたような黒さだったんだよ」  「何をしてたんですか?」
「俺らも最初はわからなかった。けど、その黒いやつが佐田の肩をぽんぽんと
叩いたら、佐田がうなずいて・・・それから首に何かをかけるような

仕草をして・・・宙に浮いたんだよ。といっても

せいぜい30cmくらいだけどな」  「それは?」
「そのあと狂ったように手足をバタバタさせ始めたんだ」  「どうしました?」


向こうの川原まで渓流を渡ったよ。腰ぐらいの深さだったけど、流れは弱かった。
コケとかで滑って転んだやつもいたけどな」  「で」  「向こう岸に着いたら、
佐田のやつはまったく動いてなくて・・・張り出した木の枝からロープが
下がってるのが見えた。首を吊ってたんだ。何をやっても蘇生しなくて、
キャンプ場の管理棟に戻って管理人に連絡したんだ」  「で、黒い人は?」
「どこにもいなかったんだよ、それが。ただ・・・朝になって警察が来て佐田が
死んでることを確認したんだが・・・そこの川原な、石の上とか間にたくさんの
魚の骨が落ちてたんだよ。おそらく100匹以上」  「うわあ、

何だったんでしょう?」  「わからんよ。でも、本当にあったことなんだよ」