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今回はこういうお題でいきます。さて、みなさんは
催眠術を信じますでしょうか? じつは自分は、アメリカに
いたとき、向こうではけっこう有名な催眠術師の先生に
ついて学んだことがあります。ただ、その先生と
術式の細かい部分は公開しないという約束をしており、

自分はある事情でアメリカに入国禁止になっていて、
もうその先生と会うことはないと思うんですが、いちおう
約束を守って、当記事では細部はぼかさせてもらおうと
思います。ただし、催眠術のやり方は何通りもあります。

さて、2年前かな、橋本環奈さん主演の『シグナル100』
という映画がありました。担任教師が36人の女子高生に
「自殺催眠」をかけ、スマホを使うなど、ごく日常的な特定の
行動を取ると催眠が発動し、自殺してしまうという内容でした。



うーん、まあフィクションなので、あれこれ言うのも
なんですが、こんなことはありえないです。まず、36人全員に
術がかかることはありませんし、またかかったとしても、
そんなに効果が長く続くはずはありません。普通、催眠術は
術者といるときにしかかからないものです。

ここからは、日本の催眠術の歴史を簡単にみてみましょう。
明治維新があり、外国からさまざまなものが日本に流入して
きましたが、催眠術も、明治末から大正時代にかけて
大流行がありました。行った者は、正式な医師から
民間療法師までさまざまでした。



あの「千里眼事件」を主導した福来友吉博士も、催眠術を
実践していました。で、あまりに流行しすぎたため、
1908年(明治41)に発布された警察犯処罰令に
「みだりに催眠術を施した者は処罰する」という
一項が入れられたんですね。

その後、催眠術は「霊術」などと名前を変え、現在まで
続いています。この時代の催眠術の術式については、
夏目漱石の『吾輩は猫である』に出てきますね。
抜粋してご紹介しますと、主人公の苦沙弥先生が、
出入りの医師、甘木先生にかけてもらうんですが、

両眼の上瞼を上から下へとなでて、しきりに同じ方向に
癖をつける。しばらくすると「こうやって、瞼をなでて
いると、だんだん眼が重たくなるでしょう」と聞く。
なおも同じようになで下ろして「だんだん重くなりますよ」
と言う。こうした摩擦法を3,4分繰り返した後に、

催眠術の元祖といえるフランツ・メスメル
キャプチャ

「さあもう開きません」と言いながら「あけるなら開いて
ごらんなさい。とうていあけないから」と言う。しかし、苦沙弥は
「そうですか」と言ったかと思うと、ふだん通りに両眼を
開いてしまった・・・こんなふうに懐疑的な描写になっています。
聡明な漱石は、催眠術の限界は熟知していたようです。

さて、ここから本題です。2011年、フロリダの   
ノースポート・ハイスクールで、3名の生徒が次々に死亡する
事件が起きています。この高校、100年以上の歴史があり、
Wikiにも項目がある有名校のようです。

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この高校のジョージ・ケニー校長は、「ストレスが軽くなる」
「能力が向上する」などと言い、生徒や職員に催眠術を施して
いたんですね。最低でも75名にかけたと見られています。
死亡した生徒は、ウェズリー・マッキンレー(16歳 自殺)、
ブリタニー・パランボー(17歳 自殺)、

マーカス・フリーマン(16歳、自動車事故)。事故は
関係ないと思われるかもしれませんが、ケニー校長は
この生徒に自己催眠の方法を指導しており、彼が自己催眠を
試みた直後に事故に遭ってるんですね。

ジョージ・ケニー校長


で、当然ながら訴訟社会のアメリカですので、生徒の親族から
裁判が起こされ、検察は、被告の催眠術に対して教育委員会が
たびたび注意をしてきたこと、あるバスケットボール部員は
40回も催眠術をかけられていたなどのことを
有罪の根拠としましたが、

催眠術と3名の死亡について明確な因果関係が確認できなかった
ため、ケニー校長は1年間の保護観察処分となり、2度と催眠術は
行わないという約束をさせられます。また、遺族に対しては、
教育委員会が、弔慰金20万ドル(約2400万円)ずつを
支払うことで決着しました。



これ、みなさんはどう思われますでしょうか。基本的に、
催眠術では被術者に不利益な行動を起こさせることはできません。
例えば、自殺はもちろんですが、自傷することや、大金を
燃やしたりすることなども含まれます。

さてさて、しかしながら、何度もくり返された場合は異なります。
それは催眠術ではなく、洗脳、マインドコントロールに
なってしまうんですね。オウム真理教事件のように、
平然と人殺しを行うまでになってしまいます。
ということで、今回はこのへんで。