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今回はこういうお題でいきます。音というのは、皆さんご存知でしょうが、
物体が振動し、それが空気や水などに音波として伝わり、
耳の鼓膜をふるわせたものが信号化され、神経によって脳内に伝達されて
再生されるわけです。けっこう複雑な過程をたどっているんですね。

よくSF映画では、敵宇宙船や惑星などを爆破したときに、
ドカーンなどという効果音が入るんですが、宇宙空間は真空なので、
基本的に音は発生しません。ですけど、映画で無音というのはやはり
変なので、これはしょうがないかなと思います。

映画『スターウォーズ』 爆発するデス・スター
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ちなみに、余談ですが、爆風というのも起きないですよね。
例えば、宇宙空間で核爆発が起きれば、熱波や電磁波、放射能などは
発生するでしょうが、威力は弱いと思います。相手の宇宙船を攻撃するなら、
むしろ爆発しない、とがった固い物質をぶつけて穴をあけ、
中の空気を逃してやるほうが効果的かもしれません。

ところで、音については古代ギリシア時代から解明が進んで、
ピタゴラスが音律を数学的に発見したなどとも言われます。
ただ、音についての知識が古くからあったことで、大きな誤解も生じました。
何を言ってるか おわかりでしょう。光についてです。

音波は空気を媒質として広がります。海の波が水を媒質として広がるのと
同じなんですが、そうすれば当然、光もそうだと考えたくなりますよね。
ですから、宇宙空間には何らかの物質が満ち満ちていて、それを光の波が
伝わっていると長い間想定されてきました。この仮想的な物質は、
イギリスの自然哲学者ロバート・フックにより、エーテルと名づけられます。

エーテルを検出しようとして失敗に終わった、マイケルソン・モーリーの実験


この考え方は合理的なので、昔の科学者を責めることはできません。
光があまりにも特異なんです。エーテルを発見するため、さまざまな実験が
試みられましたが、どれも不成功に終わっています。
当時の科学水準では、まさか光が波と粒子の両方の性質をかね備えていると
想像できなかったのは、無理がないことでしょう。

さて、最近、音のオカルトの話をよく耳にするようになりました。
一つは「アポカリプティック・サウンド」と呼ばれるもので、
「終末の音」と訳されます。アポカリプスとは、新約聖書の中の
『ヨハネの黙示録』をさす場合が一般的です。

アポカリプティック・サウンドのイメージ
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最後の審判が近くなると、7人の天使が出現して高らかにラッパを吹き鳴らす。
イエス・キリストが復活し、このときに最終戦争ハルマゲドンが起きるとも
されます。死者がすべて復活し、地獄と天国に分けられるんです。
ですから、日本人には いまいちぴんときませんが、キリスト教徒にとっては、
アポカリプティック・サウンドは大きな意味を持ったものです。

この話題が初めて出たのは、2011年にアップされたウクライナ、キエフの
動画からです。古びたマンションの5階あたりから外の様子を撮影したもので、
約11分にわたって、断続的に大きな音が聞こえます。
不気味な感じで、たしかにラッパの音に聞こえなくもありませんが、
自分は、何か金属のきしみ音に似ているように思えます。

この音の正体について、2つの説が出されています。一つは、
工事に使われたクレーンが揺れている音というもので、よく聞くと、 
大きな音の合間に、ガシャンという重機らしき音が何度か確認できます。
ただ、近くで工事が行われていたかどうかはわかっていませんし、
この結論はありきたりすぎてつまらないですよね。

アポカリプティック・サウンドとされる動画


もう一つは、映画のヴァイラル・マーケティングとして
動画が出されたという説。ヴァイラル・マーケティングについては
前に少し説明しましたが、多数のメディアを利用して、客が商品を連鎖的に
求めたくなるように仕向けるプロモーション手法のことです。

で、この2011年には、『レッド・ステイト』という、キリスト教原理主義
団体をあつかったマイナー映画が公開されていて、終盤に天使のラッパ音
を模した音が出てくるんですが、その宣伝をねらったものではないかという
話があるんです。聞いてみると、たしかに似ている気がします。
ヨーロッパで映画が公開されたのは、ちょうどこの時期だったんですんね。

『Red State』2011


ただ、映画制作サイドはノーコメントを通しており、真偽はわかりません。
ともかく、これがきっかけとなって、カナダのブリティッシュコロンビア州
テラスの街の動画など、アポカリプティック・サウンドと呼ばれるものが
次々にアップされていきます。ただ、原因はいろいろ考えられますよね。
たんなる工事音、ジェット機が起こす衝撃波などなど。

それに、まあ音ですから、後づけで入れることも簡単にできてしまいます。
もう一つ、「ハム音(The hum)」というのも話題になりました。
「ブン、ブン」というような低い音で、1970年代にイギリス、
ブリストルで報告されて以来、世界各地で話が出てきています。

ハム音の報告があった地域
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この音、同じ場所にいても、聞こえる人と聞こえない人がいるみたいですね。
一説には、2%の人しか聞こえないともいわれますが、そのあたりは
よくわかりません。高圧ガスのパイプラインや送電線の影響ではないかと
いわれる一方、ただの耳鳴りだろうという話もあって、原因は不明のままです。
うーん、電磁波を極端に嫌う人は世界中にいますからねえ。

さてさて、音のオカルトでは、この他にヘミシンクなども流行しました。
パチンコ屋、あるいは職業的に、日常つねに大きな音に接している人は、
高齢になってから難聴になる可能性が高いのは間違いないですので、
みなさんもお気をつけください。では、今回はこのへんで。

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