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今回はこういうお題でいきます。耳なんかで記事が1本書けるのか、
自分もかなり疑問がありますが、どうなることでしょうか。
前に、「音のオカルト」という項を書いてますので、
それとかぶらない内容にしようとは思うんですが、これもどうだか。

うーん、耳ね。「耳から白い糸」という都市伝説がありますよね。
ピアスの穴を自分で耳たぶに開けようとしたところ、
中から白い糸が出てきたので、引っぱって切ったら、急に周囲が
真っ暗になり、そのときにはすでに失明してしまっていた。

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・・・さすがにありえない話でしょう。そもそも耳に視神経は
通ってないですし、視神経は一般的な糸よりもずっと太いんです。
あと、血糖値測定のために耳たぶから少量採血したりしますよね。
もし耳たぶにそんな危険があるなら、
ああいう医療行為は行われないはずですよねえ。

余談ですが、自分は10年ほど前に仕事で「霊術」の治療家を取材
したことがあります。その人は資格を持った鍼灸師とは違って、
先が曲がったフニャフニャの針を使うんです。あまりに細いので、
刺されてもほとんど痛みを感じず、体内に入っていきます。

治療の様子を見せてもらったんですが、その針を患者の首筋に
ちくりと当て、くいっと手首を返すと、透明に近い釣糸のようなのが
針に絡まって引っぱり出されてきました。
治療家は、「これが肩の凝りのもとになってる古い神経線維です。
切ってやれば楽になります」と言って、プチッと切ったんです。

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これは不思議でしたね。でも、そんなことがあるはずはない。
事務所に戻って考えてみたら、トリックはわかったような気がします。
針に一種の接着剤をあらかじめ少量つけておいて、
肩に刺して引くと、接着剤が糸を引くんだろうと思いました。
まあ、証拠があるわけではないですけど。

さて、耳のオカルトというと他にどんなものがあるでしょうか。
「福耳」というのがあるかな。耳たぶの肉が厚く、
下に垂れ下がっている場合にそう言われることが多いですね。
金運に恵まれ福運があるとされています。
大黒様、恵比寿様はどちらも福耳の相をしています。

福耳 布袋様でしょうか?
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これはもともと、仏教のお釈迦様の姿からきてるんだろうと思います。
「釈迦三十二相 八十種好」と言って、普通の人とは異なる32の
大きな体の特徴があり、さらに80の部分に違いがある。
福耳はその一つです。これも余談ですが、お釈迦様の頭の天辺が
盛り上がってるのは髪型ではなく、あの中に肉が詰まってるんです。

これを肉髻(にくけい)と言いますし、尊勝仏頂とも言います。
なぜ盛り上がってるかというと、その霊験で、あらゆる罪業、
障害などを粉砕する力を持っているからとされます。
この肉髻をほめたたえたお経が「尊勝陀羅尼経」。これを唱える
ことで百鬼夜行から逃れられた話が、『今昔物語』に出ています。

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さて、アフリカのある部族では、耳には勇気や叡智が宿っているとされ、
幼い頃に穴を開け、そこに木の輪っかなどをはめ込んで
どんどん大きくしていく風習があります。
みなさんも写真をご覧になったことがあるんじゃないでしょうか。

また、別の部族では下唇に穴を開けて大きくしたり、
体中に盛り上がった火傷の痕をつくったりもします。
まあ、呪術的な意味合いもあるのかもしれませんが、美の基準は、
時と場所によって代わってくるという好例ですね。

アフリカ人女性
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さて、耳のオカルト、ここからは嫌な話になります。
耳の穴からゴキブリその他の虫が入っていったという事例は、
アメリカ、中国、インド、世界中にあります。まあ、生き物のほとんど
いない極寒の地なら大丈夫かもしれませんが。耳に虫が入った場合、
光をあてるとそれに向かって出てくるといった説もあるものの、

走光性のある虫ばかりではないし、効果は薄いそうです。
また、水や油を入れるのも危険。もし虫が中で死に腐敗した場合、
感染症を起こして命にかかわる可能性もあります。すぐ専門医に行くのが
一番いいでしょう。でもこれ、寝てる間に入ってくるのは防ぎようが
ないですよね。このためだけに耳栓をして寝るのもちょっと。

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さてさて、ということで、雑多な話題をご紹介してきましたが、最後に
少し学術的な話を。耳垢には湿性と乾性があるのはご存知でしょうか。
これはメンデル遺伝をするため、はっきりと出ます。湿った耳垢は顕性、
乾いた耳垢は潜性。日本人全体では、湿性耳垢の割合は少数、
乾性耳垢が多数となっています。

湿った耳垢の人は体質的に体臭が強い傾向にあり、これは生理学的に
間違いはありません。日本人では湿性耳垢の人は約16%。
ちなみに白人の90%が湿性、黒人はほぼ100%湿性。
長崎大学の研究では、耳垢が湿性か乾性かは
遺伝子一ヶ所だけの違いなんだそうです。

で、北海道や沖縄に湿性耳垢の人が多いのは、日本にはもともと
湿性耳垢の縄文人が居住しており、やがて九州から本州に
乾性耳垢の弥生人が流入し、それが北海道などには及ばなかったために
残っていると説明されることが多いですね。でも、そんな単純なものでも
ないだろうと自分は思います。では、今回はこのへんで。

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